オフショア開発

2023.03.14

オフショア開発は英語で行うべき?メリットや必要な英語レベルも紹介

オフショア開発は英語で行うべき?メリットや必要な英語レベルも紹介

日本国内のエンジニアが人手不足になる中、ソフトウェアやWEBシステムの開発業務を海外に委託するオフショア開発が注目されています。それに伴い委託先の国で現地のエンジニアと仕事をする機会は増えることでしょう。その際にどの程度の英語力が求められるのか?オフショア開発の依頼国における「日本語力」にも触れながら解説します。

目次

    1. オフショア開発における英語の必要性は?

    オフショア開発は、海外へアウトソースすることにより、人件費を抑えコスト削減をはかることが目的のひとつです。また日本国内で、システムエンジニアやプログラマーといったIT人材が不足しているため、その解決策としてオフショア開発を行う企業が少なくありません。

    人件費を抑えながら優秀なIT人材を確保するためには、中国をはじめベトナム、ミャンマー、バングラデシュ、インドといったアジア圏の国が依頼対象となります。近年は、オフショア開発が進み現地でも日本語に対応できる企業が増えたため、必ずしもその国の言語や英語を話せなくてもコミュニケーションを取ることが可能になりました。

    そうした意味では、オフショア開発を進めるうえで英語を話せなくても問題はなさそうですが、実際はコミュニケーションに限らず、さまざまな場面で英語が必要になります。コスト面やシステム開発に直結する場合もあるため、英語力は身につけたほうが良いでしょう。

    2. オフショア開発において英語でコミュニケーションをするメリット

    オフショア開発を進めるうえで相手国の言葉が話せない場合、お互いに意思疎通をスムーズに行うには、コミュニケーション言語を「英語」とすることが望ましいでしょう。英語でコミュニケーションを取ることにより、次のようなメリットが考えられます。

    2-1. 言語の違いによる問題が起きにくい

    システム開発は、発注側のエンジニアと委託先のエンジニアがコミュニケーションを密にとりながら進める必要があります。発注する日本企業と相手国のエンジニアが言葉の壁で、認識の齟齬を生むことは避けねばなりません。

    お互いにある程度理解できる英語を使ってコミュニケーションを取ることにより、トラブルが起きるリスクを減らすことが可能です。

    2-2. 技術力が高いエンジニアの確保が可能

    日本企業がアウトソースするオフショア開発国のなかで、ベトナムやフィリピン、ミャンマーといった東南アジア諸国はIT技術が向上しており、優秀なエンジニアが育っています。しかし日本語でコミュニケーションをとることを得意とするエンジニアは少ないため、日本語だけでは機会損失に繋がりかねません。

    発注する日本のスタッフやエンジニアが英語を話せれば、優秀なIT人材を確保する可能性が高くなります。

    2-3. 開発費用削減ができる可能性がある

    ブリッジSEは、オフショア開発でプロジェクトを円滑に進めるため、依頼主とオフショア先の橋渡しを行うことが主な役割です。一般的には、ブリッジSEを介して開発プロジェクトを進めますが、依頼主側が自ら英語を話してプロジェクトをマネジメントすれば、ブリッジSEにかかる人件費を抑えることも可能です。

    2-4. ブリッジSEへの依存のリスク回避

    ブリッジSEの役割は、ほかにも設計書の翻訳や開発成果物の進捗・品質報告など多岐にわたります。優秀なブリッジSEがなんらかの都合で辞めてしまったら、プロジェクトの進行がままならない事態になりかねません。

    依頼主が英語を話してブリッジSEに依存することなく開発を進めることにより、深刻なリスクを回避することが可能です。

    3. オフショア開発を英語で行う場合にはどのくらいの英語力が必要か

    シンガポール、フィリピン、マレーシアはかつて英語圏の国の植民地だった歴史から英語力の高さで知られます。それではオフショア開発が盛んなアジア圏の他の国はどうなのでしょう。

    3-1. 英語レベルとしては高くない

    英語能力指数ランキング 2023』(Education First)によると、「2位 シンガポール/非常に高い」「20位 フィリピン/高い」「25位 マレーシア/高い」は上位に入っていますが、他には「58位 ベトナム/標準的」「60位 バングラデシュ/標準的」「79位 インドネシア/低い」「82位 中国/低い」と標準か標準以下にランキングされています。日本は「87位 /低い」でした。

    例えば、オフショア開発国として人気が高まっているベトナムでも、英語はそこまで得意ではありません。コミュニケーションに英語を使っても、相手先の母国語ではないためどうしても違和感があります。十分な意思疎通ができないと感じたら、ブリッジSEや通訳を介す方法もあります。

    3-2. テキストベースでの英語のやりとりが中心

    基本的にシステム開発についてのやりとりは、IT関連の専門用語やプログラム言語を用います。そうした場面ではエンジニア同士にとって、英語が”共通言語”のようなものです。

    また業務上のコミュニケーションは、チームコミュニケーションツールなどを使いテキストベースで行うことが多く、英会話よりも文章表現や読解力を必要とします。

    4. オフショア開発で英語のコミュニケーションが不安な場合はどうする?

    オフショア開発では、現地に日本語が話せるブリッジSEや通訳に頼ることは可能です。しかし、英語によるコミュニケーションを全く取らないわけにはいきません。

    お互いに英語のネイティブではない相手と意思の疎通ができるか不安なときは、翻訳ツールを活用しましょう。

    4-1. 機械翻訳ツールの使用もおすすめ

    業務上のコミュニケーションには、Chatwork(チャットワーク)やSlack(スラック)といったコミュニケーションツールを使うことが多いため、基本的にテキストベースでのやりとりになります。

    最近は、AI(人工知能)の進歩とともに機械翻訳ツールの性能が飛躍的に向上しており、自動翻訳がリアルタイムで可能になりました。

    ChatworkやSlackにプラグインとして連動できるため、日本語でテキスト入力すれば英語に書き換えてくれます。相手から英語でテキストが届けば、日本語に翻訳してくれるため、ストレスをほとんど感じずにコミュニケーションをとれます。

    しかし機械翻訳ツールも万能ではありません。使用するうえでいくつかの注意が必要です。

    4-2. 機械翻訳ツールを使う際の注意点

    機械翻訳ツールがスムーズに翻訳してくれるからといって、資料をそのままコピペするだけではいけません。自分の言葉を文章にすることで英訳された文章の内容は、ニュアンスが変わってきます。

    入力する日本語が適切な文章になっているか、十分検討したうえに、英訳されたら必ず自分で目を通して違和感がないかチェックしましょう。

    特に、次のような間違いがないか注意が必要です。


    【誤字や脱字がないか】

    精度の高い機械翻訳ツールは、誤字や脱字を見つけて修正してくれる場合もありますが、すべてに対応できるとは限りません。日本語の原文をよく確認してから入力しましょう。


    【カタカナの和製英語や略語を使っていないか】

    和製英語でさえ理解して英訳してくれる翻訳ツールもありますが、たとえば「クレーム」を苦情という意味のつもりで入力したところ、「claim(請求)」の意味合いで英訳したケースもあります。

    また和製英語のクレジットカードを「クレカ」と略して入力したところ、英訳文では「Creca」と表現されていました。

    いずれにしろ、翻訳文をそのまま使うと、思いも寄らぬ内容で伝わってしまい誤解を招くリスクがあります。特に人名や固有名詞が間違っていると失礼にあたり、信頼関係を壊しかねません。機械翻訳ツールに頼りきらず、最後は必ず良し悪しを判断できる関係者が確認しましょう。

    5. オフショア開発で英語でのコミュニケーションを取るための勉強法は?

    機械翻訳ツールを活用することもひとつの手段ですが、英語力を身につけるに越したことはありません。オフショア開発を進めるうえで、役立つ英語の勉強法を紹介します。

    5-1. オンライン英会話の活用

    オンライン英会話は、インターネットを使いパソコンやスマートフォンで英会話レッスンを受講できるため、英会話スクールのように教室に通う必要がありません。オフショア開発向けに、ブリッジSEなどシステム開発者を対象にしたサービスも増えています。

    5-2. 市販の英語教材の活用

    日本の中学高校で学んだ英語を復習するだけで、英語力はかなり向上します。市販されている中学生向け、高校生向けのカラー図解やCDがついた教材が分かりやすくておすすめです。

    5-3. テック系ラジオやPodcastの活用

    プログラミングやテクノロジー情報をインターネットで配信するテック系ポッドキャストや、ラジオがITエンジニアの間で話題になっています。スマホやPCで聴けるため、センスのよいBGMや、軽快なDJのおしゃべりを楽しみながら英語のリスニング力向上を期待できます。

    5-4. 英文の技術ドキュメントを読む

    オフショア開発では、業務上のコミュニケーションをテキストベースで行うため、リーディングスキルはつけておきたいところです。英語情報を読むほどリーディングスキルがアップするため、ニュースやネット記事、小説、コミックなども教材になります。

    特に英文技術ドキュメントは、エンジニアにとって英語のスキルとITスキルが同時に学べるぴったりな教材と言えるでしょう。

    5-5. 英和辞典でなく英英辞典を活用する

    日本人は、一般的に英単語を調べるため英和辞典を使いますが、英語でコミュニケーションするための勉強には、英英辞典を活用しましょう。日本語で単語の意味を調べるため、国語辞典をめくる感覚で使えば、次々と英単語や英熟語に触れて英語に馴染む効果が期待されます。

    6. オフショア開発において英文を書く際のコツ

    オフショア開発では、依頼内容を説明した英文ドキュメントを作成して相手国のエンジニアに伝えます。日本語と英語では文章構造が異なるうえ、ニュアンスが違う単語もあるため英文を書く際のポイントがあります。

    ■ 英語は結論を先に書くこと

    日本語は、「この点は良いがこの部分はなぜこうなるの?」と状況説明から入り、最後に「だからダメです」と結論を述べる順番で文章を構成します。一方英語の場合は、「ダメです」と結論を明確にしてから、「なぜならこの点は良くてもこの部分が納得できないから」という理由を述べます。

    英文を書くときは重要なことを先に伝えて、相手にハッキリ認識させることが必要です。オフショア開発の現場では、英語を使うときは日本語のクセが出ないように気をつけましょう。

    他にも、英文を書く際に注意するポイントはあります。オフショア開発では、お互いの母国語や文化などの違いから意思疎通をはかることが難しいため、意志をはっきり伝えることがプロジェクトの成功につながります。

    7. 注意が必要なIT関係の和製英語を紹介

    日本人は、うっかり和製英語を使って相手に理解してもらえないケースが多いため注意しましょう。

    例えばIT関係の和製英語には、ノートパソコン(英語ではlaptop)タッチパネル(touch screen)コストダウン(cost reduction)などがあります。

    また英語でconsentは「同意(する)」「承諾(する)」を意味します。日本語でいうコンセントは、海外ではoutletやsocketになります。

    8. オフショア開発の依頼国別「日本語運用能力」は?

    オフショア開発が盛んなアジア圏では、日本語対応が可能な企業が増えていると言われますが、日本語事情は依頼国によって様々なようです。

    8-1. ベトナム

    ベトナムは親日的なことで知られ、オフショア開発国の中でも人気が高く2021年の調査によると約2,000社もの日本企業が進出しています。(ジェトロ『海外進出日系企業実態調査 アジア・オセアニア編』より)国策でエンジニアを育成しており、日本語教育も推進しているため、日本語を話す優秀な人材が増えています。

    8-2. 中国

    中国は、日本のオフショア開発相手国のなかで日本語運用能力は最も高いと言えるでしょう。ただし近年は、人件費の高騰などが影響して日本の発注は減少しています。

    中国はデジタル化の進展が著しく、日本とはオフショア開発よりも技術開発におけるパートナー関係となりそうです。

    8-3. インド

    インドは、英語が得意な一方で日本語運用能力はかなり低くなります。IT技術の高さには定評があり、英語に堪能な人材が多いです。欧米ではIT企業のオフショア相手国として実績を積んでいますが、人件費が高くなり日本からの発注は少なくなっています。

    8-4. フィリピン

    フィリピンは、母国語をフィリピン語(タガログ語)と英語に定めているため、日本語を話せる人材はあまりいません。しかし英語運用能力は優れているため、オフショア相手国としての人気は高く、受注も年々伸びています。日系企業からもフィリピンの開発企業は仕事の質が評価されており、今後はますます日本のオフショア相手国として発注が増える可能性があります。

    8-5. バングラデシュ

    バングラデシュは、英語運用力が高く、IT人材も豊富で人件費が低いためオフショア相手国として期待されています。現在のところバングラデシュに進出している日本企業はまだ少ないですが、近年は日本語学習者が増えており、将来的にはIT人材の確保につながる可能性があります。(ジェトロ「ビジネス短信』より)

    8-6. ミャンマー

    ミャンマーは、かつてポスト・ベトナムと言われるほどオフショア相手国として期待されていました。しかし2021年2月に軍事クーデターが起きて、提携が難しい状況です。勤勉で協調性もある国民性はベトナムと似ており、日本人との相性もよいので、いずれは有望なオフショア相手国となる可能性があります。

    9. オフショア開発において必要な英語以外のスキルとは?

    9-1. ITスキル

    ブリッジSEをはじめ、システム開発のプログラムを進める役割を担うには、仕様書の内容を説明するために最低限のITスキルは必要です。エンジニアを相手にするオフショア開発では、なくてはならないスキルと言えるでしょう。

    9-2. コミュニケーションスキル

    オフショア開発において、実は英語のスキル以上に必要なのが、コミュニケーションスキルといって過言ではないでしょう。現地のブリッジSEや通訳を介して日本語を使ったときでも、不明点を明確にするために必要なのがコミュニケーションスキルです。

    9-3. 文化や習慣の違いの理解力

    相手国の文化や、習慣を受け入れることでコミュニケーションがとりやすくなり、認識の齟齬が生まれるリスクを低減させられます。基本的なスキルとして、文化や習慣の違いを理解する力が必要になります。

    10. まとめ

    オフショア開発では、相手国の日本語運用能力が高くても、英語力はあったほうがテキストベースでのコミュニケーションや、システム開発上の専門用語などを理解するために効果的です。さらに相手国が日本と友好関係にあるか、日本語教育やIT人材の育成に力をいれているかは、オフショア開発先として重要と言えるでしょう。

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