オフショア開発の費用とは?人件費相場を地域別に解説

オフショア開発の費用とは?人件費相場を地域別に解説

オフショア開発において気になるポイントは費用です。海外の人件費といっても国によって幅があるため、その金額相場を把握することが大切です。そして人件費が安価であっても、開発技術や実績なども考慮する必要があります。この記事では地域別の費用相場やその国の特徴などを解説します。人件費以外にも費用を抑えるコツをあわせてご紹介します。

 

【目次】
1. オフショア開発費用の基本
1-1. オフショア開発費用の内訳とは
1-2. オフショア開発の費用における現状
1-3. エンジニア単価はどのように決まるのか
2. オフショア開発の地域別の費用相場
2-1. ベトナム
2-2. インド
2-3. 中国
2-4. タイ
2-5. インドネシア
2-6. フィリピン
2-7. ミャンマー
3. 国内ニアショア開発とオフショア開発の費用比較
3-1. 国内ニアショア開発の費用相場
3-2. 国内ニアショア開発のメリット
4. オフショア開発におけるブリッジSE・PM(プロジェクトマネージャー)の費用相場
4-1. ブリッジSE
4-2. PM(プロジェクトマネージャー)
5. オフショア開発の費用を抑えるには?
5-1. 仕様を明確にし工数調整する
5-2. 開発期間の短縮をする
5-3. オフショア企業の委託先の見極めが大切
6. まとめ

1. オフショア開発費用の基本

オフショア開発のメリットは、海外へのアウトソースにより人件費のコストを抑えられることです。人件費といっても役割やスキルなどが異なればその単価は変動します。

 

オフショア開発における費用の内訳やその現状、どのようにして単価が決まるかについて解説します。

 

 

1-1. オフショア開発費用の内訳とは

オフショア開発の費用の大半は、エンジニアの人件費です。開発プロジェクトの規模でエンジニアの必要人数や期間が変動するため、見積り額を確定するうえで難しい項目です。

 

次に人件費に関してはエンジニアだけでなく、一般的なプロジェクトであればブリッジSE(システムエンジニア)とPM(プロジェクトマネージャー)を専任するケースがほとんどです。

 

ブリッジSEやPMについては後述しますが、エンジニアよりも単価が上がるため、別項目として算出します。

 

現地にオフィスを設置することになれば、その賃料や諸経費等が必要になります。

 

 

1-2. オフショア開発の費用における現状

オフショア開発のコストを占める人件費の相場感は、インドや中国が高騰しており、同じ東南アジアの中でもインドネシアやフィリピンが低くなっています。

 

かつての日本企業の多くは中国に進出しオフショア開発先としても主流でしたが、中国経済の発展とともに、年々人件費が上がっています。

 

そのためオフショア開発のメリットが見出せず、オフショア開発先が東南アジアに流れていた経緯があります。東南アジアのエンジニアの人件費の相場は中国に比べると安価なのです。

 

近年で、オフショア開発先としてもっとも選ばれているのはベトナムです。ベトナムに次いでフィリピンやインドネシアなど、東南アジア諸国がオフショア先として多い傾向にあります。

 

 

1-3. エンジニア単価はどのように決まるのか

エンジニア単価とは、1人分の1ヶ月分の予算を指し、単価は技術力と経験値で決まります。エンジニアは、上級者レベルと初級者レベルで単価にして2倍ほどの差があります。

 

上級者はシステムに関する知見もあり高い技術力を持っています。不具合やバグの発生率も低く、完成度の高いものをつくれるでしょう。

 

そのため、上級者レベルは安心して任せられる人材であり、単価が高くても短時間での完納も望めます。

 

一方、初級レベルは、能力的には有望でもエンジニアとしての経験値が浅い人から、エンジニアの適正が低い人まで含まれるため、当たり外れの可能性が大いにあります。

 

簡単な作業だからといって任せても、修正などに時間がかかり、かえってコストがかかるケースも考えられます。

 

このように上級者レベルと初級レベルでは大きく技術力と経験値で差があるため、単価額にも幅があります。

 

2. オフショア開発の地域別の費用相場

▼ オフショア開発先の地域別、エンジニアの費用相場を見ていきます。各地域の一覧はこちらです。

 

エンジニア/人月単価の相場 ブリッジSEの人月単価の相場(万円) PM(プロジェクトマネジャー)の人月単価の相場(万円)
ベトナム 20万~35万円 51.34 57.94
インド 30万~60万円 67.97 83.90
中国 35万~55万円 84.78 85.77
タイ 27万~37万円
インドネシア 24万~32万円
フィリピン 25万~35万円 71.07 65.83
ミャンマー 10万~20万円 48.59 62.81

 

 

2-1. ベトナム

ベトナムの人月単価の相場は20〜35万円です。

 

ベトナムは現在、日本のオフショア開発先として最も委託が集中している国です。オフショア開発先に選定される「シェアNo.1」を誇っています。ベトナムは、IT人材の教育に力を入れており、オフショア開発の長い歴史と実績があります。

 

また、日本で人気のある理由の一つとして、親日国であり勤勉さも持ち合わせている国民性があげられます。東南アジア諸国と比較すると人件費が非常に安価というわけでもないですが、需要が高いため今後も上昇する可能性があります。

 

 

2-2. インド

インドの人月単価の相場は30〜60万円です。

 

インドは優秀なエンジニアが揃っており、オフショア開発先として欧米諸国からも需要が高い国です。高度な案件にも対応できるほどの技術力を持っているため、決して人件費が安いとは言えず、日本人よりも人件費が高い場合があります。

 

そのため人件費カットの恩恵は受けられませんが、スキルの高さを求めているのであれば十分にその価値はあるでしょう。

 

 

2-3. 中国

中国の人月単価の相場は35〜55万円です。

 

オフショア開発先はその昔、人件費の安さから中国が占めていましたが、現在ではアジア諸国の中でもインドと肩を並べて価格が高騰しています。そのため新たにオフショア先に選定する企業は減少しているのが現状です。

 

しかし古くからIT分野においてインフラ整備が整っていることや、人口の多さからITスキルをもった人材や日本語能力のある人材も豊富であることが魅力です。

 

 

2-4. タイ

タイの人月単価の相場は27〜37万円です。

 

タイは親日国で有名な国で、微笑みの国と言われるほど優しい性格をもった国民性です。

 

東南アジア諸国の中でも標準的な人件費ですが、物価の安さからオフィスの開設や諸経費などを安く抑えられることがメリットです。

 

 

2-5. インドネシア

インドネシアの人月単価の相場は24〜32万円です。

 

インドネシアはIT教育に力を入れ始めてからまだ数年と日が浅く、オフショア開発先としても経験が少ない国です。しかし人口増加と経済成長が望める国でもあり、今後の成長に期待できます。現状の人件費は安く抑えられるメリットがあります。

 

 

2-6. フィリピン

フィリピンの人月単価の相場は25〜35万円です。

 

フィリピンはネイティブレベルの英語力をもっており、開発スキルの水準も高いです。そのため欧米をオフショア開発先としている企業が多いのが特徴です。

 

日本語能力などを求めるのであれば、その分の単価がアップする懸念がありますが、必要なければ低水準のコストに抑えられます。

 

 

2-7. ミャンマー

ミャンマーの人月単価の相場は10〜20万円です。

 

ミャンマーは日本語教育に力を入れているため、コミュニケーションを取りやすく日本語能力の高いエンジニアも多いです。

 

勤勉で真面目な性格も日本にマッチしやすく、チームワークに向いています。IT人材も潤沢に育っており、ポストベトナムと言えるでしょう。

 

3. 国内ニアショア開発とオフショア開発の費用比較

コストを抑えるためにオフショア開発を検討されている場合は、ニアショア開発も併せて検討してみるのがよいでしょう。ニアショア開発とは、システム開発を国内の地方の企業や事業所に委託することです。

 

東京などの主要都市は同じ国内でも人件費が高いため、人件費が安価な地方に依頼することでコスト削減を目指せます。ニアショアの費用相場やメリットについて解説します。

 

 

3-1. 国内ニアショア開発の費用相場

国内ニアショア開発の費用目安は、東京のエンジニアであれば人月単価の相場は80万円ほどです。エンジニアのスキルレベルや役割によって変動するためあくまで目安として考えましょう。

 

以下は東京を「1」とした地方の単価比較係数で、各都道府県から抜粋したものです。一番コストが抑えられる地方では、東京都と比較すると35%の人件費の差があり、全国平均であれば20%ほどの人件費の差があります。

 

都道府県 東京比較単価係数
東京都 1.00
神奈川県 1.00
愛知県 0.94
福岡県 0.89
大阪府 0.88
長野県 0.81
北海道 0.78
愛媛県 0.75
沖縄県 0.71
青森県 0.65

出典:ニアショア機構(東京都と各都道府県の単価比較)

 

 

3-2. 国内ニアショア開発のメリット

ニアショア開発のメリットは、都心部に比べて人件費が抑えられ、事務所を置く場合に家賃などの費用も大幅にカットできることです。

 

特にオフショア開発と比較するならば、大きな壁となっている言葉や文化の違い、それに時差もありません。立ちはだかる壁がない分、ストレスがないことがメリットです。

 

またニアショア開発は、災害のリスクヘッジにもつながります。これはオフショア開発も含めて言えることですが、大きな災害があった場合は、業務がストップする可能性があります。

 

1拠点しか事務所がない場合はダメージが大きいですが、地方(あるいは海外)に業務の一部を委託することにより業務が完全に停止することを防止できるメリットもあります。

 

しかし、日本は慢性的なエンジニア不足に陥っているため、地方も同様に必ずエンジニアが確保できるわけではないというのがニアショアのデメリットです。

 

4. オフショア開発におけるブリッジSE・PM(プロジェクトマネージャー)の費用相場

オフショア開発におけるキーパーソンとなるブリッジSE(システムエンジニア)や、PM(プロジェクトマネージャー)の人件費の費用相場も見ていきましょう。

 

 

4-1. ブリッジSE

ブリッジSEは、一般のエンジニアよりも20〜40%程度、単価額がアップします。ブリッジSEとは、企業サイドと現地エンジニアのパイプのような役割を持っているエンジニアです。

 

 

ブリッジSEの人月単価の相場(万円) エンジニアの人月単価の相場(万円)
ベトナム 51.34 20万~35万円
インド 67.97 30万~60万円
中国 84.78 35万~55万円
タイ 27万~37万円
インドネシア 24万~32万円
フィリピン 71.07 25万~35万円
ミャンマー 48.59 10万~20万円

出典:オフショア開発白書(2022年版)

 

 

4-2. PM(プロジェクトマネージャー)

PM(プロジェクトマネージャー)は、エンジニアより50〜70%程度、単価額がアップします。PMとは、プロジェクトにおける責任者でありさまざまな管理などを担い、ブリッジSEが兼任することもあります。

 

PM(プロジェクトマネジャー)の人月単価の相場(万円) エンジニアの人月単価の相場(万円)
ベトナム 57.94 20万~35万円
インド 83.90 30万~60万円
中国 85.77 35万~55万円
タイ 27万~37万円
インドネシア 24万~32万円
フィリピン 65.83 25万~35万円
ミャンマー 62.81 10万~20万円

出典:オフショア開発白書(2022年版)

 

5. オフショア開発の費用を抑えるには?

オフショア開発の費用をさらに抑えるポイントをご紹介します。人件費のコストカットがメリットですが、工夫次第ではより効率的に費用を削減できる可能性があります。

 

 

5-1. 仕様を明確にし工数調整する

オフショア開発の費用を抑えるポイントは、工数を削減することです。業務範囲をきっちりと定め仕様書を明確にします。

 

開発に関わる必要最低限の作業に限定することで、すべての業務を一任するよりも工数を抑えるとともに、トラブルやリスクも少なくできます。

 

 

5-2. 開発期間の短縮をする

オフショア開発の費用を抑えるには、開発の期間を短縮することもポイントです。期間が長ければそれだけ人件費がかさみます。単価は高くても確実に期間内で仕上げられる優秀なエンジニアに依頼する、同様の開発ノウハウがある会社に依頼することで、開発期間の短縮につなげられます。

 

 

5-3. オフショア企業の委託先の見極めが大切

オフショア開発先の企業を日系企業にすることも、結果的に費用を安く抑えるポイントに繋がります。オフショア開発は、コミュニケーションが難点でもあり、想定以上のコストがかかることや、成果物のクオリティが低いといった問題もあげられます。

 

日系企業に依頼することで、調整などがスムーズになり工数削減や開発期間の短縮にもつなげられます。

 

6. まとめ

オフショア開発にはメリットである人件費の削減を図るため、費用相場の把握が大切です。また地域によって費用の相場に幅があり、特徴も異なります。

 

単に安価であることを理由にオフショア先に選定するのではなく、オフショア開発の実績があり信頼できるか、経験値や技術力のあるエンジニアが豊富にいるかなどで判断できるとよいでしょう。

 

オルグローラボでは、ベトナムでのオフショア開発事業を行っております。ベトナムは上記でもご紹介したとおり、オフショア開発先の今やシェアNo.1を誇り、多くの知見も持ち合わせています。

 

そのため需要が高まり人件費は上がってきていますが、決してその水準は高いわけではありません。ベトナムでのオフショア開発は、コストパフォーマンスがよいと言えるでしょう。