1. オフショア開発とは
オフショア開発とは、海外を意味する「offshore(岸から離れる)」から分かる通り、国外へシステム開発を委託することを指します。
日本国内でエンジニアを雇用するのではなく、人件費水準の安い海外へ開発を委託することで、低コストでシステムを開発できることが特徴です。システム開発はバックエンド・フロントエンド問わず、Webサイトの制作やスマホアプリの開発も委託できます。
一口にオフショア開発といっても、安さ重視の委託先もあれば、技術重視の委託先もあります。(技術重視の場合は、コストが高くなることは否めません)
さて、そんなオフショア開発の委託先として、近年バングラデシュが注目されています。バングラデシュはインドの東側にある国で、「第2のインド」とも呼ばれる新興国です。
しかし、日本ではバングラデシュの馴染みがなく、委託先としては不安に感じる方も多いかもしれません。ここからは、オフショア開発の委託先としてのバングラデシュの特徴を紹介します。
2. バングラデシュのオフショア開発の基本情報
▼ バングラデシュのオフショア開発基本情報は次の表の通りです。
国民性 | フレンドリー |
---|---|
公用語 | ベンガル語(英語も広く使われている) |
経済状況 | 新興国 |
日本との時差 | 3時間 |
エンジニアの技術力 | 先端技術に強い |
エンジニアの人月単価 | 20万円~30万円 |
エンジニアの平均年収 | 300万円程度 |
それぞれの項目について詳しく解説します。
2-1. 国民性
バングラデシュの国民性はフレンドリーであると言われています。日本人の感覚からは距離が近すぎるように感じてしまう場面があるかもしれませんが、文化の違いと受け止めましょう。
また、バングラデシュは長年他国の植民地であったことから、アイデンティティが強く自国愛に溢れています。独立記念日などバングラデシュ人にとって大切な日には仕事を入れないなど、相手を尊重した対応が求められるでしょう。
2-2. 公用語
バングラデシュの公用語はベンガル語です。(1億7千万人以上の国民のうち、大半がベンガル人)
ただし、イギリスの植民地であった歴史から、英語も広く使われています。教育機関や政府機関でも英語が利用されているため、オフショア委託時もベンガル語ではなく英語でやり取りするとよいでしょう。
2-3. 経済状況
バングラデシュは近年著しい経済発展を遂げていますが、農村部を中心に貧困層も多数存在します。
また、インフラ整備も未熟な部分があり、停電が起きやすいなどオフショア委託先として懸念すべき事項があることも覚えておきましょう。
2-4. 日本との時差
バングラデシュと日本の時差は3時間です。日本の方が3時間進んでいます。
2-5. エンジニアの技術力
バングラデシュのエンジニアの技術力は高く、最先端分野にも強いことが特徴です。バングラデシュは国策としてエンジニア人材・IT人材の育成に力を入れているため、優秀なエンジニアを見つけやすいと言われています。
2-6. エンジニアの人月単価
バングラデシュのエンジニアの人月単価は、20万円〜30万円が相場です。日本の人月単価相場よりも低水準なので、大幅なコスト削減が見込めます。
また、バングラデシュの人月単価は他のアジア諸国と比べても低水準で、中国の半分程度です。そのため、現状でバングラデシュ以外の国へオフショア委託している場合でも、コスト削減のためにバングラデシュへの開発先変更を検討しても良いでしょう。
2-7. エンジニアの平均年収
バングラデシュのエンジニアの平均年収は、300万円程度です。日本や周辺アジア諸国と比べて低い水準ですが、2030年以降は周辺諸国並みになることが予想されています。
3. バングラデシュのオフショア開発が注目される理由とは?
近年、バングラデシュのオフショア開発が注目されていると紹介しました。その理由はいくつかありますが、最大の理由は人件費が安いにも関わらず優秀なエンジニアが多いことです。
バングラデシュは国家政策としてIT振興に力を入れており、IT技術が急速に発展しています。また、バングラデシュの人口は1億7千万人以上で、その大半が若者です。バングラデシュの若者の間ではITエンジニアの人気が高く、バングラデシュの政策「デジタル・バングラデシュ」の影響もあり、優秀なエンジニアが数多く生まれています。
優秀なエンジニアが多く生まれている一方、バングラデシュの経済水準は現状では新興国レベルのため、人件費は安く抑えられています。そのため、日本企業がバングラデシュにオフショア開発を委託する場合、低コストでシステム開発が可能です。
4. バングラデシュのオフショア開発のメリット
▼ バングラデシュでのオフショア開発には、次のようなメリットがあります。
・IT関連企業への手厚いサポートがある
・英語でのコミュニケーションが円滑
・コスト削減が期待できる
・年齢層が若くITリテラシーが高い人材が多い
・親日家が多くやり取りがしやすい
それぞれ詳しく解説します。
4-1. IT関連企業への手厚いサポートがある
バングラデシュでは国家政策としてIT産業に力を入れているため、IT関連企業(IT・ソフトウエア会社など)への手厚いサポートがあることが特徴です。
特に「デジタル・バングラデシュ」では、IT関連企業の法人税が2024年6月まで免除されることが定められており、バングラデシュ現地のオフショア委託先企業は大きな税制優遇を受けています。さらに、IT産業工業地区、ICTビレッジまたはソフトウエア技術ゾーン、ITパーク等に会社を設立した場合、法人税は10年間免除されます。
バングラデシュの企業はこのような国策による後押しを受けているため、コストを抑えた開発が可能になっています。
4-2. 英語でのコミュニケーションが円滑
バングラデシュはインドなどと同様にイギリス植民地であった歴史から、英語が広く使われています。バングラデシュの公用語はベンガル語ですが、人々の英語力は日本よりも高く、日常会話のみならず教育機関や政府機関でも英語が使われていることが特徴です。
オフショア開発時のコミュニケーションに英語を用いれば、ベンガル語の通訳を探す必要はありません。
4-3. コスト削減が期待できる
バングラデシュの給与水準は日本や周辺諸国と比べると高くないため、オフショア開発によって大幅なコスト削減が期待できます。
近年ではオフショア先として人気のあった中国や台湾などで人件費の上昇が見られますが、バングラデシュであれば人件費を抑えることが可能です。
4-4. 年齢層が若くITリテラシーが高い人材が多い
バングラデシュは日本よりも多い人口を抱えていますが、その大半は若年層です。
また、バングラデシュはIT関連の教育にも力を入れています。そのため、ITリテラシーが高い若年層人材が多いことも特徴です。
年齢層が若くITリテラシーが高い人材が多いことから、バングラデシュではオフショア開発時に優秀な若手エンジニアを見つけやすいと言われています。
4-5. 親日家が多くやり取りがしやすい
バングラデシュは親日家が多く、やり取りしやすいこともメリットです。
バングラデシュが独立した際、日本はいち早く国家承認し、その後も経済支援を続けていることが親日の由来と言われています。
オフショア開発時は物理的な距離が離れているため、コミュニケーションに齟齬が生まれやすい環境です。親日国であるバングラデシュであれば、そのような状況でも比較的やり取りしやすいと言えるでしょう。
5. バングラデシュのオフショア開発のデメリット
バングラデシュでのオフショア開発には多くのメリットもありますが、実際に委託する前に次のようなデメリットがあることも知っておきましょう。
・インフラの整備が未発達
・政治状況が不安定な傾向にある
・宗教による考え方の違いがある
それぞれの詳細は次の通りです。
5-1. インフラの整備が未発達
バングラデシュは新興国なので、インフラの整備が未発達な部分があります。特に電力供給が安定していないため、停電の発生が多いです。電力がなければオフショア開発はストップしてしまうため、スケジュールには余裕を持たせておいた方が安心でしょう。
ただし、先述したようにIT産業には力を入れているため、ネット環境は充実しています。電力インフラについても今後の改善が期待できるでしょう。
5-2. 政治状況が不安定な傾向にある
バングラデシュの政治状況は不安定であることも、オフショア開発時に注意すべきポイントです。
バングラデシュは1971年に独立しましたが、その後も数回のクーデターが勃発しています。2000年代にも数回テロが起きており、オフショア委託先の業務に支障が出る可能性があることも否めません。
インフラ未整備の項目でも述べたとおり、バングラデシュでオフショア開発する場合は、不測事態に備えて余裕のあるスケジュールを立てるようにしましょう。
5-3. 宗教による考え方の違いがある
バングラデシュと日本とでは、宗教的な考え方に違いがあることも覚えておきましょう。
バングラデシュ国民の多くは、イスラム教を信仰しています。イスラム教には1日5回の礼拝やラマダンなど、決まった儀礼があることはご存知でしょうか。これらの儀礼がビジネスシーンに影響することもありますが、相手の文化を尊重することが重要です。
また、イスラム教では金曜日が「神聖な日」とされており、バングラデシュでは金曜日と土曜日が週末の休日とされていることが多いです。日本とは週末の概念が異なることも覚えておきましょう。
6. バングラデシュのオフショア開発する際の成功ポイント
ここまで紹介したバングラデシュの特徴を踏まえて、オフショア開発成功のポイントを紹介します。委託先を探す際、また、オフショア開発が始まった後も、次の4点は常に意識してください。
・コミュニケーションを頻繁に取る
・過去の実績・得意分野を見極める
・詳細な仕様書の作成をする
・納期を細かく区切り余裕を持たせた計画をする
それぞれの詳細は次の通りです。
6-1. コミュニケーションを頻繁に取る
日本とバングラデシュでは、文化や風習が大きく異なります。これはビジネス的な慣習も同様です。そのため、お互いに認識の齟齬が生まれないよう、コミュニケーションは頻繁に取るようにしましょう。
毎日・毎週の作業進捗について共有してもらうと共に、こちらから提供できる情報は随時共有することで、スムーズに開発を進められます。
6-2. 過去の実績・得意分野を見極める
委託先を選ぶ際は、過去の実績や得意分野を見極めましょう。
バングラデシュのエンジニアは、AIやブロックチェーンなどの先端技術に強いと言われています。そのため、先端技術を用いた開発を行いたい場合は、バングラデシュを委託先に選ぶと良いです。
一方、デザインやUI・UXなどは、日本国内とは感性が異なることも少なくありません。クリエイティブを重視したい場合は、タイなど他の東南アジア諸国へのオフショアを検討しましょう。
6-3. 詳細な仕様書の作成をする
バングラデシュへオフショア開発を委託する場合は、詳細な仕様書の作成が不可欠です。
バングラデシュと日本では、ビジネス慣習やシステムに対する考え方が一致しない場合もあります。そのため、要件定義をしっかりと行わないと、期待外れのシステムになってしまう可能性が高いです。
なんとなくでの開発は避け、仕様書は具体的に記載するようにしましょう。
6-4. 納期を細かく区切り余裕を持たせた計画をする
開発をスケジュール通りに進めるために、納期を細かく区切って余裕を持たせた計画を立てることも重要です。
バングラデシュでの仕事の進め方は、スケジュールに厳密ではないと言われています。そのため、日本での開発と同じペースでスケジューリングしたい場合は、開発プロジェクトを細かく区切り、それぞれに納期を定めると良いでしょう。
ただし、この場合もバングラデシュの風習を鑑み、金曜日周辺に無理なスケジュールを入れないことが肝心です。
7. バングラデシュのオフショア開発が向いている案件とは?
▼ バングラデシュでのオフショア開発が向いているのは、次のような案件です。
・最新技術を開発したい
・システム開発費用を抑えたい
それぞれの理由について解説します。
7-1. 最新技術を開発したい場合
バングラデシュは国策としてIT振興に力を入れているため、最新技術(AIやブロックチェーンなど)の開発に向いています。
バングラデシュの隣国インドも先端技術に力を入れていますが、バングラデシュも先端技術に強い国です。開発分野によっては日本より進んでいる場合もあるので、オフショア委託先として有効に活用しましょう。
7-2. システム開発費用を抑えたい場合
システム開発費用を抑えたい場合も、バングラデシュへのオフショアが向いています。
バングラデシュは先端技術に強いにも関わらず、給与水準は高くありません。そのため、コストを抑えつつハイクオリティな開発が可能です。
限られた予算の中で優秀なエンジニアを獲得したい場合は、ぜひバングラデシュでのオフショア開発を検討してみてください。
8. バングラデシュのオフショア開発企業のおすすめ4選
最後に、バングラデシュのオフショア開発企業を紹介します。
・Nascenia(ナセニア)
・Brain Station 23
・アローサル・テクノロジー株式会社
・株式会社BJIT
それぞれの企業の特徴は次の通りです。
8-1. Nascenia(ナセニア)
Nascenia(ナセニア)は、バングラデシュの首都ダッカを拠点とするオフショア開発企業です。
Webアプリケーション、モバイルアプリケーションの開発に対応しており、条件によってはAIや機械学習についても相談できます。
会社名 | Nascenia(ナセニア) |
---|---|
拠点 | ダッカ |
対応ジャンル | Webアプリケーション開発 モバイルアプリケーション開発 AI・機械学習 |
ソフト開発のツール | Webアプリケーション(Ruby on Rails、Python、Java、PHP、.Net、AngularJS、ReactJS) モバイルアプリケーション(Android、Kotlin、Swift、Flutter) |
8-2. Brain Station 23
Brain Station 23は、バングラデシュを拠点としており、日本にもオフィスを構えています。
700人以上のソフトウェアエンジニアを雇用しており、世界10か国以上で実績のある経験豊富なオフショア開発企業です。対応ジャンルも幅広く、アプリ開発からサイト制作、フィンテックなどを依頼できます。
会社名 | Brain Station 23 |
---|---|
拠点 | ダッカ |
対応ジャンル | フィンテック モバイルアプリ開発 AEMソリューションズ 機械学習&AI クラウドソリューション Eコマース ビジネスインテリジェンス・ソリューション ERP |
ソフト開発のツール | Angular、Node.js 、JavaScript 、React 、 .NET 、Java 、PHP 、Python 、C/C++ 、C# 、Ruby |
8-3. アローサル・テクノロジー株式会社
アローサル・テクノロジー株式会社は、日本とバングラデシュに拠点を持つ開発企業です。日系企業なので、コミュニケーションの面で安心感があります。
バングラデシュの強みを活かして、AIやブロックチェーンなどの先端技術に関わるプロジェクトにも対応してもらえることが特徴です。また、shopifyを用いたECサイトの制作や、Dialogflowを使ったAIチャットボットの導入、iOS/Androidアプリの開発サービスなども提供しています。
会社名 | アローサル・テクノロジー株式会社 |
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拠点 | 東京都・ダッカ |
対応ジャンル | AIインテグレーション Webインテグレーション AI研究/プロダクト開発 |
ソフト開発のツール | HTML5、Javascript(React/Vue/Angular)、 PHP、Python、Java、node.js、AWS、GCP、 React Native、Swift、Java、Flutter、Unity、AI全般、shopify、Dialogflow |
8-4. 株式会社BJIT
株式会社BJITは、エンジニアの教育に力を入れているオフショア開発企業です。「BJIT Academy」というエンジニア養成所をバングラデシュに開設しており、優秀なエンジニアを多数育てています。
提供サービスとしては、スマホアプリの開発から人工知能を使ったソフトウェア開発まで、最先端技術を幅広くカバーしていることが特徴です。
会社名 | 株式会社BJIT |
---|---|
拠点 | 東京都、バングラデシュ他世界各地 |
対応ジャンル | |
ソフト開発のツール | Objective – C、Swift、Zignals、ByteTaxi、Core 、iOS Libraries、Xcode、Game engine : Cocos2d-x and Unity、OpenGLなど多数 |
9. まとめ
バングラデシュは低コストで優秀なエンジニアを獲得できることから、注目が集まっているオフショア開発委託先です。AIやブロックチェーンなど先端技術をオフショア開発で利用したい場合は、委託先の有力候補となるでしょう。
ただし、政情やインフラが不安定なことから、不測事態が起きる可能性もあります。そのため、バングラデシュでオフショア開発する場合は、スケジュールに余裕を持たせるようにしましょう。
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