オフショア開発で注意するべき法的ポイントは?ソフトウェア開発における著作権についても解説

オフショア開発で注意するべき法的ポイントは?ソフトウェア開発における著作権についても解説

オフショア開発を利用するにあたり、法律や税金について注意するポイントはいくつかあり、知らないまま始めてしまうと思わぬトラブルに発展してしまう可能性が高くなります。本記事では、オフショア開発で注意するべき法律のポイントについて詳しく解説します。

 

【目次】
1. オフショア開発での法律に関する注意点とポイントは?
1-1. 依頼する国によって準拠する法律が異なる
1-2. 依頼する国によって裁判管轄が異なる
1-3. 依頼する国によって雇用制度が違う
1-4. 契約書の重要性について
1-5. 輸出管理には注意する
2. ソフトウェア開発の委託料支払いに源泉徴収は必要か?
2-1. 源泉徴収は必要かについて
2-2. 著作権の有無に注意する
2-3. インド法人に支払う場合について
3. システム開発における著作権について解説
3-1. 開発したソフトウェアの権利はどこにある?
3-2. 著作権問題が起こりやすい理由とは?
3-3. ソフトウェアの権利を守る方法
4. 納品物はどこまでが著作物になるのか?
4-1. 成果物全てを譲渡する場合
4-2. ソフトウェア改修における諸作兼に注意
5. まとめ

 

1. オフショア開発での法律に関する注意点とポイントは?

国内外に関わらず仕事を依頼するためには、契約書を結ぶ必要があります。契約書を結ぶ前に、依頼先の国に合わせた法律を理解しておかなければなりません。オフショア開発を利用するにあたって注意しなければならない法律は下記のとおりです。

 


1-1. 依頼する国によって準拠する法律が異なる

日本と海外で契約上のトラブルが発生した場合は、どちらの国の法律に準拠するのかで問題になるケースがあります。もちろん日本側からすれば契約違反があった際は、日本の法律に従う方が分かりやすく良いでしょう。

 

しかし、依頼を受ける側は日本の法律を知らない場合がほとんどですし、問題があった際に外国からは対応できないため、自国の法律に準拠したいといった要望が多いです。

 

1-2. 依頼する国によって裁判管轄が異なる

もし契約違反などで裁判を起こす場合も、準拠法と同じく裁判の管轄が異なります。また、日本の法律に準拠する場合であり、日本の裁判所で違法行為が認められても、罰を執行できない可能性もあります。

 

1-3. 依頼する国によって雇用制度が違う

依頼する国によって雇用制度が異なるため、直接雇用するのが難しくなる場合が多いです。IT会社に仕事を発注するといった形であれば、問題ない国がほとんどですが、個人のエンジニアに依頼するケースや、自社に引き抜きをしたい場合などは複雑になりがちです。

 

例えば、国内にしか会社がない場合は、引き抜くためには該当する国の法律だけでなく、日本の外国人雇用制度にも引っかかるでしょう。そのため、該当国に子会社がある場合は、そちらに雇用するのが一般的です。

 

1-4. 契約書の重要性について

契約書はオフショア開発を利用するにあたり、とても重要な書類です。契約書がないと、口約束になってしまい、お互いの主張に証拠がないため水掛け論になってしまいます。国にもよりますが、海外の場合は自分に都合の良い考え方をするケースが日本と比較して多いです。

 

また、言語が異なるためコミュニケーションが取りづらいため、料金や納期など大切なことは書類で厳格に決めておきましょう。契約書があれば後から揉めるケースは少なくなります。

 

1-5. 輸出管理には注意する

オフショア開発は輸出管理の手続きに注意しなければなりません。具体的には、「経済産業省」が定める「外為法(外国為替及び外国貿易法)」と「安全保障貿易情報センター」による「EAR(Export Administration Regulations)」に則ります。

 

もし法律違反をしてしまうと、罰金などのペナルティが課せられるうえ、最悪の場合はシステムを日本に送れなくなる可能性もあるため注意が必要です。もし、ペナルティが課せられてしまったらプロジェクトが止まってしまうため、必ず事前に確認してください。

 

2. ソフトウェア開発の委託料支払いに源泉徴収は必要か?

オフショア開発を利用するにあたって、源泉徴収の必要性について具体的に解説します。

 

2-1. 源泉徴収は必要かについて

日本国内の法律では、国外に事業を委託する行為は「人的役務の提供事業の対価」に該当するため、「外国源泉所得」になります。そのため、源泉徴収を支払う義務はありません。しかし、租税条約に異なる取り扱いがあった場合は、租税条約が優先されます。

 

租税条約とは、「財務省」の記載によると、課税関係の安定を保つために二重課税や脱税を防ぎ、国同士の安全で健全な投資や経済交流の促進をするための条約です。租税条約には、「OECDモデル租税条約」が国際基準として設けられていて、OECD加盟国であれば、OECDモデル租税条約が適応されます。

 

日本国においては、OECD加盟国であるため、OECDモデル租税条約に準じて規定されます。ただし、依頼先の国がOECD加盟国でない場合は、その国のルールに従わなければならない可能性があるため、注意が必要です。

 

2-2. 著作権の有無に注意する

著作権の有無にも注意が必要です。ソフトウェアの開発などは、著作権法によって著作物とみなされるためです。著作物として認定された場合は、著作物の譲渡として扱われる可能性があるため、日本での源泉徴収の必要が出てきます。

 

ただし、相手から著作権を譲渡される場合であっても、日本の法律や租税条約が適応されて「使用料」として扱われる可能性もあるため、事前に確認しておくのをおすすめします。ただしケースバイケースとなるため、不安が残る場合は専門家へ依頼するのが安全です。

 

専門家とは、税理士や弁護士など税金や法律に詳しい士業に依頼する方法があります。また、士業だけでなくオフショア開発のサポートしている会社を利用する方法もおすすめです。

 

オフショア開発のサポートをしている会社であれば、依頼先の国に詳しいのはもちろん、税金や著作権に関しても知識がありサポートしてもらえる可能性があるからです。また、オフショア開発のサポートをしている会社であれば、オフショア開発の始め方からサポートしてもらえるため、おすすめです。

 

2-3. インド法人に支払う場合について

インドへオフショア開発を依頼する場合は、インドの租税条約によって源泉徴収が必要になります。

 

なぜなら日本とインドで取り交わされた租税条約によると、使用料条項である同条約12条4項項において「技術者その他の人員によって提供される技術的性質の役務に対する料金」は使用料に該当するからです。

 

つまりインドで開発業務がおこなわれていたとしても、「日本法人がインド法人に支払う開発委託の対価として源泉徴収を支払う必要がある」ということです。

 

また、租税条約届出書を事前に提出していれば10%で済みますが、提出していない場合は国内法に則って20.42%の源泉徴収料が必要になってしまいます。

 

また、インドに対して源泉徴収をおこなった場合は、インドの法人が日本へ税務申告である確定申告をしてもらわなければなりません。そのため、インドへオフショア開発を依頼する場合は源泉徴収の支払いだけでなく、日本法人への申告義務が発生することを注意喚起する必要があるでしょう。

 

3. システム開発における著作権について解説

システム開発における著作権は、複雑になるケースが多いです。著作権を無視していると、後々大きなトラブルに発展してしまうリスクが大きくなります。そのため下記で具体的に解説します。

 

3-1. 開発したソフトウェアの権利はどこにある?

開発したソフトウェアの著作権は、基本的には発注者側ではなく開発をした側に著作権が発生します。ただし、契約内容や著作権の譲渡交渉などによって、発注者側に著作権が移行するケースもあります。

 

そもそも著作権とは、「思想や感情を創造的に表現した物」に適応される制作者に与えられる権利です。芸術品や製品など形のある物だけでなく、音楽や文学など形のない物にも適応されます。そのため、ソフトウェアは形がなくても著作権が発生します。

 

著作権を自社へ帰属させたいのであれば、発注段階で依頼先と話し合って契約書を交わしておきましょう。ただし、著作権には「著作者人格権」という帰属できない権利も存在します。

 

複雑なため詳しくは後述しますが、著作権にばかり気をとられていると、著作者人格権によって納品物の仕様が妨げられてしまう可能性があります。基本的には開発したソフトウェアは開発者に権利があるため、ソフトウェアの利用方法にも気をつけなければなりません。

 

そのため、ソフトウェアの開発が始まってからだとトラブルになりやすく、発注する前に権利関係についてよく話し合って契約書にまとめておき、後からトラブルになるのを防ぎましょう。

 

3-2. 著作権問題が起こりやすい理由とは?

著作権について問題が起こりやすい理由は、発注者側と開発者側のどちらも著作権を持っていることによって大きなメリットが得られるためです。

 

発注者側は、システムを後から自由に改修したい場合や、開発したソフトウェアを開発者や他社に使われないようにするために、著作権を帰属させるケースが多いです。

 

しかし、開発者側も一度開発したプログラムを、譲渡したくないケースもあります。一度開発したプログラムコードがあれば、次回以降似たような依頼が来た際に、プログラムコードを再利用することで、開発コストやリソースを大幅に削減できるためです。自社の成長や業務効率化のためにも当然の主張でしょう。

 

そのため、後から著作権の帰属を申し出ても受け入れてもらえないケースもあるでしょう。また、著作権に関して話し合いのないまま放置していると、似ているソフトウェアが競合他社に出回ってしまうほか、勝手にプログラムコードを書き換えて開発者側に訴えられてしまうリスクを抱えてしまいます。

 

3-3. ソフトウェアの権利を守る方法

ソフトウェアの権利を守る具体的な方法は下記のとおりです。

 

 

■ 契約書へ明記をしておく

事前に著作権の帰属の有無を契約書に明記しておくのが一番有効です。契約書に詳しく明記しておけば、後から主張の食い違いによるトラブルに発展してしまっても、契約書に基づいた処理になるため、余計なトラブルを未然に防げます。

 

もし契約書に具体的な取り決めが明記されていないと、「言った」「言っていない」の水掛け論になってしまうため、お互いの主張が食い違ってしまい最悪の場合は裁判に発展してしまいます。

 

もし裁判に発展してしまった場合は、どちらの国の法律で裁定されるのかなど、国内での裁判よりも多くの手間と時間がかかるでしょう。

 

また、たとえ裁判で勝利したとしても、裁判の判定内容を執行するためにも多くの時間やお金がかかってしまう可能性が高いです。そのため、細かい事例であっても事前に契約証に明記しておきましょう。

 

 

■ 著作権の帰属確認をする

制作したソフトウェアの著作権が帰属されるか事前に確認しておきましょう。具体的には、納品されたソフトウェアが納品されたと同時に、著作権も一緒に譲渡されるのかを事前に取り決めて、契約書に明記しておきます。

 

著作権と同様に「著作者人格権」という権利も発生するため、同時に確認しておきましょう。具体的には「公表権」「氏名表示権」「同一性保持権」の3つがあり、それぞれについて取り決めをする必要があります。

 

著作者人格権は著作権と異なり、権利の譲渡はできないのが特徴です。そのため、それぞれの取り決めを明確にする必要があります。ただし、譲渡はできなくても「著作者人格権の行使をしない」という取り決めを契約書に明記しておけば、著作者人格権を使用されずに済みます。

 

 

■ 利用許諾の範囲を設定する

著作権の譲渡ではなく、利用許可の範囲を決めて契約をするといった方法もあります。著作権を保有することはできませんが、事前に取り決めた範囲で制作物を自由に取り扱えるため、有効な手法です。

 

▼ 具体的には、下記のような取り決めがあげられます。

 

使用許可:発注者側が制限なくシステムやプログラムの改変、使用をおこなえるようにする取り決め

 

再許諾:完成したシステムやソフトウェアが第三者に利用されないために、再使用する際の制限をする

 

目的以外での使用禁止:発注者側が複製して第三者に譲渡するなど、本来の目的以外での使用を制限する

 

対価の支払:売り切りではなく、使用料を事前に取り決めて利用対価として対価を支払うよう取り決めをする

 

もちろん著作権の譲渡の方が発注者側は望ましく楽ですが、開発者側と事前の折り合いがつかなかった場合は、とても有効な手法です。

 

「パッケージとして外販する場合は特に注意する」

 

開発したソフトウェアをパッケージとして販売する際は、特に注意が必要です。なぜなら、利用許諾契約で権利関係を取り決めていた場合は、パッケージ販売ができないケースが多いからです。

 

上記で解説した「目的以外での使用禁止」に抵触する可能性が高いため、パッケージとして販売する際は、事前に開発者側に利用する旨を伝えておく必要があります。そのため、パッケージとして販売する場合は、利用許諾契約ではなく著作権の譲渡ができる前提で契約を進めるのがおすすめです。

 

また、よくあるトラブルとして、契約書のひな形をそのまま利用してしまい、詳細が明記されておらず、パッケージとして販売できないケースがみられます。利用許諾契約を利用する際は、必要に応じた契約内容になるように契約書を作成してください。

 

4. 納品物はどこまでが著作物になるのか?

納品物がどこまで著作物になるのか具体的に解説します。

 

4-1. 成果物全てを譲渡する場合

成果物全てを譲渡する契約を結んでいた場合は、ソースコードなども含めて全てが譲渡されます。そのため、発注者側はコードの改変や複製などに制限がなく、反対に開発者側は、コードの改変や複製ができなくなります。

 

ただし、開発者側は著作権を全て譲渡してしまうと、自社の技術が流出してしまう可能性があるため、開発内容によっては著作権の譲渡を拒まれる可能性があるでしょう。著作権を全て譲渡するのではなく、利用許諾契約にしたいと申し出がある場合があります。

 

しかし、発注者からしても納品されたソフトウェアを自由にできないと使い勝手が悪くなり、あまり意味のない制作物になってしまう可能性が出てしまいます。つまり制作物全てを譲渡する場合は、発注者側にメリットが多いため、開発者側としては譲歩をしてほしいポイントになるでしょう。

 

そのため、発注時点でお互いによく話し合い、事前に権利に関して取り決めておくことが大切です。契約書に細かく明記しておくと未然にトラブルを防げます。

 

4-2. ソフトウェア改修における諸作兼に注意

ソフトウェアは著作権の譲渡がおこなわれていない限り、プログラムの改修や複製が出来ないため注意が必要です。著作権には、翻訳権と本案件という制限があるため、勝手に書き換えや複製ができないからです。

 

もし、発注者側が著作権の譲渡がない状態でプログラムを勝手に改修してしまうと、開発者側とのトラブルに発展してしまうでしょう。開発者側からするとプログラムを改変する工程で自社の技術が流出してしまうリスクがあるからです。

 

しかし、発注段階でプログラムの改変や複製を前提として依頼する場合も多いです。プログラムの改編や複製を前提として分かっているのであれば、発注段階で開発者側に伝えておきましょう。

 

特に、初めて依頼する開発先や多くの依頼をしたい場合などは、トラブルに発展してしまうリスクが高くなるため、権利に関する事前の話し合いと契約書に細かく明記しておくと、トラブルを未然に防げます。

 

5. まとめ

オフショア開発において、法律や権利に注意しておかなければ思わぬトラブルに発展してしまうケースがあります。特に、国が違うと文化や価値観が違うため、予想もしていないすれ違いが起きてしまいます。

 

特に法律に関しては、国によって法律が異なるうえ、どちらの国の法律に準拠するのかでトラブルになるでしょう。また、ソフトウェアなどの制作物にも著作権が発生するため、権利にも注意しなければトラブルに発展しやすいです。

 

このことから、発注段階での話し合いがとても大切になります。また、話し合った内容は必ず契約書に細かく明記して、後からトラブルにならないように注意しましょう。もし、話し合いが不安な場合は、オフショア開発をサポートしてもらえる会社に仲介してもらうと、安全に進められます。

 

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