1. オフショア開発の契約形態の種類は?
オフショア開発における契約形態の種類は、「準委任契約」または「請負契約」の2種類があります。民法で定められた契約には、贈与や売買、賃貸借などさまざまな形態があり、総数は13種類に及びます。そのうちの2種類がシステム開発での契約に該当します。
オフショア開発は日本の企業にとって今や当たり前の手段として取り入れられていますが、実際に契約を締結させる場合には、「準委任契約」と「請負契約」のどちらかの選択が迫られます。
請負契約は、従来のオフショア開発よりずっと用いられており、今も日本企業では請負契約という文化が残っています。オフショア開発が始まった当初より、自社内にてエンジニアを抱えながら、開発プロジェクト毎に請負契約を締結させるケースが主流でした。
そして近年の動向として主流になっているのが準委任契約です。
準委任契約とは、「委任契約」に準ずる契約で委任契約とは弁護士や公認会計士に依頼する法律関係での契約形態となり、法律関係以外の一般的な業務での契約においては「準委任契約」となります。
2. 準委任契約と請負契約の解説と比較
オフショア開発においての準委任契約と請負契約のそれぞれについて解説し、違いを比較していきます。
2-1. 準委任契約とは?
オフショア開発における準委任契約とは、発注者側の企業にエンジニアを常駐させるなどして、プロジェクトに携わるような形態で、労働の代行を目的としています。
発注者側ではプロジェクトの成果物について目標や方向性を示し、受注者側は技術力や労働力を提供しながらプロジェクトの進行を担います。そしてその労働の時間と期間に応じて、報酬が支払われる仕組みです。
IT業界だけではなく、医療業界などで医師に検診を依頼する場合などにも用いられる契約形態です。
2-2. 請負契約とは?
オフショア開発における請負契約とは、一つの開発プロジェクトの完成を目的とした契約で、成果物を納めることで契約が完了します。システム開発における請負契約では、発注者が明確に要件を定義したうえで、その要件内容をもとに受注者が設計から開発、テストまで行い、期日までに成果物を納品します。
請負契約がほかの業界で用いられる一例では、住居や建物の設計・建築などを行う建設業界や講演会などの業務があります。未完結のままや不具合がある場合には、業務が達成できているとは言えず、完成品を納めることが求められる契約形態です。
2-3. 準委任契約と請負契約では目的やゴールが異なる
準委任契約は労働の代行を目的としているため、成果物の完成形をゴールとはしていません。一方、請負契約は成果物の納品を目的とし、納品が完了すれば契約終了です。
2-4. 準委任契約と請負契約では責任のあり方が異なる
準委託契約は、双方の合意によって開発を進められますが、成果物の完成を目的とした契約ではないため、期日までの完納ができていなかったとしても、受注者側は責任を負うことはありません。
一方、請負契約では受注者のノウハウで開発を進めてもらうため、開発のプロセスは受注者側に一任されることになり、成果物が完成しなかった、または不具合があるなどの場合は責任は受注者側にあります。
2-5. 準委任契約と請負契約の支払い方法の違い
準委任契約の場合には、当月分に発生した費用を翌月の定めた期日までに支払うケースが一般的です。一方、請負契約の場合には、プロジェクト開始の際に契約金額の一部を支払って、成果物が納品されたタイミングで残りの金額を支払うケースが一般的です。
3. 準委任契約と請負契約のメリット・デメリット、向いているプロジェクト
▼ 準委任契約と請負契約のそれぞれのメリット・デメリットを詳しく解説し、どのようなプロジェクトがどの契約形態に合っているかをご紹介します。
契約方法 | メリット | デメリット | 向いている案件 |
---|---|---|---|
準委任契約 | ・エンジニアを確保できる ・仕様変更や追加案件にも柔軟に対応できる ・ノウハウを蓄積できる | ・人材やスケジュールの管理が必要 ・案件がない場合もリソースコストがかかる ・成果物の納期を担保しづらい | ・アジャイル型の開発案件 ・中長期的な案件 ・保守や運用までおこなう |
請負契約 | ・人材確保の必要がない ・工程やスケジュール管理の手間が省ける ・品質や納期が担保されている | ・完璧な要件定義を作成しておく必要がある ・契約内容が火種となり締結が難しい場合もある ・コストが高くなる | ・ウォーターフォール型の開発案件 ・仕様が明確になっている ・小規模なプロジェクト |
3-1. 準委任契約のメリット
準委任契約のメリットをご紹介します。準委任契約のメリットは、労働力を確保しながら自社の開発案件を進められることにあります。
以下、詳しく解説していきます。
エンジニアを確保できる
準委任契約のメリットは、エンジニアを確保できることにあります。日本で確保が難しくなりつつあるIT労働力を確保することで、契約期間内は自社内の開発プロジェクトを進行していけます。
エンジニアの採用や教育はどちらも時間やコストがかかるため、企業においてはハードルが高いものとなっています。せっかく教育を行って人材育成ができたとしても、優秀な人材は高報酬なところへと流れていく可能性もあります。
仕様変更や追加案件にも柔軟に対応できる
準委任契約は、プロジェクトに仕様変更や追加内容があっても、柔軟に対応が可能です。契約内容が変わるわけではなく、試行的に開発を進めながらブラッシュアップが望めます。
ノウハウを蓄積できる
準委任契約は、プロジェクト案件が終了してもメンバーが解散することなく次の案件に移行できます。毎回新しいメンバーで開発工程を進めるには、管理面やフォローなど注意点が増えることが考えられます。チームを一から構築する必要がないのです。
開発における必要な知識を会社として蓄積していくことで、よりよい開発を目指す土壌が培われていきます。
3-2. 準委任契約のデメリット
準委任契約のデメリットも把握しておきましょう。
人材やスケジュールの管理が必要
エンジニアを確保できるメリットはある反面、プロジェクトを取り仕切って進行させるためには、マネジメント力が必要になります。定期的なオンラインでのやりとりや、オフショア先の現地に駐在するなど、綿密なコミュニケーションは欠かせません。そのため、請負契約に比べるとプロジェクトスタート後にも工数がかかります。
案件がない場合もリソースコストがかかる
準委任契約は、期間に応じての契約となります。プロジェクトが終了しても次の案件に移行できるメリットがある反面、仮に次のプロジェクトがなければリソースコストがかかります。案件がなく発注者側の都合で契約を終了させる場合にも、報酬の支払いが必要です。
成果物の納期を担保しづらい
準委任契約は、成果物が未完成であっても受注者側には責任はありません。成果物の納品が目的ではなく、あくまでプロジェクトに必要な労働力や技術力の提供であるため、納期に間に合わないといった場合にも、一切の責任の必要は発生しないのです。
スケジュールの管理・調整をしなければならず、納期が迫っている場合には負担になると言えるでしょう。
3-3. 準委任契約が向いているプロジェクトは?
準委託契約が向いているプロジェクトは、アジャイル型の開発案件です。アジャイル型とは、はじめから厳密に仕様を決めず、小さな規模で開発・テスト・修正といったサイクルを繰り返しながら徐々に開発を進める方法です。
要件定義が明確に定まっておらず、開発を進めながら試行していくような案件を請負契約にしてしまうと、見積もり内容の見直しが必要になるため、かえってコストや手間がかかります。開発の途中でチェックやテストを行いたい場合には、準委託契約が向いていると言えます。
またリリース後にユーザーの反応を見ながら、改修作業を行いたい場合や、運用保守まで一括で行いたい場合にも準委任契約が適しています。
3-4. 請負契約のメリット
請負契約のメリットをご紹介します。請負契約のメリットは、期日までに成果物を納品してもらう契約内容であるため、開発のプロセスに関与する必要がありません。
以下、詳しく解説していきます。
人材確保の必要がない
請負契約は、人材育成や優秀な人材確保など開発に必要な労力がかかりません。受注者のノウハウによって進行してもらえます。
工程やスケジュール管理の手間が省ける
請負契約は、管理の手間がかかりません。どのような方法や工程で開発を行うか、スケジュール管理はちゃんとできているかといったことを把握しておく必要がないからです。
品質や納期が担保されている
請負契約は、品質や納期が担保されているため、安心して任せられる精神面でのメリットもあります。要件定義通りに品質チェックやテストが行われ、不具合やエラーがあった場合にも、期日に間に合うように受注者側が責任をもって対応する必要があります。
3-5. 請負契約のデメリット
請負契約のデメリットももちろんあります。
完璧な要件定義を作成しておく必要がある
請負契約のデメリットは、開発途中に要件の変更や追加発注を行う必要が出てきても、容易には変更できない点があげられます。
契約内容を改めて見積もりする必要があり、スケジュールも大幅に伸びることになります。開発途中のプロセスには関与する必要はありませんが、開発の前段階をしっかりと行っておく必要があります。
契約内容が火種となり締結が難しい場合もある
請負契約は受注側がプロジェクト開始前のヒアリングや契約内容に慎重になるケースが多いです。発注者側としては、開発における工程の管理を行わなくてよく、問題があっても受注者側の責任となります。あらゆるリスクを考慮して責任を負わなくて済む請負契約をしたいと考えるのは当然の流れです。
しかし、受注者側にとってもなるべく責任を追わずに済むようにしたいという思いがあるため、契約締結の際にシビアになりやすいといった問題があります。
コストが高くなる
請負契約のコストは高い傾向にあります。受注者側の責任リスクが高まるため、それをカバーするには報酬を高くする必要があるからです。また、完璧な要件定義書の作成にも、ある程度の時間と労力をかけなければなりません。もしも発注者側の都合により途中で要件通りにいかない場合や、追加案件が発生する場合には、さらにコストが上乗せされることになります。発注者側から契約を中途解約する場合には、受注者に対しての損害を賠償する義務も生じます。
3-6. 請負契約が向いているプロジェクトは?
請負契約が向いているプロジェクトは、ウォーターフォール型の開発案件です。ウォーターフォール型とは、開発初期の段階で詳細な仕様や納期などを決めてから開発を進めていき、途中で前の工程に戻ることなく一連の流れを行う方法です。
はじめから仕様が明確になっている場合や、必要な機能のみ装備したいなど小規模な開発の場合にも請負契約が向いています。無駄な工程を加えることなく、リリースまでスケジュールや費用が明確になるといったメリットもあります。
4. 準委任契約でオフショア開発をする場合はラボ型開発もおすすめ
オフショア開発を準委任契約で考える場合、ラボ型開発がおすすめです。ラボ型開発やラボ契約について解説します。
4-1. ラボ型開発とは
ラボ型開発とは、自社専属のエンジニアチームを構築して開発をしていく方法です。近年のオフショア開発の契約形態では、ラボ契約が増加傾向かつ主流になっています。ラボ契約とは、ラボ型開発でシステム開発を行う契約形態です。
4-2. 準委託契約とラボ契約の違い
準委託契約とラボ契約の違いがよく分からないといった方も多いかもしれません。ラボ契約とは準委託契約をカテゴリー分けした中に含まれます。
準委任契約は、弁護士依頼への依頼など法関係を除く一般業務に適用されます。上述したとおり他の業界でも用いられる契約であり、システム業界においてはよくラボ契約と呼ばれています。
4-3. ラボ型開発をおすすめする理由
システム開発にはラボ型開発がおすすめです。ラボ型開発は、エンジニアを確保でき試行しながらスピード感をもって柔軟に開発が進められるからです。ラボ型開発は、近年の開発に適した方法で、以前に主流とされていた請負契約での失敗や課題をクリアできます。
まず優秀な人材を確保できるという点は大きいです。コミュニケーションを図りながら、指示出しもできるといった面があるため、軌道修正などがしやすく自由度が高いのが特徴です。プロジェクト終了後もメンバーを解散させる必要がないため、メンバー再構築の必要がありません。
またIT業界はめまぐるしいスピードで新しい情報が生まれます。そのため新しい情報や技術をタイムリーに開発へと取り入れられるスピード感も重要です。
請負契約の場合には、発注側で明確な要件定義書を作る必要があり、要件定義の擦り合わせや見積もりにも時間を要します。そのような前段階の手間を省き、開発スケジュールを短縮させる事が可能です。
5. まとめ
オフショア開発の契約形態には、大きく2つに分けて準委任契約と請負契約があります。ラボ型での開発を検討している場合、契約形態は準委任契約つまりラボ契約となります。労働力を確保でき、試行しながら開発が進められリリース後も保守や運用を行いつつ、必要があれば改修作業も可能です。
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