ベトナム オフショア開発について徹底解説

ベトナム オフショア開発について徹底解説

 

ベトナムのオフショア開発現場

 

オフショア開発とは

オフショア開発とは、ウェブ制作やソフトウェア開発などの業務を海外企業や日系の現地法人などに委託することです。
中国やインドがオフショア開発先になることが多かったのですが、近年はベトナムやフィリピンやミャンマーなど東南アジアが伸びており、欧米企業ですと南米やアフリカといった事例もあります。

 

オフショア開発が求められる理由

オフショア開発の主な目的は、人件費の格差によって生じるコストメリットです。
また、IT人材不足の解消も大きな理由の一つです。IPAの調査では2014年現在で87%以上の企業がIT系人材の不足を感じており、経済産業省によると2030年には約59万人のIT人材不足が見込まれています。
また、企業そのものやそのプロダクトの国際化もオフショア開発を後押しする理由となっています。

 

オフショア開発の市場規模(日本・世界)

IPAの調査によると、日本のオフショア開発の規模は2002年に200億円だったものが2011年には1000億円に成長しています。世界全体でみると、2000年に456億ドルだった市場規模が2018年には856億ドルになっています。

出典: IT人材白書2013 https://www.ipa.go.jp/files/000027251.pdf
出典: satatista https://www.statista.com/statistics/189788/global-outsourcing-market-size/

 

オフショア開発の歴史

日本のオフショア発注先は2010年頃までは中国がほとんどを占めていました。日本語人材の多い大連などが有名でした。このころはインターネットのコミュニケーション手段はまだメールが主流で、個人レベルでのビデオ会議やテキストチャット、自動翻訳なども今と比べると未発達でした。仕様書やマニュアルをメールに添付して送って、それらを全て中国語に翻訳してその通りに開発し、細部はブリッジエンジニアが調整するというやり方が主流でした。
このような開発方法は大量のエンジニアが反復的作業をする大型プロジェクトに向いており、中国の人件費の安さでコストメリットを追求することが目的でした。

 

しかし2010年以降、中国の人件費が高騰しコストメリットが薄れるようになりました。またシステム開発業界全体でこういった大型プロジェクトが少なくなり、小規模で多様で開発スピードの速い案件が多くなりました。またコミュニケーションツールやクラウド環境も高度化し、例えば常時使用可能なビデオ会議システムのように昔ならば大型案件でしか用意できなかったようなインフラも個人レベルで簡単に使えるようになりました。
こういったオフショア開発を取り巻く環境の変化を受け、オフショア先も中国からベトナムなどの他の国へと移動し、オフショア開発の形態も受託型からラボ型に変わっていきました。

 

オフショア開発におけるコミュニケーション

オフショア開発では日本側クライアントと現地側との間の言語は日本語が使われることが多く、それを日本語の分かるブリッジエンジニアが通訳しながら他の日本語のできないエンジニアに指示をだしたり、コミュニケーターと呼ばれる技術通訳がドキュメントや指示を翻訳しています。
近年は、ブリッジエンジニアを間に挟んだ間接的なコミュニケーションではなく、英語を使った直接的なコミュニケーションも増えてきています。

 

オフショア開発の品質

海外で開発すると言った場合に最初に問題になるのは成果物のコードの品質でしょう。これについてはポジティブな評価とネガティブな評価があります。

 

ポジティブな評価

  • 新しいフレームワークやライブラリを積極的に活用しており現代的。
  • 独学ではなくて学校で学んだものなので、ソースコードの書き方に癖がなく標準的。
  • コーディングルールを守る。

ネガティブな評価

  • ソースコードに工夫が少なく、良いものを作ろうとするこだわりに欠ける。
  • コーディングルールがないときに、言われなくても分かるようなルールを洞察しない。
  • 関連する分野やローレイヤーに対する知識と興味が低い。

これは、日本のエンジニアはコンピュータが好きだからこの業界を目指した人が多いので職人的なこだわりを持ちやすいのに対し、新興国のエンジニアは比較的高収入の職業としてIT関連職を選びそのためのツールとして技術を習得したということに由来していると思われます。
これはどちらが正しいと言ったものではないので、必要に応じて適切に組み合わせることが必要になります。

 

品質をチェックするベトナムスタッフ

オフショア開発のイメージ

多くの方がオフショア開発に対して「安かろう悪かろう」的なネガティブなイメージを持っていると思います。
しかしオフショア開発の失敗事例を具体的に追っていくと、海外や外国人だから失敗したというよりは、国内でも起こりうることに原因があることが多いです。ただし、やはり海外や外国人であることに理由がある失敗もあります。またオフショアの目的がコストメリットから人材不足解消に変わってきてもいます。そのようなことから、国内外を区別せずに自社と協力会社の強みと弱みを理解しグローバルでの最適な配分を目指すというように、オフショア開発のイメージが変わりつつあります。

 

オフショア開発での失敗の理由と原因

実際のオフショア開発の失敗を見ていきましょう。下記のようなことが原因としてあげられます。

  • 言語の差によるコミュニケーションのミスが発生する。
  • 法律や税制などの社会の仕組みの違いにより言葉の解釈やロジックの実装に齟齬が生じる。
  • 言葉足らずや説明不足を「日本の常識」で補ってくれない。

これらは一言でいうと「丸投げしたらうまくいかなかった」ということであり、日本国内の開発においても問題となりうることです。しかし国内ならばボヤで済んだような炎上が、海外であるがゆえに大火災になったということは、たしかにあります。
そのため、単純に「丸投げはよくない」「ちゃんとプロジェクト管理をしましょう」というだけではなく、オフショア開発特有の課題を認識し、それに正面から取り組むことも必要であるといえます。

 

オフショア開発の課題と取り組み

オルグローはオフショア開発を提供していますが、同時に日本本社の業務の発注元でもあります。そのためこれらの課題を自分自身のものとして、真摯かつ本質的に取り組んできました。
これは下記のような方針に現れています。

言語の差によるコミュニケーションのミスが発生する、という問題に対してはブリッジエンジニアの活用をやめて英語での直接指示に切り替えました。そのためにツールを厳選し、テキストチャットに自動翻訳機能を追加するなどして、英語使用の負担を下げました。

法律や税制などの社会の仕組みの違いによる解釈の齟齬が生じる、という問題に対しては業務をフロントエンドに特化するということで対応しました。目に見えないロジックを説明することを避け、実際に目で見えるものや画像やサンプルで説明できるものに集中することにより、解釈の齟齬が生じる領域を最小にしました。

言葉足らずや説明不足を「日本の常識」で補ってくれない、という問題に対しては採用時の選別の強化とトレーニングで対応しました。日本の常識に対する理解力や洞察力は本人の資質や性格に由来するところが多いので、会社の採用部門を強化して採用力を高め、数多くの候補者の中から合いそうな人を選別するという方針を取っています。その人材に対してさらに日本的な教育を施すことでトレーニングと選別をしています。

 

 

ベトナムと日本の時差

日本との時差は2時間です。日本が午前10時のとき、ベトナムでは午前8時になります。
日本と業務時間を合わせやすいのが特長です。

 

ベトナムの政治・経済体制

ベトナムの正式名称はベトナム社会主義共和国で、首都はハノイ。面積は33万平方キロメートルで日本の0.88倍。人口は9367万人(2017年)でもうすぐ1億人を突破すると言われています。
社会主義で一党独裁制ですが、経済的には市場経済を取り入れており、外国企業の進出や投資も多く、2018年の名目GDP成長率が7.1%であるなど、勢いのある経済成長をしています。
公用語はベトナム語で、アルファベットで表記します。英語学習者は増えており、英語の話せる人は少なくはありませんが、インドや香港のように誰でも話せるというわけではありません。

 

ベトナムの街並み

 

ベトナムのインフラ環境

ベトナムの電力や道路などのインフラはかつては貧弱で、道路に信号がなかったり停電が頻発していましたが、現在はかなり改善されました。ホーチミン市の中心部では停電はほとんどなくなり、郊外でも珍しいという頻度になりました。道路はバイクの渋滞がひどく、自動車も増えて今後より一層の渋滞が懸念されてはいますが、タイのバンコクやインドネシアのジャカルタなどと比べるとその混雑は破壊的というほどではありません。ただし、地下鉄などの高速公共交通の発展は遅れています。

 

ベトナム都市の開発風景

 

ベトナムの教育環境

ベトナムの教育水準は非常に高く、識字率は 95%以上で、就学率は 98.0%(小学校)、92.6%(中学校)、74.3%(高校)、28.3%(大学)となります。(ベトナム統計総局による)
また英語などの塾は小学生向きのものから社会人向きのものまで数多くあり、若くて向上心のある社会人にとっては仕事の後のアフタースクールは一般的なことです。総じて、非常に教育熱心であるといえます。

 

ベトナムの人材市場

ベトナムの人材市場は流動的で転職は一般的です。かつては先進諸国との経済格差が大きく、外資の高給職につくチャンスも限られていたために、ブルーカラーでもホワイトカラーでも外資がやや高めの求人を出せば応募が殺到するという状態でしたが、今はそのようなこともなくなり、恒常的に売り手市場の状態にあります。
インターネットの転職サービスが発達しており、多くの労働者が登録しています。また口コミによる転職紹介も一般的で、ベトナムの労働者は転職に関する情報に数多く触れることができます。
ベトナムの平均年齢は31歳と若く(日本は48.9歳)、人材市場には20代の若い労働者が多くいますが、その反面中堅・ベテラン層の層は薄く、リーダーやマネージャーはなかなか人材市場に出てきません。

 

ベトナム人ITエンジニアのスキルレベル

国策としてIT産業育成に力を入れており、IT系の大学や専門学校も多くあり、数多くのエンジニアが輩出されています。勉強熱心な国民性と相まって、学校で教えられるレベルのスキルに関しては、数も多く、質も高いといえます。
しかしその反面、ベトナムのIT業界もエンジニア自身も若いことから、古めの技術やローレイヤーの技術については、日本と比べると苦手だという傾向にあります。業界の歴史もベンダー企業の社歴も長く経験を積んだエンジニアの多くいる日本は、ベトナムと一緒に仕事をしていくのにちょうどよい関係にあると言えます。

 

ベトナム人エンジニアの賃金相場

ベトナムの平均給与は地域によって差があり、オルグローラボのあるホーチミン市がもっとも高く全国平均より38%多い約4万8900円(2017年)となります。新卒者の給与で約2万6800~5万3500円(同)となります。ITエンジニアはもっとも賃金の高い職種の一つになります。
国のGDP自体が年7%成長していますので、給与もそれと同じかそれ以上に上がることになります。
20代のうちは転職機会も多く昇給幅も大きく、シニアエンジニア層になると7万円〜10万円程度まで給与が上がりますが、そこよりも上がることは難しい傾向にあります。

 

ベトナム人の仕事観

よくベトナム人は勤勉で真面目で仕事熱心といわれます。自分のビジネスについて精力的で、自分のビジネスを良くするために努力を惜しみません。しかし給与をもらって会社で働いていたとしてもそれは自分のビジネスの一つだと考える傾向があり、常に自分の市場価値を高めようとしています。そのため条件の良いところから転職のオファーがあったときにそれを選ぶのに躊躇しないところがあります。
この性質はシンプルで分かりやすいとも言えますので、給与制度や業務制度にインセンティブをうまく組み込むと、ポジティブに働いてくれるものと期待できます。

 

ベトナムの職場風景

 

ラボ型開発とは

オフショア開発を契約形態から分類すると、受託型とラボ型に分けられます。
受託型は日本国内の受託開発と同じで、仕様書を渡して成果物を受け取ります。
ラボ型は専属の人材をアサインし、その人材にお客様が直接指示を出して開発をすすめるものになります。
受託型は要件定義や仕様のはっきりしたビジネス分野の大型案件に向きます。比較的単純な繰り返しタスクの多い案件を、コストメリットを活かして大人数でこなすというものです。
ラボ型は作るものが継続的に変化していくクリエイティブ分野の小型案件に向きます。直接指示を出せることや、専属人材なのでお客様のトーン&マナーやコーディング規則を身に着けやすいからです。
最近のWEB制作やソフトウェア開発ではアジャイル的な開発手法が主流になってきているために、ラボ型が選ばれる傾向にあります。

 

ラボ型開発のイメージ

ラボ提供会社によって細部に違いがあるので、ここではオルグローを例にします。
まずお客様が専属開発チームをベトナムのホーチミン市に持つことになります。そのチームへの指示出しはお客様が行い、英語での直接指示では伝わりにくい場合はオルグローの日本語通訳や日本人技術者がサポートします。出勤や給与支払いなどの労務管理はオルグローが行います。
キックオフまでにかかる日数は、フロントエンドエンジニアがすでにいつでもアサイン可能な状態で待機しており、オフィスや機材もすでに用意されていますので、ご契約後すぐに専属チームで業務を開始することになります。

 

ラボ型開発のメリット

ラボ型開発を受託開発型と比較したときのメリットは下記のようになります。

  • 業務スタートまでに必要な、仕様策定や説明、アサインのための面接などの手順を省略できるために、キックオフまでのリードタイムを短縮できます。
  • 専属開発チームによる制作・開発であるため、ノウハウがチーム内に蓄積し、生産効率が向上します。
  • 最初に決めた通りの作業内容ではなく期間内は自由に指示が出せるために、プロジェクト進行の自由度が高いです。
  • 成果物の納品と検収が終了ではないので、納品後の保守運用に適しています。

ラボ型開発のデメリット

ラボ型開発を受託開発型と比較したときのデメリットは下記のようになります。

  • 直接指示を出すためディレクションコストが増えます。
  • 支払いの代価は完成物ではなくてスタッフの労働時間です。つまり受託契約と準委任契約の違いと同じです。そのため仕様変更などで納期が遅延したときの責任の所在は指示者であるお客様になります。
  • 1年×1人程度が最小サイズとなりますので、2〜3人月で完結するプロジェクトを単発で行うには向いていません。

ラボ型開発スタートまでの流れ

まず、弊社担当と打ち合わせをしていただき、どんな物を作りたいか、ラボで作らせたいかをご要望をヒアリングさせていただきます。その上でそのご要望に見合った人材を推薦いたしますので、その中から決めていただきます。必要ならばその際にテストもしていただけます。
エンジニアの決定後、契約を締結し、プロジェクトの開始となります。

 

ラボ型開発と受託開発のコスト比較

3人で1年間(36人月)を想定してコストを比較してみます。
エンジニアはどちらも経験2〜3年程度のフロントエンドエンジニア(月給5万円)と仮定します。

ラボ型開発
エンジニア 16.5万円(*) x 3人 x 12ヶ月 = 594万円

注:オルグローの場合。16.5万円の内訳は実費7.5万円+サービス費9万円。他社の積算方法とは違う場合があります。

受託開発
エンジニア 20万円(*) x 2人 x 12ヶ月 = 480万円
ブリッジエンジニア 30万円(*) x 1人 x 12ヶ月 = 360万円
合計 840万円

注 給与5万円のエンジニアの人月単価が20万円は比較的安めの見積もりです。ブリッジエンジニアの人月単価は日本語能力や経験年数で幅がありますが、30万円は平均的な金額です。

 

フロントエンドへのこだわり

オフショア開発を行う会社によって得意分野は違いますが、オルグローは自社業務を海外子会社でオフショア開発した経験や、今までのお客様のプロジェクトに協力した経験から、フロントエンド制作に集中するようにしています。

  • ビジネスロジックと違って制作物の大部分が実際に目で見えるものであるからオフショア開発の弱点であるコミュニケーションの齟齬が起こりにくいこと。
  • HTML,CSS,JavaScriptなどの開発言語やワードプレスやCMSなど国に関係ない開発ツールが多く開発国による差異が出にくいこと。
  • 日本の品質に合わせるためのトレーニングのしやすい分野であること。

厳選された人材

オルグローでは、ホーチミン国立IT大学(Ho Chi Minh City University of Information Technology)やFPT大学(FPT Polytechnic)などの現地の大学とのネットワークを構築し、優秀な卒業生を優先的に確保しています。
また、現地資本のIT企業と連携し日系企業では分かりにくいベトナムIT業界の動向や人材市場の動向についての情報を収集しており、日系人材会社に頼るだけではない幅広い採用を行っています。

 

実践的なジョブトレーニング

エンジニアはオルグローに入社した後2ヶ月の試用期間中に、教育カリキュラムのトレーニングを受けます。このトレーニングは日本企業で求められるスキルや経験を身につけるためのもので、定期的にコードレビューを行い技術的な知識だけではなく、献身的できめ細かい配慮ができるかといったことも見極めます。
試用期間後の正社員としての採用者は全応募者のうち約3%まで絞り込まれます。ここでスキルや性格を厳しく見極めています。
また、正社員となった後もオルグロー日本本社のWEB制作や開発業務への参加を通じて、実際の日本企業のプロジェクトの経験を積んでいきます。

 

アサインまでのスピード

オルグローラボではすでに社内で雇用しているメンバーを新規のラボにアサインします。そのため早ければ1日でエンジニアをアサインできます。
他社はラボ契約が決まってから募集広告をかけて集めることが多いようです。このやり方だと立ち上げに2〜4ヶ月の時間と費用かかってしまいます。

 

高いコストパフォーマンス

給与やスキルの向上に熱心であるというベトナム人エンジニアの特性を踏まえ、人件費以外の経費を徹底的に抑え、なるだけエンジニアに給与として還元するようにしています。そのため同程度の人材を提供している他社と比較して訴求力のある価格提示が可能となっています。
また、オルグローのスタッフはプロジェクトにアサインされていない待機中はオルグロー本社の仕事をしており、待機期間中の人件費を他のお客様の負担に転嫁していません。

 

透明性のある料金体系

ラボ型オフショア開発を望まれるお客さまにベトナム人スタッフの給与を公開し、納得の料金体系をご用意しました。エンジニアのスキル高くなれば中間マージンも比例して増えることが一般的ですが、オルグローラボの料金は実費とサービス費で構成されており、どのようなエンジニアをアサインしたとしてもサービス費は一律で変動するのは給与に基づいた実費のみです。そのため、よりコストを抑えご利用頂けます。
このことにより、他社ラボサービスと比べて圧倒的に費用を抑えることができます。

 

手厚いサポート

自社及びお客様の事例を通じた経験により、過剰な設備投資を抑えコスト削減を図りながらも、それでも必要な厳選された開発環境とサポート体制を用意しています。

  • アサイン前のトレーニングやラボ期間中のフォローで、日本人技術者がフォローできるようにしています。
  • インターネットプロバイダ3社から、それぞれ独立した光回線を契約しています。また停電時に備え、自家発電機のあるオフィスビルに入居し、各PCにUPSを設置しています。
  • 入退室には指紋認証システムを導入し関係者のみが出入り可能になっています。また内部管理スタッフによる定期的なセキュリティチェックを実施しています。

ラボ型開発のケーススタディ

過去にオルグローが経験した実際のオフショア開発のケースをご紹介します。

案件の向き不向き

ある不動産会社の社内システムの開発をしていました。
ちゃんとした仕様書を作り、それをベトナム語に翻訳しました。進捗はチケットで管理しコミュニケーターがちゃんと翻訳してくれました。何度もビデオ会議で説明もしました。

それでも作成意図を理解していないとしか思えない実装があがってきました。ここは違うからこう直してくれというと直すことはできるけれども、また同じようなことが繰り返されました。前回の説明聞いてたの? 分からなかったら分からないと言ってくださいね、といっても、そのときはハイと答えるけど、やはり繰り返されてしまいます。
結局このプロジェクトは失敗してしまいました。

これは、身も蓋もない言い方ですが、そもそも作るものが悪かったのです。不動産会社の社内システムなどをオフショア開発で作るべきではなかったです。
社会制度や商習慣や常識といったものは、その国によって違います。敷金・礼金をDepositと翻訳してみても、それで伝わるわけではなかったです。

絵で描けないもの、手で触れないもの、数値で表せないもの、写真や動画として撮影できないものは、日本国内で開発するべきでした。
これは日本人だからベトナム人だから、ということではなかったです。もしベトナム国内の不動産社内システムを作るのならば、日本の素晴らしい開発チームを揃えてもうまくいかなかったと思います。

私達はこの反省から、ウェブ業務システム開発から撤退し、ウェブのフロントエンド開発に特化しました。目で見て分かるものだけを対象にし、自分が英語で直接説明できることを直接説明するというようにしました。
それ以来、このようなトラブルはなくなりました。

 

退職

オルグローラボ社設立直後の話です。日本では作れなかった自社プロダクトを作ろうとハイスキルのエンジニアを集めました。学歴も経験もスキルも十分で、実際に面接をしてみると自信たっぷりの猛者たちばかり。
しかし数ヶ月とたたないうちに開発チームは退職が相次ぎ空中分解してしまいました。

これはロール(役割分担)をはっきりさせなかったことが原因でした。
人だけ集めて曖昧な目標を示しただけでした。これは丸投げでした。
オフショア開発では丸投げは通じなかったです。ゴールとロールをはっきりさせる必要がありました。文化的なものもありますが、距離が遠く離れており直接面と向かっているわけではないことを自覚するべきでした。

その上で、スキル重視ではなく性格重視でチームを作ればよかったと思っています。
どうしても履歴書や職務経歴書に書かれているきらびやかなスキルとキャリアに目が行きますが、遠く距離が離れており、コミュニケーションに努力が必要ならば、一番大切になるのはちゃんとこっちの話を聞いてくれるか、こっちの話を理解しようとしてくれるかという性格の部分が大切であったように思います。

 

品質

デザインチームを立ち上げようとした時の話です。フランス資本の外資企業でデザインをしていた女性を採用し、デザイナーの彼女とプログラマー二人とで3人のチームを作りました。
しかし期待したような品質のものが出てきません。話を聞くと、デザイナーの女性がかなりトラブルを抱えているようで、それに対してプログラマーが困惑しているという状態でした。
デザイナーは優秀な人ではあったのですが、結局退職してしまいました。

あとから話を聞いてみると、今まで欧米企業で働いていた彼女は、日本風の仕事の仕方に慣れることができなかったということでした。
これは仕方がないこととはいえますが、試用期間をきちんと設定してなかったことがよくなかったと今は思っています。
日本の雇用でも試用期間はありますが、試用期間で解雇して本採用に至らなかったというのはあまりないと思います。しかし試用期間は会社が労働者を試すだけではなく、労働者が会社を試す期間でもあります。

試用期間はお互いに試し合う期間だと見定め、何を要求しているか、何を要求されているかを最初にきっちりと認識しあっていればよかったというように思います。

 

給与

あるお客様の3人チームのラボも1年が経過し、技術的にもコミュニケーション的にもノウハウが溜まってきました。
しかし、チームの支柱となっていたエンジニアが給与交渉でかなりの昇給を希望してきました。彼はすでに次の就職先候補も見つけており、自分の市場価格も分かって交渉してきたようでした。

この時はオルグローはエンジニアの交代が無料でできますので、昇給か退職かというエンジニアを無理に引き止めず、経験年数が少なくて給与の安いエンジニアと交代しました。
3人チームのラボでしたのでノウハウが他の2人にもたまっていました。今までリーダー的なエンジニアに目が行っていましたが、残りの2人もすでに成長していたので、ノウハウの引き継ぎが可能でした。

もっとも、昇給というのも手段の一つでもあります。
ベトナムは毎年7%近い経済成長をしています。20年間デフレの続いている日本の感覚でいるとわからなくなってしまいますが、GDPが成長するということは物価も上がるということです。給与が毎年上がらなければ減給と同じことになります。
昇給も一つのオプションであり、オルグローでは昇給の結果も見えやすい仕組みを採用しています。
オルグローでは昇給と交代の両方を使ってメンバーと交渉することができます。これはフェアなスタイルでもあり、ベトナム人の気質にあっていると思っています。

 

コミュニケーション

技術はできるのですが、いわゆる報連相ができないスタッフがいました。お客様からも毎日進捗のレポートを出してほしいと言われていたのに、それが出てこないでいました。
20代半ばの男性で、無口で、意固地そうな顔をしていました。他のスタッフともあまり打ち解けていません。「ちゃんとお客様に報告をしてほしい」というと、はい、と短くこたえたきり黙ってしまっていました。
仕事や会社に不満があるのかと聞いてもみたのですが、特にないということで、扱いに困っていました。

一日の終りに出すレポートのフォーマットを細かく書いて提供し、1週間ほど書く内容を添削してみました。すると、彼のレポート能力はすぐに上達しました。
つまり、性格や態度の問題ではなくて、単に報告や連絡のやり方を知らなかったということでした。「正解」を教えてあげると、後はそれに向かって一直線に進んでいきました。