1. オフショア開発とは?
オフショア開発は、ソフトウェアやITサービス開発を海外のエンジニアに委託することです。「offshore(離れる+岸)」すなわち「海外」で開発することから、オフショア開発と呼ばれています。
オフショア開発の主な目的は、コストを抑えて優秀な技術者に委託することです。日本よりも人件費の安い国へ委託することで、費用を抑えてシステム開発することができます。
コミュニケーションや時差などに課題はありますが、近年ではリモートコラボレーションツールが発達したおかげで、遠く離れた国へ委託することも問題なく行えます。グローバルな競争力が求められる現代において、今後オフショア開発はほとんどの企業で求められる環境となっていくでしょう。
今回は、東欧の国ベラルーシに特化したオフショア開発について解説します。
2. ベラルーシのオフショア開発の基本情報
▼ ベラルーシの基本情報は、次の表の通りです。
国民性 | 約926万人(2022年1月) |
---|---|
公用語 | ベラルーシ語、ロシア語 |
首都 | ミンスク |
宗教 | 約8割の国民がロシア正教 |
主な産業 | 工業 |
経済成長率 | 2.3%(2021年) |
国民性 | 忍耐強い |
【参考記事】:ベラルーシ共和国:外務省ホームページ
ここからは、それぞれの項目について概要を紹介します。
2-1. 人口
ベラルーシの人口は、約926万人です。これは神奈川県の人口(約923万人)と同程度で、ヨーロッパ諸国では中規模の数です。
2-2. 公用語
ベラルーシの公用語は、ベラルーシ語とロシア語です。ベラルーシは元々はソ連の一部だったので、ロシア語も使われています。
2-3. 首都
ベラルーシの首都は、ミンスクです。IT新興の一環として、ソフトウェア開発支援機構「ハイテクパーク・ベラルーシ」がミンスクに設置されています。
2-4. 宗教
ベラルーシ国民の8割以上は、ロシア正教を信仰しています。旧ソ連の国として、現在もロシアと強い繋がりがあることも特徴です。
2-5. 主な産業
ベラルーシの主な産業は工業で、産業別構造比で27%以上を占めています。ただし、IT振興にも力を入れており、情報通信業の産業別構造比は全産業で3位の7.4%です。
2-6. 経済成長率
ベラルーシの経済成長率は、2021年の数字で2.3%、物価上昇率は9.5%となっています。
ベラルーシの隣国であるロシアとウクライナで攻防が続いており、ロシア陣営と見なされているベラルーシに対しても、少なからず悪影響があるものと考えられるでしょう。
2-7. 国民性
ベラルーシの国民性は、忍耐強いと言われています。
ベラルーシはその歴史を見ても、リトアニア大公国に併合されたり、リトアニアとポーランドが合併したことによってポーランド化されたり、ロシア帝国によるポーランド分割でロシア領とされたり、さらに第一次世界大戦ではドイツの占領下に置かれたりするなど、忍耐を強いられる期間が長く続いています。
その後、ソ連の参加国となり、1986年のチェルノブイリ原発事故では最大の被害国となりました。
このような背景から、ベラルーシの国民性は忍耐強く、オフショア開発の業務でも困難に立ち向かう姿勢が見られると言われています。
3. ベラルーシにおけるオフショア開発の特徴は?
▼ ベラルーシにおけるオフショア開発の特徴としては、次の2点が挙げられます。
・東欧のシリコンバレーとも呼ばれるベラルーシ
・欧州・欧米からのオフショア開発に強い
それぞれ詳しく解説します。
3-1. 東欧のシリコンバレーとも呼ばれるベラルーシ
ベラルーシは「東欧のシリコンバレー」とも呼ばれている技術立国でもあります。
2016年にはウォールストリート・ジャーナル詩が「Belarus Is Emerging as the Silicon Valley of Eastern Europe(東欧のシリコンバレーとして新興するベラルーシ)」という記事を出しており、オフショア開発で蓄積した技術と資金で誕生したスタートアップ企業がGAFAに買収される事例もあります。
技術に定評があるためにオフショア委託が増え、オフショア委託が増えることで技術が向上するという好循環が生まれており、ベラルーシは日本企業にとっても注目すべきオフショア委託先です。
3-2. 欧州・欧米からのオフショア開発に強い
ベラルーシは、特に欧米からのオフショア開発に強いです。
ベラルーシは地理的にも西欧諸国と近く、文化も似ていることから、欧米からのオフショア開発が多かったことが背景にあると考えられます。
ただし、2022年2月からのロシアによるウクライナ侵攻においてベラルーシはロシア側に立っていることから、欧米からのオフショア委託にも影響が出ているでしょう。
4. ベラルーシのオフショア開発における費用相場
ベラルーシのオフショア開発における費用相場は、概ね2000ドル(30万円弱)人月であると考えておきましょう。
ただし、欧米のオフショア委託元と比べた際は、もう少し高い費用感になる場合も考えられます。
5. ベラルーシのオフショア開発のメリット
▼ ベラルーシへオフショア開発を委託するメリットとしては、次の2点が挙げられます。
・高い技術力と豊富な人材数
・スキルセットが高く質の良いトータル設計が可能
それぞれの概要を解説します。
5-1. 高い技術力と豊富な人材数
ベラルーシは東欧のシリコンバレーと呼ばれるほど高い技術力があります。また、ソフトウェア開発支援機構「ハイテクパーク・ベラルーシ」が設立され、ベラルーシ政府としてもIT振興に力を入れているなど、エンジニア人材が豊富であることも特徴です。
5-2. スキルセットが高く質の良いトータル設計が可能
高い技術力と豊富な人材を背景に、ベラルーシへのオフショア委託ではトータル設計を依頼することも可能です。
一定の技術しかない国へオフショア開発を依頼する場合、設計は日本国内で行い、作業をオフショア側へ依頼するというケースも少なくありません。しかし、これでは国内エンジニアへの費用も発生するため、費用が高くなりがちです。ベラルーシへのオフショアであればトータル設計を前提に委託できるため、コストを抑えて開発することが可能です。
6. ベラルーシのオフショア開発のデメリット
ベラルーシでのオフショア開発のデメリットとしては、政治情勢に不安があることが挙げられます。前述したように、ベラルーシはロシアに近い国です。そのため、ロシアのウクライナ侵攻以降、ベラルーシと日本の関係は良好とは言えません。
ベラルーシへの経済制裁が行われると、オフショア委託が制限される可能性もあります。そのため、現状でベラルーシでオフショア開発する場合は、社会情勢を慎重に見極める必要があるでしょう。
7. ベラルーシオフショア開発の今後の可能性は?
ベラルーシは政治情勢が不安定ではありますが、IT振興に力を注いでいる国です。また、ベラルーシではIT人材と非IT人材の収入格差が大きいことから、優秀な人材ほどエンジニア志望になる傾向もあります。
そのため、ベラルーシでのオフショア開発は今後ますます発展していくでしょう。ただし、ベラルーシがロシア陣営に近いことから、日本とは政治的に隔たりがあることも事実です。そのため、日本企業としては委託しづらい状態がしばらく続くかもしれません。
8. まとめ
ベラルーシへのオフショア開発委託は、日本企業にとっては一般的ではないかもしれません。しかし、ベラルーシは東欧でシリコンバレーと呼ばれるほど技術に定評のあるオフショア先です。社会情勢を見極めつつ、積極的に活用してみると良いでしょう。
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