オフショア開発における消費税とは?注意点も解説

オフショア開発における消費税とは?注意点も解説

オフショア開発では、開発に必要な業務が海外と国内に分かれており、消費税が課税される取引とそうでない取引が混合しています。自社でおこなう開発業務の場合は消費税が課される取引なのかどうか、確認しながら業務を進めることが大切です。この記事では、オフショア開発の消費税について、注意点とあわせて解説します。

 

【目次】
1. そもそも消費税とは?
2. 課税の対象となるもの
2-1. 4つの要件を全て満たす取引
2-2. 課税対象となる例
3. 課税の対象とならないもの
4. 簡易課税方式と原則課税方式について
4-1. 簡易課税方式
4-2. 原則課税方式
5. 不課税と非課税について
5-1. 不課税取引
5-2. 非課税取引
5-3. 課税売上割合の計算上の非課税と不課税の違い
6. オフショア開発における消費税の取り扱いについて解説
6-1. 委任契約・準委任契約・請負契約の場合の取り扱い
6-2. 国内企業にシステム開発を依頼され国外の企業と連携した場合の取り扱い
6-3. オフショア開発にて国外取引をした場合、消費税分は得になるのか?
7. オフショア開発における源泉所得税の取り扱いについて解説
7-1. 日本国外の取り扱いの場合
7-2. 租税条約の取扱いについて
7-3. ソフトウェアの開発自体を委託した場合は?
7-4. 著作権について注意
8. まとめ

 

1. そもそも消費税とは?

消費税は、サービスや物品が消費される取引に課される税金です。国内のほぼすべての販売や取引が消費税の対象で、税率は標準で10%、軽減税率の対象であれば8%の消費税が課せられます。

 

消費税は物品やサービスの提供を受けた消費者が負担する税金です。しかし消費者自身がサービスを利用するたび、物品を購入するたびに納税するのは現実的でないため、事業者が代わりに納税している間接税のひとつでもあります。

 

国内のほぼすべての販売や取引が消費税の課税対象ではありますが、非課税取引・不課税取引など、一部消費税が課せられない取引も存在します。オフショア開発をおこなう際は、課税取引・非課税取引・不課税取引が混合するため、注意深い計算業務が欠かせません。

 

2. 課税の対象となるもの

国内の取引のほとんどが消費税の課税対象ではありますが、消費税が課される要件が定められています。

 

2-1. 4つの要件を全て満たす取引

▼ 消費税が課される取引は、以下の4つの要件すべてに該当する取引とされています。

 

国内取引

事業者が事業としておこなう取引

・対価をともなう取引

資産の譲渡、資産の貸付、役務の提供

 

ただし、上記の要件をひとつでも満たさない取引である場合、消費税の課税の対象から外れる不課税取引となります。開発業務(役務の提供)が国外でおこなわれた場合、国内取引に該当しない不課税取引であるため、消費税は課されません。

 

2-2. 課税対象となる例

オフショア開発の場合、企画や要件定義を国内の自社でおこない、仕様書の作成やコード入力を国外の委託会社でおこなうケースが多くあります。

 

開発がおこなわれたのが国外だとしても、開発した成果物を国内で受け取った場合、国内での資産の譲渡に該当するため、消費税の課税対象になるので注意してください。取引が実際におこなわれた場所がどこであるかが、課税の判断のポイントです。

 

3. 課税の対象とならないもの

開発業務が国内取引・事業者が事業としておこなう取引・対価をともなう取引・資産の譲渡、資産の貸付、役務の提供のいずれにも該当しなければ、課税の対象になりません。資産の譲渡などに該当しない給与や賃金、保険金、対価の支払いがない試供品や損害賠償金には消費税はかかりません。

 

4. 簡易課税方式と原則課税方式について

消費税の計算方法は、簡易課税制方式と原則課税方式に分かれています。

 

4-1. 簡易課税方式

簡易課税方式は、消費税を納める事業者の負担を軽減するために採用された計算方式です。通常であれば後述する原則課税方式で消費税を計算しますが、原則課税方式では項目を細かく分類しながら計算する必要があり、非常に手間になります。

 

そこで採用されたのが簡易課税方式で、受け取った消費税に対して業種ごとの割合(みなし仕入率)を掛けて、納めるべき消費税額を算出します。

 

例えば、不動産業を営む事業者の売上に含まれる消費税が年間500万円であった場合、仕入率は40%とされています。消費税に仕入率を掛け合わせて、500万円×40%=200万円が仕入れなどで支払った消費税と計算できます。つまり、500万円−200万円=300万円が納めるべき消費税の金額になります。

 

4-2. 原則課税方式

原則課税方式は、通常の事業で消費税を算出する際に採用される計算方式です。受け取った消費税と支払った消費税を計算・相殺して、納めるべき消費税を計算します。

 

ただし、不課税取引・非課税取引・課税取引・免税取引に区別して消費税を計算する必要があります。軽減税率が適応される品目については、さらに細かく分類しながら最終的な消費税額を算出します。

 

年間の課税売上が3,000万円であり、年間の課税仕入などが1,500万円の事業の場合、消費税額は(3,000万円×10%)−(1,500万円×10%)=150万円となります。

 

5. 不課税と非課税について

取引が課税要件を満たさない場合、消費税は課されません。ただし、課税売上の割合を計算する際は、課税されない取引を不課税と非課税に分ける必要があります。

 

5-1. 不課税取引

国内取引・事業者が事業としておこなう取引・対価をともなう取引・資産の譲渡、資産の貸付、役務の提供の要件に当たらない取引は、消費税が課税されない不課税取引に当たります。国外における物品の販売やサービスの消費、無償での贈与、資金を提供した出資者に対する配当などは、不課税取引であるため消費税は課されません。

 

5-2. 非課税取引

国内での取引かつ対価をともなう資産の譲渡など、課税の要件に該当する取引であっても、一部は消費税が課されない取引と定められており、非課税取引と呼ばれます。

 

取引の性格上課税になじまないと認められる取引、社会的に配慮されるべき取引などに当たる場合、要件を満たしても非課税の扱いになります。課税になじまない取引の例としては、土地や有価証券の譲渡、利子や保険料などがあります。

 

また、社会福祉サービスの提供や助産、埋葬、学校の授業料、住宅の貸付などは、社会的に配慮されるべきとして消費税は課されません。

 

5-3. 課税売上割合の計算上の非課税と不課税の違い

非課税と不課税取引の違いは課税売上割合を計算する際にあらわれます。課税売上割合とは、総売上に対する課税対象の売上の割合を示すもので、分母を総売上(課税売上+非課税取引)、分子を課税売上として計算します。

 

非課税の売上も不課税の売上も課税されない売上ではありますが、非課税取引は分母のみに算入し、不課税取引は分母にも分子にも算入しません。課税売上割合の計算式は、課税売上割合=課税売上高/課税売上高+非課税売上高となります。

 

6. オフショア開発における消費税の取り扱いについて解説

オフショア開発では契約を国外の企業と結ぶケースが多くありますが、消費税が課される取引かどうかを租税条約や取引内容を参考に確認しておく必要があります。

 

6-1. 委任契約・準委任契約・請負契約の場合の取り扱い

委任契約は法律行為の委任、準委任契約は開発行為の委任、請負契約は製作物の納品を目的とした契約方法です。委任契約・準委任契約であれば、役務が提供される場所や資産が譲渡される場所が国内か国外かで課税・不課税が判断されます。

 

技術者が国内の事業所に派遣される場合、対価の全額に消費税が課されることになります。請負契約であれば、国内において資産の譲渡がおこなわれることが常識的であるため、その対価に消費税が課されます。

 

6-2. 国内企業にシステム開発を依頼され国外の企業と連携した場合の取り扱い

国外の企業から国内企業に従業員が派遣された場合は、役務の提供が国内でおこなわれると判断できるため、対価の全額が消費税の課税対象です。

 

ただし、開発業務を両国共同でおこなう場合、要件定義や基本設計は国内で、詳細設計や開発業務を国外で分けておこなうケースが多々あります。その場合は実施する役務の内容や場所を区分して、課税されるかどうかを個別に判断します。

 

6-3. オフショア開発にて国外取引をした場合、消費税分は得になるのか?

オフショア開発で国外の企業と取引をした場合、消費税が課される国内の取引に該当しないため、不課税扱いとなり、消費税分の負担を減らせます。資産の譲渡がおこなわれた場所や技術の譲渡がおこなわれた場所が国外であれば、消費税は課されません。

 

ただし、資産の譲渡や技術の譲渡が国外でおこなわれたとしても、成果物を日本に輸入する際は消費税がかかります。その場合、輸入者が税金を負担します。国外で製作したものを国外で消費するのであれば、消費税分が得になります。

 

7. オフショア開発における源泉所得税の取り扱いについて解説

外国法人との取引であっても国内を源泉とする所得については税金が課されますが、取引内容によって課税されないケースもあります。

 

7-1. 日本国外の取り扱いの場合

資産の譲渡については、源泉徴収をする必要はありません。役務の提供の場合、国内での取引であれば課税対象になりますが、事前の届出による徴収免除や税還付を受けることが可能です。著作権の使用や譲渡についても基本的には課税対象ですが、徴収免除の特例があります。

 

7-2. 租税条約の取扱いについて

課税の扱いについては租税条約が優先されるため、事前に確認しておく必要があります。事業所得の場合、業務がおこなわれる恒久的施設が国内外どちらにあるかが焦点となります。恒久的施設が国外であれば源泉徴収をおこなう必要はありません。

 

ただし、恒久的施設が国外にあっても実質の業務が国内でおこなわれていれば、課税対象と判断される可能性もあります。

 

7-3. ソフトウェアの開発自体を委託した場合は?

オフショア開発を実施する際は、コード入力など単純な作業だけを委託するのではなく、企画から開発まで一貫した業務を国外でおこなうケースもあります。国外の開発会社において作成された成果物については、著作権と同様の扱いになるため、著作権の取引に準じて課税の対象になるか判断されます。

 

著作権を取り扱う場合、基本的には著作権の使用や譲渡が発生するため、その対価として支払われた金額に対して源泉所得税が発生します。ただし、著作権の使用や譲渡は発生した場所によって課税の有無が異なるため、重ねての確認が必要です。

 

7-4. 著作権について注意

自社から国外の事業者に開発を依頼した場合、著作権は自社ではなく依頼した国外の事業者にあると考えるのが一般的です。オフショア開発の成果物を自社で使用する場合、国外の事業者から自社へ著作権を譲渡される形になるため、源泉所得税が発生します。

 

開発を依頼した事業者への対価については、20%の源泉徴収税を控除してから支払いをおこないます。役務の提供は不課税扱い、著作権の譲渡については課税対象となるため、取引内容に応じて源泉徴収の金額が変動することに注意してください。

 

8. まとめ

オフショア開発における消費税について解説しました。消費税は、課税要件を満たすかどうか、準委任や請負などの契約形態、資産や役務の取り扱いによって負担額が変動します。自社の取引のケースではどのように納税をすべきなのか、項目一つひとつの確認が大切です。

 

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