カンボジアのオフショア開発の特徴とは?メリット・デメリットを解説!

カンボジアのオフショア開発の特徴とは?メリット・デメリットを解説!

自社のソフトウェア開発をオフショア開発する企業が増えています。オフショア開発を進めるには、まずどの国で行うか決めなければなりません。かつては中国の人気が高かったのですが、近年はベトナムやフィリピンといった東南アジア諸国を依頼先に選ぶケースが目立つようになりました。その依頼先の1つがカンボジアです。

 

【目次】
1. オフショア開発とは
2. カンボジアオフショア開発の基本情報
2-1. 国民性
2-2. 公用語
2-3. 経済状況
2-4. エンジニアの技術力
2-5. エンジニアの人月単価
2-6. エンジニアの平均年収
3. カンボジアオフショア開発が注目される理由とは
4. カンボジアオフショア開発のメリット
4-1. 人件費を抑えられる
4-2. 優秀なエンジニアの確保ができる
4-3. 日本との時差が少ない
4-4. 親日で穏やかな国民性
5. カンボジアオフショア開発のデメリット
5-1. 品質にズレが生じる可能性がある
5-2. 他国に比べ教育水準が低い
5-3. インフラの整備が未発達
6. カンボジアでオフショア開発する際の注意点
6-1. 品質チェックを随時行う
6-2. 余裕を持たせたスケジュール組みをする
6-3. 要件事項の漏れがない仕様書の作成
7. カンボジアオフショア開発会社のおすすめ3選
7-1. PLAN-B(Cambodia)Co.,Ltd
7-2. PIPED BITS (CAMBODIA)CO., LTD
7-3. キリロム工科大学
8. まとめ

 

1. オフショア開発とは

企業が自社のソフトウェアやアプリケーション開発を、海外を拠点とする他の会社に委託することが「オフショア開発」です。

 

日本ではIT業界のエンジニア不足が深刻化しており、このままでは2030年に約79万人のIT人材が足りなくなると言われています。オフショア開発を導入すれば、海外でIT人材を確保してアプリやシステム開発を委託することが可能です。

 

しかも成果物のクオリティは維持しながら、人件費を抑えることによりコスト削減が期待できます。

 

2. カンボジアオフショア開発の基本情報

 

国民性 親日派で穏やかな性格
公用語 クメール語(カンボジア語)
経済状況 経済規模は小さいが成長の見込みあり
日本との時差 3時間15分
エンジニアの技術力 技術レベルは低い
エンジニアの人月単価 他の東南アジア諸国に比べて安い
エンジニアの平均年収 日本に比べて安い

 

カンボジアは1970年代にクーデターやポル・ポト政権による大量虐殺が行わる凄惨な出来事があり、ポル・ポト政権が1979年1月に崩壊してからも政情不安が続きました。国民はそんな貧困状態から復興に向けて努力してきました。

 

2-1. 国民性

カンボジアに親日派の人が多いと言われる理由は、日本が長年にわたり途上国援助(ODA)をはじめ復興支援を続けてきたことも関係しているようです。2023年は「日カンボジア友好70周年」記念行事が行われています。

 

またカンボジアの人々はほとんどが仏教徒なので、日本人と馴染みやすく、日本企業が現地人と仕事をする際にも宗教の慣習で戸惑うことはありません。

 

2-2. 公用語

カンボジアでは「カンボジア語」とも呼ばれるクメール語が母国語になります。書くときはクメール文字を用いるため、英語や日本語とかなり違います。しかしカンボジアでは小学校4年生頃から英語を学ぶため、ある程度は英語を話せます。

 

さらに首都プノンペンをはじめ観光地では、ホテルやお店、タクシーの運転手など英語でコミュニケーションが取れる場合もあります。

 

2-3. 経済状況

カンボジアは10年ほど前から高い経済成長を記録しており、世界銀行による評価が「低所得国」だったところ、2016年には「低中所得国」になりました。以降も国内総生産(GDP)の成長率は7%前後と、順調な経済成長を続けています。

 

コロナ禍の影響で一時はダウンしたものの、経済協力開発機構(OECD)はカンボジアの2023年のGDP成長率を5.4%と予測しています。そのような状況を受けて、近年は日系企業のカンボジア進出が増加傾向にあります。

 

2-4. エンジニアの技術力

カンボジアはかつてポル・ポト政権下(1975〜1979)で学校施設の廃止などが行われたため、以降は教育水準が低下しました。その影響から、エンジニアの技術力は他の東南アジア諸国に比べて劣っていると言われていました。

 

しかし、近年はIT人材の育成が進み優秀なエンジニアが増えています。

 

2-5. エンジニアの人月単価

カンボジアでオフショア開発を行う際に、エンジニアの人月単価は「約15万~25万円」と言われます。ただ最近は、日系企業によるカンボジアを拠点とするオフショア開発会社が増えてエンジニア教育を行うことで、人月単価にも変化が起きています。

 

あるオフショア開発会社では、月間料金がエンジニアのレベルによって「約24万円~約36万円」となっていました。

 

2-6. エンジニアの平均年収

カンボジアの平均年収に関してはさまざまなデータがあります。例えば、世界の平均給与が分かるリサーチサイトを参考にすると、カンボジアのエンジニアは年間の平均給与が米ドルで「10,526」とありました。

 

日本円に換算すると約148万500円(2023年5月27日)です。なお最も典型的な給与は米ドル「7,000」とあり、日本円換算では約98万4,500円になります。(『Average Salary Survey』より

 

ちなみに、カンボジア労働職業訓練省は2023年の最低賃金を、「月額200ドル」に設定する省令を発表しました。(『ジェトロ(日本貿易振興機構)』ビジネス短信より

 

米・200ドルを日本円に換算すると、約2万8,100円(2023年5月27日)です。最低賃金を月200ドルとすれば年収は2400ドルとなり、日本円換算で約33万7,600円なので、リサーチサイトによるエンジニアの平均年収はそれより高いことになります。

 

3. カンボジアオフショア開発が注目される理由とは

オフショア開発国としてカンボジアが注目されるようになった理由には、人件費や国民性などがありますが、カンボジア政府の政策や現地での教育体制の前進、さらに日本による支援を忘れてはなりません。そうしたさまざまなプラス要因があって、カンボジアのオフショア開発が進展したと言えるでしょう。

 

4. カンボジアオフショア開発のメリット

カンボジアオフショア開発には主に次のようなメリットがあります。なぜメリットになるのか、カンボジアの歴史や現状を踏まえながらそれぞれ解説します。

 

4-1. 人件費を抑えられる

オフショア開発を進めるうえで、東南アジア諸国のエンジニアの人月単価はベトナムで約20万~35万円、フィリピンで約25万~35万円と言われます。同時期のデータでは、カンボジアの人月単価が約15万~25万円になっており人件費が安いことが大きな特徴でした。

 

そのためコストを抑えられることがメリットとされてきましたが、これからはカンボジアもエンジニアの質が上がるとともに人月単価がアップする可能性があります。

 

4-2. 優秀なエンジニアの確保ができる

カンボジアは1970年~1990年代の内戦や政情不安の影響で教育水準が低く、生活インフラの整備も遅れていました。しかし日本から教員養成や英語教育、学校建設などを支援したこともあって2000年代にずいぶん回復しました。

 

2022年はカンボジアの教育関係者も自国の教育水準向上の参考にしようと、日本の小学校を訪れ授業を見学しています。またカンボジアにある私立の工科大学では、カンボジア人のIT人材が多数育っています。これからはますます優秀なエンジニアが増えることが期待されます。

 

4-3. 日本との時差が少ない

カンボジアは日本との時差が2時間しかありません。日本の方が2時間進んでいるため、カンボジアが朝9時ならば日本は朝11時になります。カンボジアでは日本と同じくサマータイムを取り入れていないので、年間を通じて時差は2時間です。

 

時差が少ないことによるメリットとしては、例えばオンライン会議を行うときにどちらかが深夜ということがないのでストレスを感じることがありません。また電話やメールによるコミュニケーションもスムーズに行うことが可能です。

 

4-4. 親日で穏やかな国民性

カンボジアが親日国といわれることには歴史も関係しているようです。およそ400年前、江戸時代初期に朱印船貿易のためやってきた日本人たちがプノンペンの「日本町」に住んでいました。

 

時が流れて、日本のODAにより2001年に「きずな橋」、2015年に「つばさ橋」が大河メコン川に架けられ、人々の生活に欠かせないものとなりました。カンボジアの紙幣には二つの橋が描かれています。日本の企業がオフショア開発するにあたり、穏やかな性格で学習意欲が高い人が多いこともメリットと言えます。

 

5. カンボジアオフショア開発のデメリット

そんなカンボジアオフショア開発ですが、日本企業にとってメリットばかりとは限りません。デメリットについても把握しておく必要があります。

 

5-1. 品質にズレが生じる可能性がある

日本企業が自社のソフトウェアやアプリの開発を他の企業に依頼する場合、プロジェクトによる成果物が発注通りのものでなければ成功とはいえません。

 

日本の製品は世界的にレベルが高いことで知られ、カンボジアの製品はそのレベルに達していないのが現状です。カンボジアでも優秀なIT人材が育ちつつあるとはいえ、彼らが納得する品質と日本企業が望む品質レベルとは認識のズレが生じるリスクが考えられます。打ち合わせ段階から進捗管理までコミュニケーションを密に取りながら適切なフィードバックを行うことが重要です。

 

5-2. 他国に比べ教育水準が低い

カンボジアは1991年に内戦が集結して、教員養成や学校施設の建設が進み、少しずつ教育水準も上がってきました。しかし他のオフショア開発国に比べるとまだ教育水準は低いのが現状です。日本企業がオフショア開発を進めるには、カンボジアの開発会社やエンジニアを教育する必要があります。

 

製品の品質管理やビジネスの常識、エンジニアのIT技術から情報漏洩などに対するセキュリティ対策まで教育することになれば、かなりコストがかかることになります。

 

5-3. インフラの整備が未発達

カンボジアは内戦の影響でインフラ整備が遅れています。2003年頃から首都圏ではWi-Fiサービスがはじまり、都市部を中心にインターネット環境も整備されてきましたが、地方の一部ではまだ電力や通信のインフラが十分ではないところもあります。

 

地域によっては停電やネット回線の不具合などによってプロジェクトの進捗に影響するリスクが考えられます。オフショア開発会社を選ぶ際は、そのエリアのインフラが整備されているか確認するようにしましょう。

 

6. カンボジアでオフショア開発する際の注意点

カンボジアでオフショア開発を行うにはデメリットを踏まえたうえで、特に次のようなことに注意する必要があります。

 

6-1. 品質チェックを随時行う

カンボジアはまじめで学習意欲が高い人が多いと言われています。しかし、世界的にも勤勉な国民性で有名な日本人とはどこかで認識のズレが生じることが考えられます。

 

オフショア開発でもプロジェクトが仕様書通りに進んでいるか、念入りに品質チェックを行うことが重要です。

 

6-2. 余裕を持たせたスケジュール組みをする

カンボジア人はまじめなので、スケジュールを守ろうとする意識は高いかもしれません。しかし、カンボジアではインフラ整備が十分ではない地域があるため、突然の停電や通信網の不具合などによって、プロジェクトの進行が遅れる可能性があります。

 

万が一のときも納期に間に合うよう、スケジュールに余裕を持たせておくことでリスクを回避することが可能です。

 

6-3. 要件事項の漏れがない仕様書の作成

仕様書とはソフトウェアやアプリの開発を行う際に必要となる説明書にあたります。エンジニアは仕様書をもとに開発を進めるため、大変重要なものです。基本的に開発を依頼した発注者が仕様書を作成します。仕様書の内容に要件事項の漏れがないことはもちろんですが、さらに言葉の壁を意識して作成するべきです。

 

カンボジアの公用語はクメール語なので、エンジニアが日本語や英語教育を受けているとしても、日本人同士のような「あうんの呼吸」「暗黙のルール」は通用しません。仕様書だけでなく、コミュニケーションを取るときも、5W1Hを意識して明確に伝えることが大切です。

 

7. カンボジアオフショア開発会社のおすすめ3選

カンボジアを拠点とするオフショア開発会社はまだそれほど多くありません。そんな中、次の3つはホームページで活動内容が分かります。

 

7-1. PLAN-B(Cambodia)Co.,Ltd

PLAN-B(Cambodia)Co.,Ltdは、東京都と大阪府に本社を構える株式会社 PLAN-Bの海外子会社です。

 

得意分野 モバイルアプリ・WEBシステム開発、WEB制作
特徴 デジタルマーケティングコンサルティング、恋愛サポート事業(「BeLoves」の運営)を手がける。
オフショア開発拠点 カンボジア
所在地 カンボジア・プノンペン
ホームページ https://planb-cambodia.com/services/offshore

 

 

7-2. PIPED BITS (CAMBODIA)CO., LTD

PIPED BITS (CAMBODIA)CO., LTDは、東京都に本社を置く株式会社パイプドビッツの海外子会社です。

 

得意分野 情報資産プラットフォーム事業
特徴 現在はカンボジアのインターン大学生と、アプリケーション開発プロジェクトを進めている。
オフショア開発拠点 カンボジア
所在地 カンボジア・プノンペン
ホームページ https://www.pi-pe.co.jp/company/cambodia/

 

 

7-3. キリロム工科大学

キリロム工科大学は、日本の起業家・猪塚武氏がカンボジアに創設した私立大学ですが、GoMA社と提携することでオフショア開発サービスを提供しています。

 

得意分野 WEBアプリケーション・モバイルアプリケーション開発、WEB/ECサイト開発
特徴 カンボジアトップクラスのIT教育機関、提携でオフショア開発サービスを提供する。
オフショア開発拠点 カンボジア(拠点はキリロム国立公園、プノンペン)
所在地 カンボジア・プノンペン
ホームページ https://kirirom.studio/

 

8. まとめ

東南アジア諸国のなかでオフショア開発国として近年人気が高まっているベトナムは親日家が多く、エンジニアの人月単価が安いことで知られます。カンボジアはさらに人件費を抑えられることから注目されており、これからは開発先に選ぶ日本企業が増えるかもしれません。

 

オルグローラボ」では、ベトナムのオフショア開発事業をサポートしています。オルグローラボを利用すれば、業務スタートまでのプロセスを省略でき、納品後の保守運用までサポートしています。特にベトナムは上述したとおり、低価格で高品質な業務を依頼でき、国民性も良いのでおすすめです。