オフショア開発のマネジメントを成功させるためポイントを解説

オフショア開発のマネジメントを成功させるためポイントを解説

マネジメントの提唱者とされる経営学者ピーター・ドラッカーは、マネジメントを「組織に成果を上げさせるための道具・機能・機関」と定義しており、マネージャーは「組織の成果に責任を持つ人物」と位置づけています。この記事では、オフショア開発におけるマネジメントの重要性およびマネージャーが組織の目標を達成するためのコツについて解説します。

 

【目次】
1. オフショア開発におけるマネジメントの重要性とは?
2. オフショア開発のマネージャーの仕事内容
3. オフショア開発のマネジメントを成功させるポイント
3-1. オフショア開発先国の文化や国民性を理解する
3-2. ルールを設けて守る
3-3. 現地スタッフへの論理的な説明をする
3-4. タスク管理ツールの利用をする
4. まとめ

 

1. オフショア開発におけるマネジメントの重要性とは?

オフショア開発は、情報システムやソフトウェアといった開発業務などを、日本国内よりも人件費が安い海外の会社に委託してコスト削減をはかる方法です。

 

日本の拠点と海外のオフショア先で、連携をとりながら開発プロジェクトを進めるため、日本国内でのシステム開発よりさらに高いマネジメント力がなければ組織が十分に機能しません。

 

ドラッカーによると「リーダー」の役割は、企業や組織が目指すべき方向性や具体的な目標を示すことであると定義しています。「従業員の自律や生産性向上」を促すことから「組織内の人員配置・意思決定」なども担うことになります。

 

一方「マネージャー」の役割として、「組織作りとミッション達成」「部下の統率・育成」「成果の評価測定」などを挙げています。マネージャーは、組織の成果向上のために責任を持ってマネジメントをしなければいけません。

 

リーダーは、メンバーが具体的な方向性や目標達成を目指すためリーダーシップを発揮しますが、マネージャーは、目標達成に向けて組織を導くためにマネジメントを行います。マネジメントには、視野の広さと全体を見渡せるような視座の高さが必要と言われます。

 

オフショア開発では、日本国内と同じようなITスキルや戦略マネジメント、良好な対人関係を構築するためのヒューマンスキルを求められます。さらに、開発プロジェクトを目標に沿って運営するため、相手国に応じたマネジメント力を発揮せねばなりません。オフショア開発におけるマネジメントは、国内以上に重要と言えるでしょう。

 

2. オフショア開発のマネージャーの仕事内容

オフショア開発におけるプロジェクトの責任者は、プロジェクトマネジメントを駆使することになります。国内外に限らずプロジェクトを総合的に任され、計画と実行の責任を担う役職をプロジェクトマネージャー(略称、PM)と呼びます。

 

PMは、費用の見積り・人員配置・進捗・タスク管理まで行い、組織全体を俯瞰で見るように把握してプロジェクトを成功に導きます。

 

またプロジェクトマネジメントを行う部門を、プロジェクトマネジメントオフィス(略称、PMO)と呼びます。PMは、プロジェクト全体を統括するため業務が多岐にわたります。

 

一人で細かいところまで管理しきれない場合は、PMOがサポートします。チーム体制を組んでPMOと連携するためには、PMの力量が必要です。

 

3. オフショア開発のマネジメントを成功させるポイント

オフショア開発は、海外へのアウトソースにより人件費のコストを抑えられることがメリットのひとつです。

 

主にエンジニアの人件費となりますが、一般的にプロジェクトマネージャーを専任するため、その人件費もかかります。PMの人件費はエンジニアより単価額が高く誰を専任とするか十分検討する必要があります。

 

また委託先の従業員から専任するのではなく、現地に日本人の社員を常駐させてPMを任命するケースもあります。委託先で専任した場合は、役割を説明して十分に理解してもらう必要があります。いずれにしろ、オフショア開発におけるマネジメントのコツを押さえておきましょう。

 

3-1. オフショア開発先国の文化や国民性を理解する

海外でシステム開発プロジェクトを円滑に進めるには、まず信頼関係を築くため相手国の文化や、価値観を把握することが重要です。その国では「なぜこのような行動をするのか」「どのような価値観に基づいてそうするのか」を理解することにより、業務について説明や、指導する際に配慮することが可能になります。

 

そうしたことからお互いに立場を尊重し合えば、マネジメントがしやすくなります。

 

3-2. ルールを設けて守る

信頼関係を築くことはもちろん重要ですが、それだけでは運営に行き詰まることがあります。日本人同士でさえ信頼関係を築いたつもりでも、「ずれ」が生じるものです。「信頼はかたちがない」と言います。

 

目に見えないからこそ人間社会を円滑にしてくれるのかもしれませんが、特に業務上でマネジメントの方法として信頼関係に頼るのは得策とは言えません。

 

オフショア開発では、明確なルールを設けることが重要です。日本国内ならば「暗黙の了解」や「あうんの呼吸」などという概念により分かり合えたことも、依頼先の国ではほとんど通用しないからです。

 

開発プロジェクトにおける報告・連絡・相談など、業務上の細かいルールを設け、マナーに関する注意事項などを共有すれば、お互いがそれを守ることで信頼関係につながる可能性もあります。

 

 

進捗の共有】

プロジェクトマネジメントを進めるために、進捗状況を管理することは重要です。ルールを設ける際に、進捗を共有する方法をルール化することは効果的です。ルールとして遵守させれば、その国の国民性や文化に左右されず進捗状況を共有できます。

 

オフショア開発においては、言葉や文化の違いから認識にずれが生じることもあります。しかし進捗を小まめに共有することで認識を一致させ、大きなトラブルに発展する前に気づけば、対策を打つことが可能です。

 

 

情報をオープンにする】

近年は企業におけるマネジメントの手法が、従来のトップダウンスタイルからボトムアップスタイルに変わりつつあります。ボトムアップによるチームマネジメント手法として注目されているのが、サーバントリーダーシップです。

 

マネジメントが変化した要因のひとつは、コロナ禍で緊急事態宣言が発令されてリモートワークを導入する企業が急増したことです。それまでは社内で顔を合わせながら仕事をしていたので、強いリーダーシップを発揮できましたが、オンラインでの対話を余儀なくされ、メンバーの自主性を重視するマネジメントに移行した経緯があります。

 

新時代のマネジメントでは、情報をオープンにすることが求められます。従来は役職者など限られたメンバーだけが情報を得て、プロジェクトを進めることが少なくありませんでした。

 

しかしそのやり方では、組織としてメンバーの認識にずれが生まれてしまいます。現在は、チームメンバー全員が情報共有する仕組みを構築することが優先課題となっています。

 

オフショア開発では、リモートで対話する機会があります。以前から情報をオープンにする必要性を訴えるPMは多く、ある意味新時代マネジメントの先駆けと言えるかもしれません。

 

 

コミュニケーションルールを決める】

マネージャーが目的を達成できなかった理由として、「コミュニケーション不足」を挙げることは少なくありません。プロジェクトマネジメントを成功させるには、チームのメンバーと密にコミュニケーションを取ることは不可欠です。

 

開発プロジェクトのルールを設けるときに、まずはコミュニケーションルールから決めるべきでしょう。

 

プロジェクトチームのメンバー全員にコミュニケーションスキルがあるとは限らないため、ルールを作って強制的にコミュニケーションを図るのが狙いです。

 

それにはコミュニケーションルールの計画を立てたら、メンバー全員に納得してもらい、みんなで守ることが必要です。

 

コミュニケーションルール計画は、共有すべき情報や伝達対象者を明確にして「誰が誰にいつ何を伝えるのか」をルール化します。例えば、PMがシステム開発チームのリーダーに、毎週1回行われる進捗報告定例会で報告資料を共有します。

 

開発チームメンバー全員は、毎日メールや進捗管理ツールを使って、チームリーダーとスケジュール、および報告資料を共有します。PMは、メンバーがルールを遵守しているかチェックして、コミュニケーションを推進させなければいけません。

 

日本国内では、企業がコミュニケーションルールを決めることは当然のように行われますが、それでもルール化したからコミュニケーションが取れるとは限りません。

 

プロジェクトが大きいほど、長期化するほどコミュニケーションが上手くとれないメンバーが出てくる可能性が高くなり、状況に応じてコミュニケーションルールを見直す必要もあります。

 

オフショア開発によるアウトソーシングで海外にプロジェクトメンバーがいる場合は、なおさらコミュニケーションを取ることが難しいため、ルール化することは特に重要です。

 

3-3. 現地スタッフへの論理的な説明をする

オフショア開発で日本の依頼元と、海外の開発チームをつなぐ橋渡し役を務めるのが、ブリッジSEです。SE(システムエンジニア)は、基本的に情報システム開発のシステム設計が主な役割ですが、顧客ニーズに応えるためコミュニケーションスキルやマネジメント力も必要とします。

 

ブリッジSEは、具体的なシステム設計よりも、海外のSEと国内のSEのパイプ役が仕事の中心になります。そのためシステム開発の技術面に加えて、高いマネジメントスキルが要求されます。

 

ブリッジSEは現地スタッフとなるオフショア先企業のエンジニアや、プログラマーにプロジェクトの目的や進め方など全体像を説明し、理解してもらうことが必要です。日本語の仕様書や設計書を翻訳するのもブリッジSEの役割ですが、設計者の意図が確実に伝わるように細心の注意を払わなければなりません。

 

プロジェクトを成功に導くまで、双方のとりまとめを行うため、言語・文化・商習慣の違いなどによる齟齬を解消し、情報共有の徹底やコミュニケーションを密に取り、信頼関係を築く努力が欠かせません。

 

PM(プロジェクトマネージャー)が、現地スタッフとの間を取り持つこともあります。現地で働いていた日本人が、オフショア開発に興味を持ってPMに任命されるケースや、その国でPMを選任する場合もあります。

 

日本人のPM経験者によると、仕様書の説明だけでも認識齟齬がないように、日本国内よりさらに細かに書く必要があると言います。

 

オフショア開発において、現地スタッフは「なぜそうすることが必要なのか」「それによってどんなメリットがあるのか」と疑問を感じたときに、論理的な説明をしなければ納得しません。いわゆる「暗黙の了解」は通用しないのです。

 

3-4. タスク管理ツールの利用をする

PMは目標達成に向けて、組織を導くため広い視野で全体を管理せねばなりません。プロジェクトの進行度合いを分かりやすく管理するために、タスク管理ツールを活用すれば進捗を可視化し、タスクの遅延や漏れを防ぐことが可能です。

 

なかでもアメリカの機械工学者ヘンリー・ガント氏が1910年代に考案したガントチャートは、生産管理に用いられる工程管理表ですが、さまざまなジャンルで人気が高いツールとして知られます。プロジェクトの段階を作業単位まで細かく分類して、進捗状況などが視覚的に示され、タスクを可視化することからプロジェクトマネジメントでも活用されています。

 

4. まとめ

人件費などコスト面の削減や、IT人材のリソース確保が期待されることからオフショア開発先として注目されているのがベトナムです。英語が堪能なエンジニアが多く勤勉で、器用なところは日本人に似ています。日本の漫画やアニメなどが人気で、親日家が多いのも特徴です。

 

オルグローラボ」では、ベトナムのオフショア開発事業をサポートしています。オルグローラボを利用すれば、業務スタートまでのプロセスを省略でき、納品後の保守運用までサポートしています。特にベトナムは上述したとおり、低価格で高品質な業務を依頼でき、国民性も良いのでおすすめです。