オフショア開発

2023.06.16

ベトナムオフショア開発の現状・動向を解説!課題と対策についても紹介

ベトナムオフショア開発の現状・動向を解説!課題と対策についても紹介

ベトナムは、日本からのオフショア開発先として選ばれることが多いです。この記事では、ベトナムのオフショア開発の現状と動向について紹介します。ベトナムでのオフショア開発を検討している方はぜひ参考にしてみてください。

目次

    1. ベトナムオフショア開発の現状・動向を解説

    最初に、ベトナムでのオフショア開発の現状・動向を、次の3つの視点から解説します。

    開発スキルの現状は?

    人月単価はどのように変化した?

    エンジニアの待遇の現状は?

    システム開発の現場は常に進化しているので、オフショア委託先を選ぶ際は最新の情報をチェックしておきましょう。

    1-1. 開発スキルの現状は?

    ベトナムのオフショア開発スキルの現状としては、対応してもらえる言語が増えていることが特徴です。

    オフショア開発が一般化した10年ほど前は、HTMLしか対応してもらえないようなケースもありましたが、現在ではJavaやC#、Python、Javascript、PHPなどの一般的な言語は問題なく対応してもらえます。

    最近ではReactやLaravel、Nodejs、Angularなどにも対応できるエンジニアが増えており、大半のプログラミング言語には対応してもらえると考えて良いでしょう。ベトナムはIT人材の開発に力を入れているので、今後ますます開発スキルが向上していくと考えられます。

    また、若い人材が多く、体力が求められる開発テーマでも任せられることも特徴です。ベトナムのエンジニアは学習意欲も高いため、他のオフショア委託国では任せられないような開発の場合も、ベトナムであれば対応してもらえるかもしれません。

    開発できるシステムの内容としては、Webシステム開発、ゲーム開発、スマートフォンアプリなどニーズの高いジャンルは一通り対応してもらえます。さらにベトナムのオフショア先はデザインジャンルにも定評があるため、一般ユーザーを対象としたサービス開発にもオススメです。

    1-2. 人月単価はどのように変化した?

    ベトナムのエンジニアにオフショア開発を依頼する際の人月単価は、ここ数年で上昇傾向にあります。東南アジアの経済状況が活性化していることから、しばらくは人月単価の上昇は続くでしょう。

    ただし、2022年は上昇基調が少し弱まり、現時点での相場は人月単価25万〜40万円程度です。東南アジアのオフショア委託先では、平均的な水準と言えます。

    エンジニアの役割別に人月単価を見ると、プログラマーは30万円前後、シニアエンジニアは40万円前後、ブリッジSEは50万円前後、プロジェクトマネージャーは60万円前後です。なお、オフショア開発が盛んになるにつれ、ブリッジSEの人月単価は特に上昇傾向にあります。

    なお、平均年収で見ると、ソフトウェアエンジニアの年収は150万円程度です。日本のエンジニアの平均年収500万円と比べると3倍以上の開きがあり、日本で開発するよりも大幅にコストを抑えられることが分かります。

    1-3. エンジニアの待遇の現状は?

    ベトナムのエンジニアの待遇は、福利厚生面を中心に充実してきています。ベトナムの国民性から、家族を含めた福利厚生を重視するエンジニアが多いことが要因です。

    ベトナムへのオフショア開発依頼時には人件費の安さが注目されることもありますが、エンジニアへの人月単価には福利厚生費も加味されています。あまりにも安い水準の人月単価の場合、エンジニアの待遇が良くないことも考えられるため、離職率が高い可能性を考慮したほうが良いでしょう。

    福利厚生が優れているオフショア開発企業は、扶養家族も適用される医療保険に加入したり、社員向けの旅行やイベントなどを行ったりしています。オフショア委託先を選ぶ際は、エンジニアの待遇もチェックしてみてください。

    2. ベトナムでオフショア開発をするメリット

    ▼ ベトナムでオフショア開発を行うメリットとしては、次の5点が挙げられます。

    優秀なエンジニアの確保が可能

    コストパフォーマンスが優れている

    日本人に近い国民性

    時差が少なくタイムロスが発生しにくい

    治安が安定しておりインフラ整備も進んでいる

    それぞれの詳細について解説します。

    2-1. 優秀なエンジニアの確保が可能

    ベトナムはIT教育が盛んなため、エンジニア人材を確保しやすいことがメリットです。

    ベトナムのIT人材は大半を若年層が占めており、ベトナムの小学校でプログラミング教育が始まっていることが影響していると考えられます。若い人材が多ければ多いほど、ベトナムのエンジニア間での切磋琢磨が進み、今後ますます優秀なエンジニアは増加するでしょう。

    英語を話せるエンジニアも多いため、ブリッジSEに英語を求める場合でも人材を探しやすいこともメリットの1つです。また、ベトナムは第一外国語として日本語教育を行う学校もあるため、エンジニアの中には日本語が話せる人材もいます。(ただし、日本語レベルはあまり期待しない方が賢明です)

    また、ベトナムのIT技術者の勉強時間は日本人エンジニアよりも多い傾向にあります。経済産業省が令和3年に発表した「我が国におけるIT人材の動向」によると、ベトナム人IT人材の1週間当たりの平均勉強時間は3.5時間で、調査国の中ではインドの4時間に次いで2位でした。(一方、日本は1.9時間で最下位)

    このような状況を鑑みると、今後ベトナムでは優秀なエンジニアがさらに確保しやすくなると予想されます。

    2-2. コストパフォーマンスが優れている

    ベトナムはエンジニアのスキルが高いことに比べると、人月単価は低い水準です。そのため、コストパフォーマンスに優れていることもメリットと言えます。

    先述した通り、ベトナムと日本のエンジニアの平均年収は、日本の方が3倍以上も高水準です。優秀な人材の場合でも、2倍程度コストを抑えられる傾向にあります。

    ホーチミンやハノイなど主要都市であれば給与水準も高いですが、それ以外の都市の給与水準は日本と比べると大幅に低いため、コストを抑えて優秀なエンジニアを探したい場合にオススメです。

    2-3. 日本人に近い国民性

    ベトナム人の国民性は日本人に近いと言われており、同じ価値感でプロジェクトを進められることもメリットです。

    ベトナム人は勤勉な国民性といわれており、プロジェクトの推進には責任感を持って対応してくれます。ただし、全ての文化や風習が一致している訳ではないので、委託先に無理なお願いをすることは避けましょう。

    また、ベトナムは親日国として知られており、日本のアニメやマンガが好きなエンジニアも多いです。そのため、比較的コミュニケーションが取りやすいことも特徴と言えます。

    2-4. 時差が少なくタイムロスが発生しにくい

    ベトナムと日本との時差は2時間のみなので、リアルタイムなコミュニケーションが取れることもメリットです。

    お互いの就労時間中にミーティングを設定することも可能なので、システム開発はもちろんシステム保守の委託先としても向いています。

    なお、ベトナムの就労時間は8:00〜17:00が多いです。日本のIT系企業は10:00~19:00という企業が多いですが、時差を考慮するとちょうど一致します。また、ベトナムは物理的な距離も近く、ハノイやホーチミンと東京は片道6時間程度です。

    2-5. 治安が安定しておりインフラ整備も進んでいる

    ベトナムは治安が安定しておりインフラ整備も進んでいることも、オフショア委託先としては大きなメリットです。

    ベトナムはオフショア先として人気な他のアジアや東欧の国々と比べて、治安が安定しています。親日の国民性から反日デモなども起こりませんし、政情不安による騒乱などの心配も少ないことが特徴です。

    治安が不安定な国だと、オフショア委託先が不測の事態に巻き込まれて開発に遅れが出ることもあります。そのため、なるべくスケジュール通りに進めたい企業はベトナムへのオフショア委託がオススメです。

    また、ベトナムはインフラ整備が進んでいることも、オフショア委託先として考慮すべきポイントです。インフラが整っていない国へオフショア委託すると、停電や洪水などで開発がストップすることも少なくありません。

    その点ベトナムは、生活に必要なインフラはもちろん、特に電力やインターネット通信環境などオフショア開発に不可欠なインフラも整っているので、安心して開発を任せられます。

    3. ベトナムオフショア開発の課題と対策

    ベトナムはオフショア委託先として多くのメリットがある国ですが、その反面でいくつかの課題もあります。

    ▼ 代表的な課題は次の4つです。

    コミュニケーションの課題

    納期の課題

    成果物の品質の課題

    人材の確保の課題

    ここからは、ベトナムでのオフショア開発時によくある課題と対策方法について紹介します。

    3-1. コミュニケーションの課題

    ベトナムは親日国で時差も少なく、比較的コミュニケーションは取りやすいと言われています。しかし、オフショア開発の現場では、コミュニケーションに課題が発生することも少なくありません。

    要件定義は丁寧に行い、プロジェクトの段取りは細かく区切ってスケジュール管理を行うなど、日本国内で開発する時よりは丁寧な対応を心がけると良いでしょう。

    3-2. 納期の課題

    ベトナムでのオフショア開発の失敗例として、納期が守られなかったというケースも聞かれます。

    当初の要件定義になかった仕様を追加したり、スケジュールを大雑把にしか伝えていなかったりすると、納期遅れが発生する可能性が高くなります。また、ベトナム人には残業をほとんどしないという文化もあるため、無理なスケジュールだと納期に間に合わないことも多いです。

    ベトナムでのオフショア開発においては、要件定義をしっかり行うことと、余裕を持ったスケジュールを組むことをオススメします。

    3-3. 成果物の品質の課題

    成果物の品質についても、課題になるケースがあります。

    日本の求める品質が高いこともありますが、ベトナムで開発したシステムでバグが多発したり動作が遅すぎたりして、トラブルになったという企業も存在することは事実です。

    このような事態を避けるためには、要件定義の際に必ず達成してほしい事項を具体的に設定することをオススメします。

    3-4. 人材の確保の課題

    ベトナムには優秀なエンジニアが多いですが、人材確保の課題が全くない訳ではありません。オフショア開発の委託先として人気になればなるほど、優秀な人材に対する獲得競争も激化します。その場合は、優秀なエンジニアを獲得するために予算を増やすなどの対策が必要です。

    また、委託先のオフショア企業がエンジニアを大切にしていない場合、エンジニアが離職してしまうことも考えられます。委託先を選ぶ際は、エンジニアを定着させる工夫についても確認してみてください。

    4. ベトナムオフショア開発の今後について

    ここまで紹介した特徴を鑑みて、これからベトナムでのオフショア開発がどのようになっていくのか考えてみます。

    4-1. エンジニアの技術向上

    まず最初に考えられることは、ベトナムのエンジニアの技術は今後さらに向上していくでしょう。先述した通り、ベトナムのエンジニアは自主的に学習する時間が世界でもトップクラスです。

    そのため、今後は日本のエンジニアに依頼するよりも、ベトナムのエンジニアに依頼した方が技術的に優れている状況になる可能性もあります。

    また、ベトナムは国家政策としてIT人材の教育に力を入れており、毎年数万人のエンジニアを排出している国です。ベトナム国内でもエンジニア人材同士の競争が行われることで、オフショア委託先企業の技術力もますます向上していくでしょう。

    4-2. エンジニアの人月単価の上昇

    一方、ベトナムのエンジニアの技術が向上すればするほど、オフショア開発時の人月単価が上がることも見込まれます。現状では25万〜40万円程度の相場ですが、今後は中国やインド並みの水準になるかもしれません。

    その場合、単にコストを抑えることが目的の企業は、ベトナムでのオフショア開発は難しくなるでしょう。

    4-3. 為替変動リスク

    また、為替変動リスクについても考慮しておいた方が安心です。オフショア開発では、為替変動によって支払い額が変動することがあります。

    日本円とベトナムドンのレートは2016年から2021年頃まではほぼ一定でしたが、ここ2年で急速な円安ドン高が進んでいます。「円とドン」のレートは「円とドル」のレートに近い動きをすることが特徴です。

    このまま円安が続けばベトナムへのオフショア開発にはこれまで以上の日本円が必要になります。ベトナムからの日本への技能実習生が減っているように、日本からのベトナムへのオフショア委託が難しくなる可能性もあるでしょう。

    5. まとめ

    ベトナムのエンジニアスキルは目覚ましく成長しており、今後ますます向上していくと考えられます。一方、技術の向上とベトナムの経済発展に伴い、オフショア委託時の人月単価も上昇していく見込みです。

    コストを抑えることは重要ですが、あまりに安い水準の委託先はエンジニアの定着率が悪く、開発に支障をきたす場合もあります。オフショア委託先を探す場合は、委託先企業のエンジニアの待遇も確認すると良いでしょう。

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