1. スタートアップ企業がシステム開発をする上で大切なこととは?
世界的な成功を収めたApple、Google、Facebookもスタートアップ企業の草分けとして知られます。
最近はドラマの題材にまでなったスタートアップ企業ですが、なかでも「設立して10年以内のIT企業で、企業評価額が10億ドルを超える未上場」の場合は「ユニコーン企業」と呼ばれ、さらに評価額が高くなれば「デカコーン企業」や「ヘクトコーン企業」に分類されます。
スタートアップ企業としてそこまでの成功を目指したいものですが、まずは基本としてシステム開発を行う際に大切ななことを押さえておきましょう。
1-1. 開発コストを抑える
スタートアップ企業は、まだ一般企業のように金融機関から融資を受けることが難しいため資金調達が重要となります。投資家から投資してもらうには革新的なビジネスをプロモーションして理解を得なければなりません。
そんな中、政府が「社会課題の解決」のミッション実現に向けて、スタートアップ支援施策を打ち出したことは追い風になりそうです。(経済産業省『スタートアップ・イノベーションの加速』より)
しかしそうやって集めた資金を無駄にせず、ビジネスを起動に乗せるには開発コストをいかに抑えるか十分に考えて準備する必要があります。ビジネスを前進させるためには、できるだけコストをかけずに利益を出さねばなりません。
1-2. 市場からフィードバッグの機会を設ける
スタートアップ企業にとってターゲットである顧客や競合など市場調査を行うことは重要です。特に顧客からフィードバックを得る機会を増やしましょう。製品に対する的確なアドバイスやクレームは生産性の向上やスキルアップにつながるからです。また市場におけるトレンドなどを把握することによって、ニーズへのスピーディーな対応が可能になります。
1-3. リーンスタートアップ手法を取入れる
スタートアップ企業では市場からのフィードバッグを開発に反映させるスピードが重要です。しかし従来は顧客、競合、成長予測といったさまざまな角度から市場調査を行い、それに基づいた長期計画を策定していました。
それでは新製品を開発するまでに何年もの時間を要しながら、市場のニーズとは違っていたことが判明することも少なくありません。近年ではタイムロスが発生しない手法としてリーンスタートアップが注目されています。
リーンスタートアップは、できる限りコストをかけずに顧客のフィードバックに素早く対応するためのマネジメント手法です。アメリカで提唱された概念で「Lean Production System」と表記し「Lean」は日本語で「脂肪分が少ない(肉)」、「無駄がない」などと訳せます。
リーンスタートアップは、従来のやり方で製品やサービス開発に発生しがちだった「無駄をなくす」ことを特徴とします。その工程で必要なのが「MVP」と呼ばれるプロダクト(製品・サービス)です。
1-4. MVP(Minimum Viable Product)開発を行う
MVP(Minimum Viable Product)は、日本語に訳すと「実用可能な最小限の製品」を意味します。完成した製品を目指さずに顧客が価値を感じる段階で利益を生み出せる“必要最低限”の製品がMVPです。
リーンスタートアップでは、新しい仮説を反映させたMVPを試作品として市場に投入すれば、フィードバックからそのアイデアについて検証することが可能です。フィードバックに応じてさらに改善したMVPを市場に投入して検証を重ねれば完成品に近づけることができます。
MVPは顧客ニーズを把握しやすいうえに、必要最小限の製品なのでコストを抑えることが可能です。もし検証の結果、制作を中止したとしてもリスクが少ないこともメリットと言えるでしょう。
1-5. 入念な仕様書作成と要件定義を行う
Webサイトやソフトウェア開発などにおいて、発注者と受注して開発を行う側が話し合い、「どのようなシステムを開発するのか」明確にすることを要件定義と言います。要件定義は一般的に開発会社が発注者にヒアリングを行います。
発注者と開発会社が、認識を一致させるための文書の1つが仕様書です。似たようなものに「設計書」がありますが、設計書は制作工程を説明する”設計図”としての役割を担うならば、仕様書は「どのような機能を持たせるのか」など、完成品に求められる条件や内容を細部まで分かりやすく記載したものになります。
スタートアップ企業は開発を進めるうえで、委託する開発会社との要件定義や仕様書作成に慣れていない場合に認識のズレが生じてしまう可能性があります。リスクを回避するためにも、入念な仕様書作成と要件定義を行うことが必要です。
2. スタートアップ企業がオフショア開発をするメリット
オフショア開発とは、自社のソフトウェア開発などを海外の企業に委託する方法です。日本ではエンジニアなどIT人材が不足していることから、海外を拠点とするオフショア開発会社に委託するケースが増えています。実はこのオフショア開発とスタートアップ企業の相性が良く、次のようなメリットが期待できます。
2-1. 開発コストを抑えやすい
オフショア開発を導入するには、どの国を拠点とする運営会社に依頼するかが重要です。依頼先の国として以前は中国やインドの人気が高かったのですが、近年はベトナムやフィリピンなど東南アジア諸国が注目されています。オフショア開発は日本に比べてエンジニアの人件費が安く、コストを抑えられることが魅力の1つとなっているからです。
▼ 以下は、オフショア開発先の地域別「エンジニアの費用相場」データの一例です。
国 | 人月単価 | 備考 |
---|---|---|
中国 | 35万~55万円 | 以前は人件費の安さが魅力だったが、最近はインドとともに価格が高騰。 |
インド | 30万~55万円 | 優秀なエンジニアが多く、欧米諸国からの需要が高い。 |
ベトナム | 20万~35万円 | 日本のオフショア開発先として最も委託が集中している。 |
タイ | 27万~37万円 | 人件費は標準だが、物価が安くオフィスの開設などの諸経費が抑えられる。 |
フィリピン | 25万~35万円 | ネイティブレベルの英語力があり、欧米をオフショア開発先としている企業が多い。 |
インドネシア | 24万~32万円 | オフショア開発先としての経験は浅いが、経済成長による今後が期待される。 |
ミャンマー | 10万~20万円 | 日本語教育に力を入れている。コミュニケーションを取りやすく日本語能力の高いエンジニアが多い。 |
スタートアップ企業がシステム開発をする際に重要な事の1つに、開発コストを抑えることであることは触れましたが、オフショア開発はその要件に打ってつけと言えるでしょう。
2-2. 開発スピードの速度強化ができる
オフショア開発の契約形態には「ラボ型」と「請負型」の2つが主流となっています。ラボ型は一定期間、依頼者のための専属開発チームを作り案件に関わらず求められる業務を行うため、急に仕様変更があっても対応が可能です。
一方の請負型はプロジェクトのエンジニア数などを完全に固定するため、契約通りに完成した成果物は納品されますが、仕様変更などには柔軟に対応できない面があります。
スタートアップ企業がオフショア開発を導入するときは「ラボ型」契約だと、自社の専属チームを結成するため、仕様変更に対してエンジニアたちが業務に集中できるため、開発スピードが速くなります。リーンスタートアップやMVP開発にも最適と言えるでしょう。
2-3. 質の高いエンジニアの確保が可能
一時期は中国に集中する傾向が強かったIT市場ですが、最近は中国以外のアジア諸国にオフショア開発拠点を分散しつつあります。特にベトナムは、「IT国家戦略」を掲げてIT人材の育成をはかり教育水準も上昇しています。
他の東南アジア諸国でもIT人材の教育は進んでいるため、オフショア開発によって質の高いエンジニアを低コストで確保することが可能です。
2-4. 長期的な運用・メンテナンスを任せることができる
オフショア開発の発展とともに開発会社のサービスも充実してきました。ソフトウェアやアプリ、システム開発を行うだけでなく、テストを繰り返して信頼できる成果物を提供します。
リリースした後も、システムを運用していてバグが発生するなどの時でも速やかに対応する力をつけてきました。少しでも自社の業務に集中したいスタートアップ企業にとって、オフショア開発ならば納品後も長期的に運用やメンテナンスを任せられるため、人手がかからずに済むのは大きなメリットになります。
3. スタートアップ企業がオフショア開発をするデメリット
スタートアップ企業にとってオフショア開発を導入することはメリットが多いのですが、一方でデメリットについても知っておく必要があります。
3-1. 成果物の品質不安な場合がある
日本ではIT人材が不足傾向にありますが、日本製品の品質の高さは世界的に有名です。オフショア開発で海外の開発会社やエンジニアによる成果物の品質が納得できない場合がないわけではありません。
日本企業の社員がオフショア開発会社によるプロジェクトと要件定義を行い、仕様書をすり合わせる際に、言語や文化の違いから齟齬が生じる可能性も考えられます。
3-2. コミュニケーションロスが発生しやすい
オフショア開発国や運用会社では現地のエンジニアに日本語教育を行うところも増えていますが、言葉の壁はあるものです。仕事上だけでなく、普段からコミュニケーションを取ろうとしても言葉が通じないために、コミュニケーションロスが発生してしまいがちです。
それが重なってストレスを感じると、業務にも影響するかもしれません。
3-3. 開発の進捗管理が不安定な可能性
同じ日本語を話す日本人同士でさえコミュニケーションの齟齬が生じる可能性はあります。オフショア開発の場合、日本企業の社員は現地に常駐することもできず、主にメールやアプリ、オンライン会議で現地のエンジニアとコミュニケーションを取るしかないため、なおさら信頼関係を築くことは難しいのです。
開発の進捗管理が不安定になりがちなときは、プロジェクトの進捗を共有するルールを設けると効果的です。
4. スタートアップ企業がオフショア開発会社を選ぶ際の注意点
スタートアップ企業に限りませんが、オフショア開発会社を選ぶには次のようなポイントを押さえることが重要です。
4-1. オフショア開発会社の開発得意分野をチェックする
自社のシステム開発を依頼しようと検討している、オフショア開発会社の得意分野を確認しておく必要があります。「IT系で実績がある」だけでは不十分です。
一般的にはソフトウェア開発、アプリケーション開発などを得意分野に挙げていますが、今やオフショア開発でもAIやブロックチェーンに対応しているところが出てきました。自社が開発しようと計画している内容と、得意分野がマッチするところを選ぶようにしましょう。
4-2. オフショア開発会社の数社比較検討をする
オフショア開発を依頼する国が決まったら、その国を拠点とするオフショア開発会社について調べたうえで比較しましょう。過去の実績や得意分野、エンジニアの人数や人月単価などもホームページで分からなければ問い合わせて確認することができます。
今後の開発コストや成果物の質にも関わることだけに、場合によっては相見積もりを取るのも良いでしょう。
4-3. コミュニケーション力・日本語能力を見極める
オフショア開発のエンジニアが日本語でコミュニケーションを取れるか否かは重要です。
もしエンジニアが日本語を話せない場合は、プロジェクトに関わるブリッジSEやプロダクトマネージャーなどが日本語を理解できるならば、業務で戸惑うこともありません。日本語教育に力を入れている会社はホームページでアピールしていることもあるので、チェックしておきましょう。
5. スタートアップ×オフショア開発におすすめの契約形態とは?
オフショア開発会社によって対応している契約形態はさまざまで、請負契約、ラボ型契約以外にもSES契約(システムエンジニアリング契約)などがあります。スタートアップ企業の場合は前述したように、開発のスピードアップに適したラボ型契約がおすすめです。
6. まとめ
経済産業省は、昨年打ち出した「スタートアップ育成5か年計画」で2027年度にはスタートアップへの投資額を10倍の「10兆円規模」とすることを目標に掲げています。政府からも期待されているスタートアップ企業だけに、オフショア開発を取り入れることによって急速に成長する可能性があります。
「オルグローラボ」では東南アジア諸国の中でも人気の高いベトナムのオフショア開発事業を柱としています。自社専属のチームを結成して自由度の高いプロジェクトの進行が出る、オフショア開発の新しい形であるラボ型オフショア開発を推進しており、スタートアップ企業にはぴったりです。