1. ラボ型開発(ラボ契約)とは?
ラボ型開発(ラボ契約)とは、オフショア開発の中でも、とくに一定期間を区切ってエンジニアチームを確保する契約形態です。契約期間中はエンジニアチームを自社の開発部門のように使えます。
ラボ型開発の契約期間は、最短は3ヶ月程度、多くの場合は半年〜1年の場合が多いです。なお、ラボ型開発は「ODC(Offshore Development Center)」と呼ばれる場合もあります。
2. ラボ型開発が注目される理由
ラボ型開発は近年注目されている契約形態です。
▼ ラボ型開発が注目されている理由としては、次の2点が挙げられます。
・日本国内のエンジニア人材の不足
・ウォーターフォール型からアジャイル型へ開発手法が移行
それぞれの詳細は次のとおりです。
2-1. 日本国内のエンジニア人材の不足
ラボ型開発が注目されている理由としては、日本国内のエンジニア人材が不足していることが挙げられます。
自社内に開発部門を創る場合はエンジニアを正社員として雇用する必要がありますが、人手不足の日本ではエンジニアを見つけることは簡単ではありません。また、エンジニアを雇用すると、多額の固定費が発生することも事実です。
一方、ラボ型開発であれば海外のエンジニアチームを期間限定で確保できるため、社内にエンジニア部門を作った場合と同じ効果が期待できます。
また、エンジニア業務がなくなったら契約を解除できるため、固定費にもなりません。費用をかけずに疑似的な社内開発部門を持てるため、費用を抑えたい企業がラボ型開発を利用するケースが増えています。
2-2. ウォーターフォール型からアジャイル型へ開発手法が移行
システム開発の手法がウォーターフォール型からアジャイル型に移行していることも、ラボ型開発が注目されている要因です。
ウォーターフォール型とは、開発初期に要件定義を明確にし、設計からコーディング、テスト、リリースまでを順番に進めていく方法です。ウォーターフォール型はゴールが明確になっているため外注しやすいメリットがありますが、柔軟な対応が取れないという問題点もあります。
一方、アジャイル型とは、システム全体の方向性を定めたら優先度順に開発を始め、完成した機能からリリースしていく方法です。各機能の設計、コーディング、テスト、リリースのサイクルを細かく実行し、それぞれを集合させてプロジェクトを完成させることを目指します。
これまでオフショア開発ではウォーターフォール型が一般的でした。しかし、アジャイル型の開発が求められる場面も年々増加しています。ラボ型開発であればエンジニアチームの時間を確保する契約形態であるため、オフショア開発でもアジャイル型に対応することが可能です。
3. 準委任契約・請負契約の違い
オフショア開発の契約を結ぶ際、オフショア先の企業から2種類の契約形態を紹介されることが多いです。
・準委任契約
・請負契約
契約を結ぶ前に、それぞれの違いを理解しておきましょう。
3-1. 準委任契約
準委任契約は、契約期間に仕事を請け負ってもらう契約形態です。つまり、準委任契約≒ラボ契約とも言えます。契約した期間内に開発業務や保守業務を行ってもらうための契約なので、納品物がなくても問題ありません。
準委任契約は、明確な成果物を定められない場合にオススメの契約形態です。アジャイル開発では、準委任契約を結ぶことになります。
3-2. 請負契約
請負契約は、成果物を納品してもらう契約形態です。オフショア開発の場合はシステムなどの開発が完了し、納品した時点(検収された時点)で契約が終わります。請負契約はプロジェクト単位の契約とも言えるでしょう。日本国内でシステム開発を行う場合も、ほとんどのケースでは請負契約を結びます。
ウォーターフォール型の開発では、請負契約を結ぶことが多いです。
4. ラボ型開発のメリット(準委任契約)
期間を定めて契約するラボ型開発のメリットとしては、次の5つが挙げられます。
・コストを抑えやすい
・優秀なエンジニアの確保が中長期間できる
・仕様変更・修正に対し柔軟な対応が可能
・開発のノウハウが蓄積可能
・機密性の高い案件の発注がしやすい
それぞれの詳細は次のとおりです。
4-1. コストを抑えやすい
ラボ型開発は請負契約と比べると、コストを抑えやすいことがメリットです。
請負契約は成果物を納品することが目的なので、最初にシステムの要件定義を行います。そのため、開発中に要件から外れる仕様を加える場合、別途見積もりとなるケースが多いです。
一方、ラボ型開発はエンジニアの時間を確保する契約形態なので、仕様変更や修正などが発生しても費用内で対応してもらえます。コストを抑えやすいことと同時に、コストの見通しを立てやすいこともメリットです。
4-2. 優秀なエンジニアの確保が中長期間できる
優秀なエンジニアを中長期的に確保できることも、オフショア開発のメリットです。
請負契約では先述したとおり成果物の納品が目的ですから、関わるエンジニアを指定できない場合が多いです。また、担当するエンジニアは他企業の案件にも対応しなければならないため、必ずしも自社の案件を優先してくれるとは限りません。
一方、ラボ型開発で契約した場合、期間中は担当エンジニアを自社専用のリソースとして使えます。優秀なエンジニアを自社の開発部門のように確保することで、コミュニケーションを取りやすいこともメリットです。
4-3. 仕様変更・修正に対し柔軟な対応が可能
ラボ型開発は仕様変更・修正に対し柔軟な対応ができることもポイントです。
請負契約(ウォーターフォール型)では要件定義から外れる仕様は、別途見積もりすらもらえずに拒否されるケースもあります。仕様変更によって最終的な納期が遅れると、それだけ契約全体に影響を及ぼすためです。
一方、ラボ型開発の場合、契約しているエンジニアチームは契約期間内であれば委託者の指示に柔軟に従うことが求められます。そのため、急な仕様変更や修正に対しても、通常業務として対応してもらえることが特徴です。
4-4. 開発のノウハウが蓄積可能
ラボ型開発では、専属チームとの間に開発ノウハウを蓄積することも可能です。ラボ型開発は半年〜1年にわたった長期契約で、同じメンバーが常に関わることから、徐々に仕事に慣れていくことが期待できます。
プロジェクト単位でメンバーがどんどん入れ替わる請負契約と比べると、委託元・委託先双方がノウハウを共有しやすいことが特徴です。
4-5. 機密性の高い案件の発注がしやすい
ラボ型開発では、気密性の高い案件も発注しやすいです。専属チームのメンバーが入れ替わることはほとんどないため、情報漏洩リスクは最小限に抑えられます。また、長期にわたった契約でお互いに信頼関係を構築しやすいことも特徴です。
ただし、オフショア委託先企業のセキュリティ対策は必ず確認しましょう。
5. ラボ型開発のデメリット
▼ ラボ型開発には多くのメリットがある一方で、次のようなデメリットも存在します。
・継続的な発注の必要がある
・チームの構築までに時間を要する
・開発チームの維持費がかかる
ラボ型開発の契約を結ぶ際は、それぞれのデメリットも理解しておきましょう。
5-1. 継続的な発注の必要がある
ラボ型開発はエンジニアの時間を確保する契約形態なので、継続的に依頼する業務がないとコストパフォーマンスが低くなります。保守業務や改修業務など、単純な作業でも継続的に発注するようにしましょう。
5-2. チームの構築までに時間を要する
ラボ型開発では、チームの構築までに時間を要することもデメリットです。請負契約では要件定義さえ決まってしまえば、あとは委託先チームに任せても自走してもらえます。
一方、ラボ型開発では委託元企業と委託先エンジニアがチームとして業務にあたることから、適切にマネジメントしてあげなければなりません。
5-3. 開発チームの維持費がかかる
ラボ型開発のチームを確保している間は、毎月の維持費がかかることもデメリットです。請負契約では、契約時に初期費用、納品時に残金を支払うため、維持費はかかりません。(契約によっては中間金が発生する場合もあります)
一方、ラボ型開発では毎月の費用が発生するため、正社員を雇用するほどではないにしろ固定費が発生することになります。
6. ラボ型開発に向いている案件は?
▼ ラボ型開発に向いている案件としては、次の3パターンが挙げられます。
・アジャイル開発を検討している場合
・既存システムの運用と保守任せたい案件
・仕様の変更や修正の可能性がある案件
それぞれの詳細を解説すると同時に、反対に請負契約が向いている案件についても紹介します。
6-1. アジャイル開発を検討している場合
この記事でも何回か言及しているとおり、アジャイル開発を検討している場合はラボ型開発での契約をオススメします。
アジャイル開発とは先述したとおり、方向性を定めたら優先度の高い機能から開発をはじめ、開発した各機能を集合させてプロジェクトを完成させる手法です。
アジャイル開発は仕様変更や修正を前提とした開発手法なので、請負契約だとコストが増える可能性があります。そのため、エンジニアの時間を確保するラボ型開発が最適です。
6-2. 既存システムの運用と保守任せたい案件
既存システムの運用と保守任せたい案件も、ラボ型開発が向いています。
システムの運用と保守には明確な成果物を設定しづらいため、請負契約には向いていません。そのため、一定時間の作業が発生する前提で、ラボ型開発での契約がトラブルにならずオススメです。
6-3. 仕様の変更や修正の可能性がある案件
仕様の変更や修正の可能性がある案件も、ラボ型開発で契約したほうが良いでしょう。
請負契約の場合、仕様変更や修正が発生すると別途見積もりが発生し、予算オーバーになる可能性が高いです。また、請負契約では仕様から外れることを嫌うエンジニアも多いため、開発チームとトラブルになることもあります。開発前に要件定義できない案件は、ラボ型開発でアジャイル方式で進めることがオススメです。
6-4. 反対に請負契約が向いている案件とは?
開発前に要件定義を明確にするウォーターフォール開発の場合は、プロジェクトの完成まで最短距離で進める請負契約が良いでしょう。
とくに、リリース時に全ての機能が完成している必要がある大型案件などは、成果物の定義を明確に定めた請負契約を結ぶことをオススメします。
また、システムの保守改修作業であっても、定期的な作業発生がない場合はラボ型開発で契約したほうがコストを抑えられます。作業が発生する度に請負契約を結べば、必要最低限のコストしかかかりません。
7. ラボ型開発を依頼する場合の注意点
▼ ラボ型開発を依頼する場合、次の3点に注意しましょう。
・発注側のマネジメント能力が必要
・仕事量の確保をする
・仕様の明確な提示をする
それぞれの詳細は次のとおりです。
7-1. 発注側のマネジメント能力が必要
ラボ型開発は、自社専属のエンジニアチームを確保する契約形態です。契約期間中は随時業務指示を出すことになるため、発注側のマネジメント能力が必要になることは覚えておきましょう。
単にシステム開発企業へ業務を委託するのではなく、自社にエンジニアチームが加わるという意識を持つことが重要です。アサインされるエンジニアの性格やコミュニケーション能力、スキルレベルにも気を遣うと、ラボ型開発のメリットを最大限活かせます。
7-2. 仕事量の確保をする
ラボ型開発はエンジニアの時間を確保する契約なので、ある程度の仕事量を確保しないとコストパフォーマンスが悪くなってしまいます。
ラボ型開発を契約する前に、現状でどのくらい定期的な業務が発生しているか把握しておきましょう。
7-3. 仕様の明確な提示をする
ラボ型開発では契約当初の要件定義は不要ですが、契約期間中の指示出しは明確にする必要があります。
ラボ型開発だからといって曖昧な指示を出すと、アジャイル開発やシステム保守の場合でも思ったような成果が得られません。
依頼するひとつひとつの業務には、それぞれ明確な仕様を提示しましょう。
8. ラボ型のオフショア開発が向いている国
▼ ラボ型のオフショア開発が向いている国の条件としては、次の3点を満たしている国がオススメです。
・オフショア開発の実績が豊富にある
・インフラ環境や政情が安定している
・エンジニアの気質が日本企業とマッチしている
まず、オフショア開発の実績が豊富な国を選びましょう。実績が多ければ多いほど技術も信頼できますし、委託先企業がオフショア開発に慣れていることも期待できます。
また、オフショア先のインフラ環境や政情が安定していることも重要です。ラボ型開発では長期間の契約になりますが、委託先の国が安定していないと停電やデモなどでエンジニアチームの稼働がストップしてしまうことがあるためです。
さらに、エンジニアの気質が日本企業とマッチしているかもポイントと言えます。オフショア開発では長期にわたってチームを組むことになりますが、オフショア先の国民性によってはお互いに気質が合わず、ストレスを抱えてしまうこともあるでしょう。
勤勉な国民性かつ親日国であるオフショア先を選べば、マネジメントが容易になります。
これら全ての条件を満たす国の1つがベトナムです。ベトナムは日本からのオフショア開発実績が豊富にあり、ラボ型開発に対応している企業も少なくありません。(「オルグローラボ」もベトナムでのラボ型開発に対応しています)
また、ベトナムはインフラや政情が安定しており、オフショア先企業の労働環境も優れています。さらに、ベトナムは親日国で、勤勉な国民性も有名です。
ラボ型開発に興味のある方は、ぜひベトナムでのオフショア開発を検討してみてください。
9. ラボ型開発をする場合の企業を選びのポイント
▼ ラボ型開発をする場合、委託先企業は次のポイントを押さえて検討すると良いでしょう。
・技術レベルをチェックする
・コミュニケーション力をチェックする
・過去実績・得意分野を見極める
・人員の定着率をチェックする
それぞれのポイントの詳細は次のとおりです。
9-1. 技術レベルをチェックする
ラボ型開発を委託する企業の技術レベルは必ず確認しましょう。対応可能なプログラミング言語や開発環境、セキュリティ対策の水準など、自社の求めるレベルの企業が存在する国で探すこともポイントです。
9-2. コミュニケーション力をチェックする
コミュニケーション能力も、重要な企業選定ポイントです。ラボ型開発は長期の契約になるため、お互いにコミュニケーションを取る機会が頻繁にあります。
報告の丁寧さやスピード感、言語レベルなど、検討段階で確認できる範囲でチェックしましょう。
9-3. 過去実績・得意分野を見極める
過去実績・得意分野を見極めることもポイントです。相手のアピールポイントだけではなく、本当の実力を見極めるようにしましょう。開発実績は開示可能な範囲で教えてもらえると、相手先企業の技術レベルを推し量りやすいです。
また、オフショア開発企業にはそれぞれ得意分野があります。請負契約(ウォーターフォール型)が得意なのか、ラボ型開発(アジャイル型)が得意なのか、直接聞いてしまっても良いでしょう。
さらに、開発ジャンルとしてもWebサービス系が得意なのかモバイルサービス系が得意なのかなど、それぞれの企業の強みは異なります。開発実績の数から、得意分野を見極めましょう。
9-4. 人員の定着率をチェックする
オフショア先企業の人員定着率もチェックすることをオススメします。定着率が優れている企業は、エンジニアを大切にする企業です。そのような企業のエンジニアは優れており、自発的な技術向上も期待できます。
一方、定着率が悪い企業は、エンジニアのモチベーションも低く、技術に不安があります。また、ラボ型開発にも関わらずエンジニアの入れ替わりが激しいと、コミュニケーションに支障をきたす場合も少なくありません。
ラボ型開発を依頼する際は、エンジニアの定着率も非常に重要なポイントです。
10. まとめ
ラボ型開発は、システムの保守・改修作業はもちろん、アジャイル型のシステム開発にもオススメな契約形態です。契約前に仕様を確定させる必要がないため、要件が決まり切っていない案件でも活用できます。
オフショア開発には多くのメリットがありますが、全てのメリットを最大限に活かすためには適切な国のオフショア企業と契約することをオススメします。とくにベトナムのようなオフショア開発の実績が豊富で、国内情勢も安定している日本企業とマッチしやすい国民性の国がオススメです。
また、契約期間中に最大限の成果を発揮できるよう、適切なエンジニアチームをアサインすることも重要です。技術や実績が優れていることはもちろんですが、コミュニケーション能力が高くエンジニアの定着率が高いチームと契約しましょう。
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