1. オフショア開発とは
オフショア開発とは、ウェブサイトやウェブシステム、アプリサービスなどの開発に関わる業務を海外を拠点にする企業や海外の人材に委託して開発を進めるための手段です。
日本でもDXの推進を国が主導し推し進めてはいますが、IT人材の供給が追いついておらず、エンジニアコストの高騰も散見されています。そこで、コストダウンが図れ、親日国のため仕事がしやすく、IT技術の進展が著しいといった観点から、アジアの発展途上国の企業や人材に開発を委託するケースが増えています。
オフショア開発が活発になってきた地域では、国が主体となってIT人材の教育に力を入れており、技術を身につけたエンジニアは国内だけでなく日本など海外からの仕事も受注しています。
より収入の高い仕事を受注するために、委託元の国の言葉を学ぶ意欲的なエンジニアも多くいます。日本のオフショア開発の委託先としては中国がメインとなっていましたが、東南アジアなどの途上国からも優秀な人材が輩出されていることから、新たなオフショア開発委託先が模索されています。
2. インドネシアオフショア開発の基本情報
国民性 | 日本語能力 | 経済状況 | エンジニアの技術力 | エンジニアの人月単価 | エンジニアの平均年収 |
---|---|---|---|---|---|
素直かつ寛容 | 話者は少ない | プラス成長 | 発展途上 | 平均24万円 | 120万円前後 |
2-1. 国民性
インドネシアの国民性は、素直な性格かつ他者への寛容的な姿勢が特徴的です。インドネシアは1万4,000以上の島からなる島国で、国民の9割近くをイスラム教徒が占めますが、ヒンドゥー教やキリスト教、仏教や儒教など5つの宗教が国教として定められています。
宗教の教えに従う姿勢は仕事の面でも同様で、上司の指示に従い仕事にひたむきに向かえる集中力があります。
また、国教を一つに限定する国が多い中、複数の宗教を国教に定めており、多様性を受け入れる考え方が自然と身についています。
温厚で誰に対しても寛容的な態度がインドネシア人の特徴です。真面目で真摯に仕事に取り組む姿勢など、日本人とも共通点の多い国民性を持っています。
2-2. 日本語能力
インドネシアの日本語能力について、ビジネスレベルでの日本語話者は現状それほど多くいません。貴重な人材であるため、実際に仕事をする際は日本人にブリッジSEとして間を取り持ってもらう方がスムーズに進みます。
とはいえ、日本語を学ぶ留学生の数は多く、独立行政法人日本学生支援機構の調査によると、令和3年度の国別留学生数上位5カ国にインドネシアはランクインしています。
日本語の学習が学生で止まってしまう理由としては、日本語をビジネスで使う機会がそれほど多くない点が挙げられます。日系企業のインドネシアへの進出が増え、日本語を使えることがスキルとして求められ給与に反映されるようになれば、状況は変わっていくことでしょう。
インドネシアは親日国としても有名ですから、今後も日本語を話す人は増えていくことが予想されます。
2-3. 経済状況
インドネシアの2021年度GDPは3.7%のプラスを記録しています。全世界のGDP成長率は5.8%であるため、平均以下の成長率といえます。ただし、2022年度の第二四半期のGDP成長率は5.7%と発表されており、今後は成長の速度が加速していくことが予想されます。
インドネシアの主な輸出品目は石炭や天然ガス、スズやニッケルなどで、世界的な価格の高騰と輸出先の各国で需要が増加していることが成長を後押ししています。
2-4. エンジニアの技術力
インドネシアでは2018年よりICT(情報通信技術)教育の向上へ向けて、取り組みを本格化させています。ICT教育とは、インターネットについての知識を身につけ、タブレットなどを用いてデジタルコンテンツを使用した学習を強化するための教育です。
2018年当時はインドネシアの学生の15人に1人しかコンピュータを使用していませんでしたが、2021年になると4人に1人にまで数値が上昇しています。
インターネット教育の支援を受けている学校も、1,500校弱から4,000校にまで増えており、発展途上ではありますが、今後エンジニアの技術力も高まりを見せていくと予想されます。
2-5. エンジニアの人月単価
インドネシアにおけるエンジニアの人月単価は平均24万円で推移しています。中国では40万円〜85万円、インドなら35万円〜85万円、フィリピンでも35万円〜70万円、ミャンマーでは25万円〜60万円がエンジニアの平均人月単価とされているため、インドネシアの人材コストは他国と比べて安い水準であることがわかります。
インドネシア全体の平均月給は2万6,000円です。ボーナスを含めると年間の収入は33万円前後であるため、年収が日本の平均月収と変わらない金額になります。物価が安く、日本の平均給与の10分の1の収入でも生活できるのがインドネシアです。
2-6. エンジニアの平均年収
インドネシアでのエンジニアの平均年収は120万円です。月給にすると8万円〜12万円が平均値と言えます。インドネシア全体の月給が2万6,000円ですので、エンジニアは平均の3倍〜4倍の収入を得られる高給取りの職業となります。
インドネシアのエンジニアは海外志向が強く英語が堪能な人材が多くいるため、国をまたぐようなプロジェクトでもスムーズなコミュニケーションが可能です。中国やインドなどに比べると技術的な部分で発展途上な状況であることを感じることもありますが、伸びしろが大きく今後の成長が期待されています。
3. インドネシアオフショア開発が注目される理由とは
3-1. GDP成長率のプラス
インドネシアでのオフショア開発が注目されている最大の理由は「成長」にあります。GDP成長率はプラスで推移しており、2022年度の第二四半期のGDP成長率は世界平均とほぼ同一の数値を記録しています。
また、インドネシアの人口は約2億8,000万人で世界第4位に位置しており、第2の中国やインドを目指せるポテンシャルを秘めています。成長の伸びしろが多いに期待されている今の段階こそ、IT人材の確保がしやすいタイミングでもあります。
3-2. IT人材の育成強化
インドネシアは人口が多いため、さまざまなITサービスが日々増えており、インドネシア国内でもIT人材の育成が急務となっています。IT人材の育成強化は情報通信省が担当しており、奨学金プログラムや最先端の技術を学べる研究施設を建設するなど学習環境の構築も随時進めています。
IT人材への需要が豊富にあり、エンジニアやプログラマーは国内でもなりたい職業No.1となっていますので、優秀な人材がこれから増えていくことが予想されます。
4. インドネシアオフショア開発のメリット
4-1. エンジニア単価が安い
インドネシアでオフショア開発をおこなう大きなメリットは、エンジニア単価が安いことです。現在のインドネシアにおけるエンジニアの人月単価は平均24万円で、オフショア開発が増えている東南アジアの中でも最安水準となっています。
発展途上で成長真っ只中の状況であるからこそ、コストを抑えた開発委託先として大きく注目を集めています。もちろん単純に安さだけでなく、英語話者が多くコミュニケーションの取りやすさも魅力です。
4-2. IT人材が豊富
政府としてIT人材の育成を進めており、国内では人気No.1の職業であるため、IT人材が豊富なこともメリットと言えます。インドネシアのエンジニアは平均収入の3〜4倍稼ぐことができる職業であるため、競争力も激しく技術力の成長スピードも年々上がっています。
2030年には国内で900万人のIT人材の不足が予想されているため、今後も国を挙げての育成が進むことでしょう。
4-3. モバイル系の開発に強い
インドネシアのエンジニアは、モバイル系の開発に強みを持っています。インドネシアではパソコン普及率は20%に止まっていますが、インターネット普及率は60%を超えており、携帯電話の普及率は100%に到達しています。
モバイルには日本人口の倍のマーケットが存在しており、SNSの利用率も高く、モバイル系の開発が積極的におこなわれています。
4-4. 現地市場をマーケット視野に入れられる
オフショア開発は日本市場に向けて採用する手段ではありますが、海外で開発したものをそのまま海外でローンチすることも可能です。
インドネシアには人口2億8,000万という巨大なマーケットがあるため、インドネシアで開発をするなら現地マーケットも視野に入れて開発を進めることができます。発展途上であるため、良いサービスにはすぐに注目が集まります。
4-5. 国民性の良さ
インドネシアは様々な宗教が入り混じる国であるため、多様性を受け入れやすい温厚な国民性を持っていることが特徴です。お互いを尊重し合える土壌のもとで過ごしてきていますので、仕事面でもお互い敬意を持って接することができます。
信頼関係を上手に築くことができれば、協力的に仕事に取り組んでくれることでしょう。
5. インドネシアオフショア開発のデメリット
5-1. 開発実績が少ない
インドネシアでのオフショア開発では、開発コストを安く抑えられるメリットがある一方で、開発についての環境も技術も発展途上であるため、開発実績そのものが少ないことが懸念点になります。
特に大型の案件を依頼する場合、経験と技術のあるIT人材を探すのは困難になるはずです。開発実績が少ないため、開発オファーを受け入れてくれたとしても、人員確保に時間がかかってしまい結果として実績の多い中国やインドよりも高くついてしまう恐れもあります。
実力が未知数のまま業務を依頼するのはリスクになります。仕事の進め方も日本との違いがあるため、プロジェクト以前にスタッフの教育から始めなければならないケースもあります。
5-2. 英語の普及率の低さ
インドネシアの公用語は英語ではなく、日常的に英語を使う習慣もないため、英語のレベルは日本人とあまり変わりません。英語で仕事を進めようとする場合、細かいニュアンスまで共有するのが難しくなるケースも多々あります。
マレーシアやフィリピンでは英語圏の国が宗主国であった歴史があるため英語が普及していますが、インドネシアはオランダ領であったため英語に触れてきた歴史はありません。
もちろんエンジニアは国内で優秀な人材がなれる職業であるため、ある程度の英語力も身につけていますが、現地の訛りが強い傾向があります。
5-3. 日本語能力が劣る
他にも、インドネシアでの開発において、ビジネスレベルで日本語を話せる人材が多くいない点がデメリットになります。他国では日本語話者のブリッジSE人材もいますが、インドネシアで同じような人材を見つけるのは困難です。
例えば中国やタイでは日本語を話せることが仕事上で有利に働き給与にも反映されますが、インドネシアでは日本語をビジネスに活かして収入をあげようとする認識がまだ広まっていません。
日本へ留学して学ぶ学生数は多いですが、趣味や文化を理解するための手段の一つにすぎず、日本語能力をそのまま仕事に活かすには至っていないのが現状です。
6. インドネシアでオフショア開発する際の注意点
6-1. 労働者を保護する法令がある
インドネシアの労働法は、日本以上に労働者を守るための設計がなされているため、労務管理は慎重におこなう必要があります。労働者も権利を主張しやすい環境にあるため、法律に抵触しているのに改善されないままの状態で放置すると、ストライキや大量退職などのリスクを負うことになるので注意してください。
また、企業側から従業員を解雇する場合、解雇に正当な理由が必要なことはもちろんのこと、解雇手続きをするために裁判所から許可を取得しなければならないケースもあります。日本人を現地従業員として派遣する場合、労働ビザの手続きも他国より厳正におこなわれるため苦労します。
6-2. 宗教への配慮の必要性
インドネシアは国民の9割がイスラム教徒であるため、宗教へ配慮した労働環境の構築を心がける必要があります。イスラム教では1日5回の礼拝がおこなわれ、そのうち2回は就業時間と重なります。
国外で働くインドネシア人の場合、礼拝場所がなければできるタイミングで礼拝するなど、宗教に理解が得られない場合でも柔軟に対応している方もいます。
ですが、一緒に仕事をするのなら、できるだけ配慮があった方がお互い歩み寄りがしやすくなることは間違いありません。礼拝のための休憩時間を設けたり、工場であれば礼拝所を設ける企業は多くあります。
また、イスラム教徒の方は豚肉を食べないため、食事をする際は豚肉を使用しない「ハラール」料理を選ぶなど、食への理解も欠かせません。
なお、イスラム教には断食月があり、期間中は食事が取れずに集中力を欠くこともあるため、それぞれの事情に合わせて業務も調整する必要が出てきます。
6-3. 経済成長が急激に進む可能性
インドネシアは世界第4位の人口を抱える国であるため、中国やインドのように経済が急成長する可能性を秘めています。一般的に経済成長していくに伴い人件費は騰がっていくため、インドネシアの経済動向は注視して追っていく必要があります。
もちろん、早くからインドネシアのオフショア開発に携わっていれば、国内のマーケットへの方向転換も視野に入れることも可能です。将来の成長を見込んで、単価の安い今のうちから接点を持っておくのも一つの戦略として有効と言えるでしょう。
7. インドネシアオフショア開発会社のおすすめ2選
7-1. timedoor
timedoorは2014年に日本人がバリ島ではじめたインターネット会社です。主な事業はウェブ制作やアプリ開発で、従業員150人を抱える企業です。累計400社の採用実績をもとに、提案力のあるビジネス展開を得意としています。
timedoorの強みは一気通貫でのITビジネスサポートにあります。Web制作ではクライアントが希望するサイトを言われるがままに作るのではなく、インターネットを利用して得られるメリットを最大化させるための工夫を提案し、クライアントのビジネスに貢献することまでをイメージした制作活動を行っています。
また、日本での開発を支援するだけでなく、海外市場を見越した開発も積極的におこなっています。
海外ではPCはなくてもスマホなら1人1台持っているという国は多いため、海外市場の開拓にはスマホアプリの開発が欠かせません。timedoorはアイデアを形にするためのサポートをおこなっています。
7-2. 株式会社アプキー
株式会社アプキーは日本とインドネシアに拠点を持つウェブ・アプリ開発会社です。オフショア開発というと言語の不安がありますが、名古屋市に拠点を置く日本法人が全て対応をしてくれるため、安心して開発に臨むことができます。
アプキーはブロックチェーン技術を駆使したweb3.0+分散型アプリの開発に力を入れています。会議アプリや店舗業務アプリ、ショッピングアプリや予約取得アプリなど、より便利な世の中を創造するためのお手伝いを行います。
8. まとめ
インドネシアのオフショア開発は、他国に比べて単価を安く抑えることができ、かつ将来の成長に向けた準備も進めることが可能です。ただし、厳しい労働法や宗教への配慮は欠かせないため、現地の商習慣もよく情報収集した上での検討が必要になります。
「オルグローラボ」は、親日国であるベトナムでのオフショア開発をサポートしています。国策としてIT教育に力を入れており、優秀なIT人材が豊富です。日本企業との業務実績も多く、日本のプロジェクトに理解があるため、業務をスムーズに進められるメリットがあります。低価格で高品質の制作依頼をご検討の場合、ぜひご相談ください。