1. オフショア開発とは
オフショア開発とは、アプリやシステム開発などを海外の企業にアウトソースする手法です。ソフトウェアの開発には時間がかかり、それに伴い多額の人件費が見込まれます。国内ではITエンジニアの不足が叫ばれて久しく、国内で開発を担うと、コストがかさみます。
一方人件費の安い海外で開発を行うと、大幅なコスト削減と同時に優秀な人材の確保が可能です。
2. 中国のオフショア開発の基本情報
国民性 | 自己主張が強い、メンツを重んじる、家族を大切にする、効率化を重視する。 |
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公用語 | 中国語 (うち、広東語、上海語などいくつかイントネーションの違う方言が存在) |
経済状況 | 2022年における実質GDP成長率は3.0% 14.7兆USドル |
日本との時差 | 1時間 |
エンジニアの技術力 | 高い技術力を有する |
エンジニアの人月単価 | 35万~90万円 |
エンジニアの平均年収 | 200万~300万円 |
2-1. 国民性
▼ 中国人の主な国民性
・自己主張が強い
・メンツを重んじる
・家族を大切にする
・効率化を重視する
上記のように言われており、日本人と異なる点もあります。ビジネスにおいてはこれらの特性の理解、ならびに対応が必要です。
2-2. 公用語
中国の公用語は中国語です。普通話とも呼ばれる標準語に加え、首都北京で使われる北京語、香港・マカオ・広東省などの華南地区で話されている広東語、国家中心都市のひとつである上海で使われる上海語など、いくつかイントネーションの違う方言が存在しています。方言は種類が多く、七大方言とも十大方言とも言われています。
2-3. 経済状況
中国の2022年における実質GDP成長率は3.0%と、経済成長率の世界平均である3.4%をやや下回っています。しかし中国では、2022年11月より成長鈍化の主な原因であったゼロコロナ政策における規制が緩和されました。
国際通貨基金(IMF)によると、2023年における経済成長は中国とインドが牽引するとの予想です。よって今後は経済活動の再開により、中国における2023年GDP成長率は5.2%に回復すると見込まれています。
GDPは14.7兆USドルに達し、これは同時期のアメリカのGDP(20.9兆USドル)の7割にあたります。
2-4. 日本との時差
中国と日本の時差は1時間です。中国の国土は約960万平方キロと日本の約25倍あり、経度も60度ほどありますが、中国国内で時差は設けていません。実際は地域ごとに実用性の高い非公式の時間を設定していますが、大都市である北京、上海、香港などはあまり経度の差がないため、非公式の時間を考慮する必要はないです。
2-5. エンジニアの技術力
中国の巨大テック企業と呼ばれるBATH(バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイ)は大きな影響力を持つため、中国は今や世界のIT大国と呼ばれています。その活躍を担う中国人エンジニアの技術力には目を見張るものがあります。
中国人はもともと、最新技術やスキルを貪欲に習得・習熟しようとする姿勢に加え、中国は国をあげてIT人材の育成に努めました。大学で学ぶ環境や、国外で技術を取り入れる環境が整備されており、この結果、技術力の高いエンジニアが中国にはたくさんいるのです。
2-6. エンジニアの人月単価
「人月単価」とは、ITエンジニアにかかるひと月あたりの人件費のことです。中国人エンジニアの人月単価は35万円~90万円となっています。幅があるのは、エンジニアによって開発可能な業務が異なるためです。中国人エンジニアの人月単価は他のアジア諸国よりも高額ですが、その高い技術力が魅力です。
2-7. エンジニアの平均年収
テンセントやファーウェイの年収が1000万円を超えたという話もありますが、中国人エンジニアの平均年収は200万円~300万円となっています。1000万円を超えるような年収をもらうエンジニアは、大学や大学院などでコンピュータを学んだ、学歴もスキルも高い方です。
3. 中国のオフショア開発の現状や問題点は?
かつて主流だった中国でのオフショア開発ですが、現在その地位は、ほかのアジア諸国にとって変化されています。中国でオフショア開発を行う際の現状や問題点をまとめました。
3-1. 中国のオフショア開発のこれまで
中国はその広大な国土と豊富な人口で、かつては日本のオフショア開発の受け入れを盛んに行っていました。始まりは1980年代に中国に進出していた日本企業のシステム開発を行うところからです。2000年代前半までの日本は、中国でのオフショア開発が多かったのですが、近年ではその拠点をほかのアジア諸国へとシフトしており、ベトナム、フィリピン、インド、バングラデシュなどが挙げられます。
3-2. 現状の動向は?
現在中国はIT大国と言われるように、IT分野において存在感が大きくなっています。中国人エンジニアの技術力もかなり高く、それに伴い人月単価も高いため、コスト面でのメリットは他国と対比して小さいです。
このため、中国でのオフショア開発を行う際は、コスト削減目的ではなく高い技術力を必要とする案件において重視されています。
4. 中国オフショア開発における単価の特徴
人月単価 (万円) | プログラマー | SE | ブリッジSE | PM |
---|---|---|---|---|
中国 | 42.09 | 52.06 | 84.78 | 85.77 |
ベトナム | 31.73 | 39.88 | 51.34 | 57.94 |
フィリピン | 36.25 | 49.63 | 71.07 | 65.83 |
インド | 34.72 | 51.56 | 67.97 | 83.90 |
バングラデシュ | 29.64 | 39.64 | 69.64 | 46.07 |
4-1. コストはどの国よりも高いが、技術力で群を抜く中国
中国オフショア開発のコストは5か国の中でもっとも高額になりました。特に沿岸部でのコストが高く、日本よりも高い企業すらあります。
一方、内陸部ではまだコストが低めの企業も存在しています。中国のオフショア開発で期待されるのは、高い技術力を必要とする大型システム案件の開発などです。
4-2. コストが安価で、技術力も向上しているベトナム
ベトナムのオフショア開発コストは中国と比べ、平均的に安価です。このことからポスト中国として、日本の新規オフショア開発を担ってきました。ベトナムは国策としてIT教育を盛んに行っており、人材が豊富に供給される構図ができています。
このため、優秀な若いエンジニアが常に排出され、コストが低く安定しているのです。ベトナムは親日家で、勤勉な国民性を有していることから、高度な業務の委託も可能です。時差も2時間で、あまり大きくありません。
4-3. 欧米からの開発を請負い、中国に次ぐコストのフィリピン
フィリピンのオフショア開発コストは、5か国の中で中国に次ぐ水準です。これは日本語ができる人材が少ないからです。これはビジネスサイドとエンジニアをつなぐ役割であるブリッジSEのコストに顕著に表れています。
フィリピンは公用語が英語のため、日本よりも欧米など、英語圏からのオフショア開発を行っています。英語でオフショア開発を行う環境が構築できれば、コストを低く抑えることが可能でしょう。時差も1時間と小さいことから、候補のひとつにあげられるのがフィリピンです。
4-4. 欧米からの開発を請け負う、技術力には定評のあるインド
インドのオフショア開発コストは、フィリピンと同程度の高めの水準となっています。これは、早期より欧米のオフショア開発を行っていたためです。また、IT教育も盛んであるため、技術力には定評があります。ほかのアジア諸国と比べると、コストが高くつくのではと心配になりますが、中国と同様大規模なシステムの開発が可能です。
このような技術力が必要な案件では、インドでオフショア開発を行うことで、コストメリットを受けられます。時差が3時間30分あることに留意が必要です。
4-5. 近年注目を浴びるバングラデシュ
バングラデシュのオフショア開発コストは、5か国の中では最も低い水準です。公用語はベンガル語ですが、英語もよく使われるため近年、欧米のオフショア開発先として有名です。国自体もIT政策に力を入れており、技術力のあるエンジニアも増えています。
人件費自体も安く、親日家の多いバングラデシュは、日本でもオフショア開発先候補として上がることもあるでしょう。ただし、オフショア開発を行う際には、時差が3時間あることを念頭に入れる必要があります。
5. 中国でオフショア開発をするメリット
中国でオフショア開発をする際のメリットについて、解説いたします。
5-1. IT大国としての高い技術力
IT技術者の人数も世界第2位、名実ともに世界のIT大国である中国は、そのエンジニアの技術力においてトップクラスです。高い技術を持つエンジニアの数も多く、大規模な案件でも対応が可能です。
5-2. 時差が少なくコンタクトが取りやすい
時差が1時間と少なく、コンタクトがとりやすいことはメリットのひとつです。時差が大きいとスムーズなやり取りが難しく、早期で対応したい問題が発生しても、タイムリーな情報共有が難しいです。中国のオフショア開発では、時差が小さいため、オンライン会議を行ってやりとりをすることも、問題を早急に報告することも労力を必要としません。
5-3. 優秀な人材の確保がしやすい
オフショア開発は海外の優秀なエンジニアを確保できることが大きなメリットです。日本国内では少子高齢化が進み、労働人口の減少が確実と言われています。また、エンジニアは人材市場で流動性が高く、転職が活発です。スキルの高い人材を確保するには高待遇が必要となり、コストが高くなってしまいます。
中国は、人口が多く、エンジニアの数が豊富です。さらに、中国はIT政策をとっていることからITエンジニアの質が高いことはすでに述べました。ですが人件費は日本と比べると安く、その傾向は沿岸部より内陸部の都市で顕著に表れています。このため、オフショア開発は人件費を削減しつつ、最新の技術に精通した優秀な人材を確保できる手段となっています。
6. 中国でオフショア開発をするデメリット・リスクは?
中国でオフショア開発をする際のデメリット・リスクについて、解説いたします。
6-1. 文化・国民性の違いによる問題
中国でオフショア開発を行う際は、中国の文化にも理解を深める必要があります。中国のビジネスマナーとして、相手が目上でもストレートに意見を伝える、などといった日本との文化・国民性の違いがあるからです。
日本では婉曲表現をすることが多いですが、中国の文化では受け入れられません。あいまいに伝えると、相手に伝えたいことが伝わらず開発がスムーズに行われないこともあります。
また、中国人の中には反日感情を持つ方も少なくありません。こういった中国の文化・国民性について理解し、開発に問題が起こらないような事前の対策が必要となってきます。
6-2. 国民性の違いがある
中国人は成果主義で、責任が生じた際に自分の非は認めないと言われています。中国人は自分が受け持つ仕事の範囲や責任を明確にしたいという人が多いからです。仕事の過程よりも結果を重視し、設計書などで明確に指示された以上のことは行いません。
日本人は結果までの過程を判断基準にすることも多いため、中国人の国民性を理解していないと戸惑うこともあるでしょう。都合のよい考えは持たずに、しっかりとミーティングや設計書で指示を行うことで、期待したよりも品質が低くなるようなケースをさけることが可能です。
6-3. 以前より人件費が高騰した
人件費の高騰は、中国でのオフショア開発におけるひとつの問題点となっています。以前はコストも低かったのですが、近年の技術の発達に伴いコストが上昇し、中国でのオフショア開発コストはアジア圏最大となっています。
コスト面だけを見て中国にオフショア開発を委託する時代は終わりましたが、その分中国は他のオフショア開発委託国よりも高い技術が魅力です。
6-4. 中国政府による情報規制がかかる可能性
中国ではインターネットに対する検閲が政府によって日常的に行われています。中国政府による情報規制によって、社内の情報が漏洩することや、業務へ監査が行われ、スムーズな開発の妨げとなることもあるでしょう。
政府による情報規制を完全に排除することは難しいため、情報規制がかかったとしても十分に納期に間に合うようなスケジュール調整をすることが必要です。
7. 中国のオフショア開発の今後は?
今後中国でのオフショア開発においては、さまざまな動きが予想されます。まず、コストを見極めつつ高い技術を目当てに、大規模な案件を中国でオフショア開発するケースです。
一方で、経済安全保障推進法の成立に伴い、金融機関が中国からの脱オフショアを検討しているとも言われています。中国でオフショア開発を進めていく際は、このような状況に留意が必要です。
8. 中国のオフショア開発会社のおすすめ4選
中国でオフショア開発を行う際に、おすすめのオフショア開発会社を4つ紹介いたします。
8-1. 富士ソフト株式会社
富士ソフトは創業から51年経つ、老舗のIT企業です。2010年11月よりグループ内に中国法人ヴィンキュラムチャイナ(VCC)を設立し、オフショア開発サービスを行っています。技術者確保、現地要員教育、国内窓口での日本語の各種サポートを行い、リスク管理を徹底した体勢で総合的なコスト削減を実現しています。
8-2. 株式会社ケネス
株式会社ケネスは2004年に設立された総合的なサービスを提供するIT企業です。中国大連に支社も持ち、中国でのオフショア開発を推進しています。高い技術力、豊富な実績を誇り、また、現地には日本語の得意なスタッフも多く、安心してオフショア開発を行える企業です。
8-3. グローバル・アスピレーションズ株式会社
グローバル・アスピレーションズ株式会社は、2013年に設立されたシステム開発を中心にインフラ開発を行う会社です。中国内陸部の西安に開発拠点を持ち、オフショア開発も行っています。このため品質は高く、コストを抑える開発が可能です。オフショア開発コンサルティングサービスや、優秀なブリッジSEを提供するエンジニアリングサービスなどを提供していることが特徴です。
8-4. 株式会社J&Cカンパニー
株式会社J&Cカンパニーは2015年に設立された岡山のソフトウェア開発会社です。2社の中国法人を持つため、スピーディな開発が可能です。こちらの会社の中国オフショア開発体制では、1000件を超える日本開発プロジェクトの実績や、10年以上の日本向け案件の経験があります。現地法人を運営しているからこそ、リアルな情報も得られるでしょう。
9. まとめ
中国へのオフショア開発は当初、コスト削減が主な目的でした。現在はその高い技術力を生かした開発へと移行しています。コストはアジア圏においては高いですが、内陸部など、いまだコストが低く済むところもあります。これらの情報を踏まえたうえで、オフショア開発の窓口が日本にあるような会社を選ぶと安心です。
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