1. オフショア開発とは
オフショア開発とは、その名の通り海外(offshore)へシステム開発などのエンジニア業務を委託することを指します。日本よりも人件費の安い国へ委託することで、国内企業に委託するよりも低コストで開発できることがメリットです。また、オフショア先によっては日本人エンジニアよりも技術が優れている場合もあります。
ただし、時差や文化の違いなど、乗り越えるべき壁もオフショア開発には存在します。そのため、オフショア開発を委託する際は、事前に委託先の国の文化や慣習、技術力について理解しておくことが重要です。
今回は、日本からの距離が近い台湾でのオフショア開発について解説します。
2. 台湾のオフショア開発の基本情報
▼ 台湾の基本情報は、次の表の通りです。
国民性 | おおらか・勤勉・親日 |
---|---|
公用語 | 中国語(国語)・台湾語(台語) |
経済状況 | 先進国に匹敵する豊かな国 |
日本との時差 | 1時間 |
エンジニアの技術力 | 高い技術が特徴 |
エンジニアの人月単価 | 25万円~30万円程度 |
エンジニアの平均年収 | 230万円程度 |
それぞれの概要について解説します。
2-1. 国民性
台湾の国民性は南国気質でおおらかと言われています。気候的にも沖縄同様の亜熱帯~熱帯に位置する地域なので、ゆったりとした習慣があると覚えておきましょう。(そのため、スケジュールにルーズな面もあるようです)
また、おおらかとしつつも、勤勉な国民性であることも特徴です。チャレンジ精神が旺盛で、結果重視のビジネスパーソンが多いと言われています。
さらに、台湾はアジアの中でもトップクラスの親日国です。過去には日本が統治していたこともあり、台湾には現在でも日本的な風習が多く残っています。
2-2. 公用語
台湾の公用語は中国語(国語)と台湾語(台語)です。フォーマルな場所では中国語で話すことが多く、プライベートでは台湾語で話す場合もあります。オフショア開発などのビジネスシーンでは、中国語でやりとりすることになるでしょう。
また、台湾は英語力が強い地域でもあるので、英語が話せる人材もいます。中国語でのやりとりが難しい場合は、英語でのコミュニケーションも視野に入れておくと良いでしょう。
2-3. 経済状況
台湾の経済状況は、近年では鈍化しています。ただし、「五加二産業」という台湾をアジアのシリコンバレーにしようという政策もあり、技術の振興に力を入れていることが特徴です。
また、経済水準としては裕福な国で、国民の生活水準は先進国に匹敵します。くわえて国土が小さいためにインフラ環境が整備されていることも特徴で、日本からのアクセスも容易です。
2-4. 日本との時差
台湾と日本との時差は1時間です。
日本の方が1時間早く、日本が午前10時の場合、台湾は午前9時です。就業時間がずれないため、コミュニケーションしやすいことが特徴と言えます。
2-5. エンジニアの技術力
台湾には技術の高いエンジニアが多くいると言われています。
台湾市場自体は多くありませんが、「アジア・シリコンバレー推進計画」によってIT産業に力を入れていることもあり、ハイスペックなエンジニアにオフショア委託することも可能です。
ただし、ハイスペックな分、コストがかさむ傾向にもあります。
2-6. エンジニアの人月単価
台湾でオフショア開発をする場合の人月単価は概ね25万円〜30万円程度です。ただし、委託先によって変動するため、実際の委託前によく確認しましょう。(ハイスペックなエンジニアの場合は、さらに高い人月単価となります)
2-7. エンジニアの平均年収
台湾のエンジニアの平均年収は230万円程度です。ただし、エンジニア歴が長い場合や、高い技術力を持っている場合は、年収600万円前後のエンジニアもいます。
最近では台湾国内のスタートアップ企業も勃興しており、中国やシンガポール、アメリカなどのIT企業も台湾でエンジニア人材を確保しようとしているため、エンジニア全体の給与水準が上がってきていることは覚えておきましょう。
3. 台湾のオフショア開発の特徴は?
台湾のオフショア開発の特徴は、高い技術力です。台湾政府は2016年から「アジア・シリコンバレー推進計画」という名のプロジェクトを進めており、IT産業に力を入れています。そのため、オフショア開発を委託した場合に高い技術力を期待できることが強みです。
これまでの台湾はハードウェア製造などの技術力に定評がありましたが、現在はソフトウェア分野やIoT分野での技術にも定評があります。MicrosoftやGoogleなどの大手IT企業も台湾に進出しており、今後ますます台湾の技術力は高まっていくでしょう。
また、先述した通り、台湾は先進国並みの豊かな地域です。そのような環境でIT産業に力を入れていることから、今後ますます優秀なエンジニアが増えていくと期待されています。
4. 台湾のオフショア開発のメリット
▼ 台湾へオフショア開発を委託するメリットとしては、次の4点が挙げられます。
・日本からの距離が近くコンタクトが取りやすい
・高技術のエンジニアが豊富
・日本語習得者が多く言語の壁にぶつかりにくい
それぞれの概要は次の通りです。
4-1. 日本からの距離が近くコンタクトが取りやすい
台湾は日本との距離が近いため時差は1時間しかなく、コンタクトが取りやすいことは大きなメリットです。
開発中に不測事態が発生した場合も、時差が少ないためすぐに対応してもらえます。また、物理的な距離が近いため、場合によっては直接ミーティングできることもメリットと言えるでしょう。(台湾と東京は飛行機で3時間半ほどの距離です)
4-2. 高技術のエンジニアが豊富
台湾には高技術のエンジニアが多くいるため、人材を確保しやすいこともメリットです。
「アジア・シリコンバレー推進計画」でIT産業を国として推進していることや、世界的大手電子メーカーが存在していることなど、台湾はエンジニアが育ちやすい環境が整っています。
オフショア開発のメリットは日本国内より低コストなシステム開発が可能なことですが、台湾でのオフショア開発は低コストなうえにハイクオリティであることも覚えておきましょう。
4-3. 日本語習得者が多く言語の壁にぶつかりにくい
台湾には日本語習得者が多く、言語の壁にぶつかりにくいこともメリットと言えます。日本と台湾は繋がりが深いため、エンジニアが日本語を話せない場合でも、現地で通訳を見つけやすいです。
また、先述したように台湾には英語でのコミュニケーションが可能なエンジニアもいます。そのため、場合によっては英語でやりとりしても良いでしょう。
5. 台湾のオフショア開発のデメリット
▼ 台湾でのオフショア開発には多くのメリットもありますが、次のようなデメリットも存在します。
・他東南アジア諸国と比較するとコストが高い
・人材確保が難しくなりつつある
・国民性・価値観の違いがある
台湾でオフショア開発する場合は、それぞれのデメリットについて理解しておくことが重要です。
5-1. 他東南アジア諸国と比較するとコストが高い
台湾は経済発展している地域のため、他の東南アジア諸国と比較するとコストが高い傾向にあります。
コストを抑えてエンジニア人材を確保できることがオフショア開発のメリットですが、ハイスペックの台湾エンジニアは日本でエンジニアを雇う場合と大差ない給与水準であることは覚えておきましょう。
もしもコストをなるべく抑えたい場合は、ベトナムやタイなど他の東南アジア諸国へオフショア委託することをオススメします。
5-2. 人材確保が難しくなりつつある
台湾はアメリカや中国などの大国からも注目されているオフショア先のため、エンジニア人材の確保が難しくなってきています。現在、台湾には30万人以上ものエンジニアがいると言われていますが、今後ますます人材獲得競争は激化する見込みです。
優秀な人材を確保しようとする場合は相応の報酬が必要となり、日本国内での水準と同程度になってしまう場合もあることは覚えておきましょう。
5-3. 国民性・価値観の違いがある
台湾は親日的な国ですが、国民性・価値感に違いがあることも事実です。
日本ではいまだに頑張りを重視する風潮もありますが、台湾のエンジニアは効率を重視する人が多いと言われています。そのため、日本的な働きを求めることは敬遠されることが多いです。
オフショア開発では、あくまでも現地の風習に合わせたディレクションが求められます。開発スケジュールが無理なものにならないよう、オフショア委託先とも相談して決めると良いでしょう。
6. 台湾でオフショア開発する際のポイント
▼ 台湾でのオフショア開発を成功させるためには、次の3点がポイントです。
・得意分野・過去の実績を見極める
・コミュニケーション力をチェックする
・セキュリティ対策の確認をする
3つ全てを満たすオフショア先を見つけることは難しいかもしれませんが、全ての項目を確認するようにしましょう。
6-1. 得意分野・過去の実績を見極める
まず、オフショア開発委託先の得意分野や過去の実績が、自社のニーズとマッチしているか確認しましょう。
一口に開発と言っても、バックエンドとフロントエンドでは様相が異なります。また、インフラ的なシステム開発なのか、エンドユーザーが利用するシステム開発なのかによっても、求められるスキルが変わってきます。
そのため、自社が開発したいシステムと似た系統の実績があるオフショア委託先を探すことが重要です。
6-2. コミュニケーション力をチェックする
委託先を探すときは、コミュニケーション力も確認しましょう。
開発中はスケジューリングや要件定義などで、頻繁に連絡することになります。そのため、コミュニケーションに難のある委託先を選んでしまうと、開発が思い通りに進まなくなってしまうでしょう。
そのため、委託先のコミュニケーション力は開発成功の重要なポイントと言えます。営業段階からレスポンスが早く、こちらの要望を丁寧に聞いてくれる委託先を選ぶことがオススメです。
また、言語についても、中国語もしくは英語でのスムーズなやり取りが可能か確認しましょう。
6-3. セキュリティ対策の確認をする
オフショア委託先のセキュリティ対策を確認することも重要です。
開発には少なからず自社の機密データを扱うこともあるでしょう。そのため、委託先のガバナンスやモラル、情報管理体制も確認するべきです。委託先を選定する際、具体的にどのようなセキュリティ対策が施されているか聞いてみてください。
7. 台湾のオフショア開発会社のおすすめ3選
最後に、オススメの台湾オフショア開発会社を紹介します。
・株式会社ファンドネクスト
・株式会社エー・エフ・エス
・株式会社まめぞうデザイン
各社の具体的な特徴は次の通りです。
7-1. 株式会社ファンドネクスト
株式会社ファンドネクストは、Ruby技術者を中心としたエンジニア集団です。技術力の高いエンジニアがそろっていることや、親日の文化であること、インフラ環境が整っていることから、台湾を活動拠点としています。
CMS管理システム、Webサイト制作、API開発などが可能です。個人投資家向け株式情報スマホサイト『株探』も、ファンドネクストの実績です。
会社名 | 株式会社ファンドネクスト |
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拠点 | 台湾(本社は東京都) |
対応ジャンル | オフショア開発 ラボ型開発 ウェブサービス開発 システム開発 |
ソフト開発のツール | Ruby on Rails |
7-2. 株式会社エー・エフ・エス
株式会社エー・エフ・エスは、中国圏(中国・台湾)でのオフショア開発を得意としています。
オフショア開発基準やプロセス策定など、オフショア開発における上流工程から下流工程までを網羅したサービスが特徴です。(エー・エフ・エスが直接オフショア開発するのではなく、オフショア委託先とオフショア委託元の間を取り持ちます)
会社名 | 株式会社エー・エフ・エス |
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拠点 | 東京 |
対応ジャンル | システム構築コンサルティング システム開発及び保守 ネットワーク構築及び保守 |
ソフト開発のツール | Z80アセンブラ TI DSP Java(JSP、Struts、EJB、WACS) PostgreSQL Oracle VC++ C# MS Access Linux |
7-3. 株式会社まめぞうデザイン(豆象設計股份有限公司)
株式会社まめぞうデザインは、徳島県、大阪府、台湾の3拠点でWeb制作を行う会社です。
台湾法人は豆象設計股份有限公司として、台北市を拠点としています。
会社名 | 株式会社まめぞうデザイン |
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拠点 | 徳島県、大阪府、台北市 |
対応ジャンル | Webサイト企画・制作・運営 Webシステム企画・開発・運営 スマートフォンアプリ企画・制作・開発・運営 プロダクトデザイン企画・制作 プログラム開発 マルチメディア企画・制作 |
ソフト開発のツール | WordPress HTML |
8. まとめ
台湾へのオフショア開発委託は、親日の国民性やエンジニアの技術力の観点から、日本企業にオススメの選択肢と言えます。時差の少ない地域と緊密にコミュニケーションを取りながらオフショア開発をしたい場合は、台湾への委託を検討してみてください。
ただし、近年では台湾のハイスペックエンジニアへの需要が高まっており、エンジニアへの報酬が上がってきています。そのため、コストを安く抑えたい場合には、台湾へのオフショア委託は難しい場合が多いです。コストをなるべく抑えることが目的の場合は、タイやベトナムなどの東南アジア諸国でのオフショア委託を検討しましょう。
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