1. オフショア開発とは
オフショア開発(Offshore Development)とは、コスト(人件費・人月単価)削減や優秀なエンジニア人材の確保を目的として、開発業務や制作業務を海外へ委託することを指します。離れるを意味する「Off」と、岸を意味する「Shore」から成る「Offshore(海外)」を由来とする言葉です。
以前は中国やインドなどの大国がオフショア開発先に選ばれることが多かったのですが、近年はベトナムやフィリピンやミャンマーなど、東南アジア諸国へ委託するケースが増えています。また、欧米企業は、東欧・南米・アフリカといった国々をオフショア先として選ぶことも多いです。
オフショア先として選ばれる国々では、国策としてIT人材の教育に力を入れています。そのため、日本国内でエンジニアを探すよりも簡単に優秀な人材を確保できることが特徴です。
なお、都市部(東京や大阪)の会社が地方の会社に開発業務を委託することは、「ニアショア開発」と呼ばれています。
1-1. ラボ型開発とは
オフショア開発の中でも、エンジニアチームを一定期間(半年~1年程度)自社専属に確保する委託方法を「ラボ型開発」と呼びます。
ラボ型開発では、自社の担当者とオフショア委託先企業のプロジェクトマネージャーやブリッジSEがコミュニケーションし、契約期間内に様々なエンジニア業務に柔軟に対応してくれることが特徴です。
仕様変更に対応しやすいことや、業務内容が確定していない保守管理業務にも対応しやすいこともメリットと言えます。
また、最近はWEB制作やソフトウェア開発ではアジャイル的な開発手法が主流になってきているため、要件定義の必要ないラボ型開発を選ぶ企業が増えています。
ラボ型開発は、海外に自社のエンジニア部門を構築するようなイメージです。日本国内ではコスト面や人材確保面からエンジニアを確保できない会社でも、ラボ型開発であれば低コストで優秀なエンジニアを確保できます。
2. オフショア開発が注目されている背景
オフショア開発が注目されている背景としては、人件費の格差によって生じるコストメリットが挙げられます。海外、特に東南アジアや東アジアは日本よりも物価が安いため、日本国内で開発するよりもコストを抑えた開発が可能です。
また、日本国内でIT人材が不足していることも、オフショア開発を活用する企業が増えている要因です。IPA(独立行政法人情報処理推進機構)の調査では、2014年現在で87%以上の企業がIT系人材の不足を感じており、経済産業省によると2030年には約59万人のIT人材不足が見込まれています。
少子高齢化が進む日本とは異なり、東南アジア諸国は若い人材が豊富にいることから、今後ますますオフショア開発は盛んになっていくと考えられます。
また、企業そのものやそのプロダクトの国際化も、オフショア開発を後押しする理由となっています。ベトナムやフィリピンには英語を扱えるエンジニアも多いため、多言語展開したい企業にとっても、オフショア開発はオススメの開発手法です。
3. オフショア開発の市場規模(日本・世界)
ここまで紹介してきたように、オフショア開発は日本を含めた先進各国で注目されている開発手法です。
IPAの調査によると、日本のオフショア開発の規模は2002年に200億円でしたが、2011年には1000億円に成長しています。世界全体でみると、2000年に456億ドルだった市場規模が2018年には856億ドルになっています。
アメリカ以外の先進国では人口減少が続き、それに伴ってIT人材が減少していくことは避けられません。
一方、オフショア先として選ばれている東南アジア・アフリカ・南米などの国々の人口は増加しており、若い世代に対するIT教育にも力を入れています。オフショアを受け入れている国々の外貨獲得戦略としても、オフショア開発は重要な手段です。
そのため、オフショア開発の市場規模は、今後ますます伸びていくと考えられます。
4. オフショア開発の委託先になっている主な国
▼ オフショア開発の委託先になっている主な国としては、次の5か国が挙げられます。
・ベトナム
・フィリピン
・インド
・中国
・バングラデシュ
日本からの委託先としては、これらのアジア諸国が一般的です。ただし、どの国へ委託しても同じという訳ではなく、それぞれの国に特徴があります。
委託先を選ぶ際は、それぞれの国の特徴を理解しておきましょう。
4-1. 委託先の国別シェア率
▼ 委託先の国別シェアは、「オフショア開発白書(2022年版)」によると次のようになっています。
委託先国 | シェア |
---|---|
ベトナム | 48% |
フィリピン | 19% |
インド | 12% |
中国 | 7% |
バングラデシュ | 5% |
ベトナムはシェアの半数近くを占め、圧倒的人気を誇るオフショア委託先です。ベトナムのエンジニアはまじめな国民性で日本企業との相性が良いだけでなく、コストを抑えて若い優秀なエンジニア人材を確保できることが要因と考えられます。
フィリピンは英語でのコミュニケーションが取りやすく、日本企業のみならず欧米企業からの人気が高い国です。ただし、納期遅延に懸念があるとも言われています。
インドと中国は以前はオフショア委託先として人気でしたが、近年は人月単価の高騰からシェア率を落としています。ただし、確かな技術を持ったエンジニアが多いため、難しいプロジェクトでは両国が選ばれることも多いです。
バングラデシュは日本では馴染みのない国ですが、低コストでエンジニアを確保できることから近年オフショア先として選ぶ企業が増えてきました。
4-2. 国別のエンジニア単価
オフショア先の国によって、エンジニアの人月単価は異なります。
▼ 国別のエンジニア単価目安は次の表のとおりです。
委託先国 | 人月単価の目安 |
---|---|
ベトナム | 30万円強 |
フィリピン | 30万円強 |
インド | 40万円弱 |
中国 | 40万円弱 |
バングラデシュ | 20万円強 |
日本(参考) | 首都圏で100万円前後、地方で70万円前後 |
この通り、いずれの国へ委託した場合も、日本国内で開発するより大幅にコスト削減できることがオフショア開発の特徴です。
人月単価と技術力には相関関係がありますが、ベトナムやフィリピンのエンジニアの技術力も近年では向上しています。
Python、Javascript、PHPなどよく使われる言語には問題なく対応してくれるため、オフショア先として積極的に検討してみてください。
5. オフショア開発のメリット
▼ オフショア開発のメリットとしては、次の3点が挙げられます。
・開発費用のコスト削減
・優秀なIT人材を確保できる
・自社内に開発チームを作れる
それぞれの特徴は次のとおりです。
5-1. 開発費用のコスト削減
開発コストを下げられることは、オフショア開発の大きなメリットです。先ほど紹介した人月単価の表にもある通り、日本国内で開発する場合の人月単価は100万円程度になることもあります。
しかし、オフショア開発であれば、単価が上昇していると言われている中国・インドであっても40万円程度、オフショア先として人気のベトナム・フィリピンであれば30万円程度です。
オフショア開発であれば開発コストを2分の1~3分の1以下にすることも可能なので、スタートアップ企業やベンチャー企業、中小企業でもシステム開発できます。
5-2. 優秀なIT人材を確保できる
優秀な人材を確保できることも、オフショア開発のメリットです。
例え費用を払えるとしても、そもそも日本国内はエンジニアの絶対数が不足しています。そのため、特に地方企業はエンジニア人材を確保できないことが多いです。
一方、オフショア先の国々は若い人口が多く、IT教育にも力を入れているため、エンジニア人材が豊富に存在します。そのため、優秀なIT人材を比較的簡単に確保できるのです。
特にベトナムでは小学校でプログラミング教育が始まっていることもあり、今後ますますエンジニア人材を獲得しやすくなることが予想されます。また、ベトナムのIT人材の1週間当たりの平均勉強時間は3.5時間と、日本人エンジニアの平均勉強時間1.9倍と比べて勉強熱心なことも特徴です。
さらに、オフショア案件を多く受けている企業は実績も豊富なため、エンジニアがスキルアップしやすい環境が整っているとも言えます。
これだけの優秀な人材を日本よりも安い人月単価で確保できることは、オフショア開発ならではの大きなメリットと言えるでしょう。
5-3. 自社内に開発チームを作れる
自社内に開発チームを作れることも、オフショア開発ならではのメリットです。
社内に開発チームを作る場合、まずはエンジニア人材を確保しなければなりません。日本ではエンジニア人材が不足していますから、効率的に募集するために有料のエンジニア採用プラットフォームを使うことが多いです。
また、エンジニアを社員として採用すれば、それだけ固定費が増えることになります。そのため、開発チームを社内に作ることは、多くの企業にとって多大な負担となるでしょう。
しかし、オフショア開発の中でも「ラボ型開発」であれば、低コストで簡単に自社専用の開発チームを作ることができます。
6. オフショア開発のデメリット
▼ オフショア開発には多くのメリットがありますが、次のようなデメリットもあります。
・為替の影響を受ける
・コミュニケーションに労力がかかる
・品質や進捗管理がしにくい
オフショア開発を行う際には、これらのデメリットの対処方法も知っておきましょう。
6-1. 為替の影響を受ける
オフショア開発は海外の企業に仕事を依頼するので、為替の影響を受けます。近年は円安が進んでおり、為替の影響によっては委託費用が急騰する可能性があることはデメリットです。
例えば、ベトナムの通貨「ドン(VND)」と「日本円(JPY)」の為替レートは、2020年は1ドン=0.0047円程度でしたが、2023年は1ドン=0.0055円〜0.0060円程度で推移しています。
分かりやすく計算すると、ベトナムへのオフショア委託料が1000万ドンの場合、2020年には47,000円の支払いだったものが、2023年には55,000円〜60,000円必要になっているということです。
為替の影響を受けて委託費用が変動することは、想定しておきましょう。
6-2. コミュニケーションに労力がかかる
コミュニケーションに労力がかかることも、オフショア開発時のデメリットです。中には日本語が話せるエンジニアもいますが、オフショア開発企業とのコミュニケーションは「英語」もしくは「現地語」で行われます。
自社とオフショア企業の間はプロジェクトマネージャーやブリッジSEが橋渡しをしてくれますが、言語の壁によって要件定義やスケジュール調整が難しい場合も多いです。
コミュニケーションに不安がある場合は、オフショア委託先企業を選ぶ際に日本語対応しているか確認してみてください。
また、もし社内に英語に堪能なスタッフがいる場合は、ブリッジエンジニアの活用をやめて英語での直接指示に切り替えても良いでしょう。エンジニアに直接指示を出すことで、ブリッジエンジニアの能力に影響されずにマネジメントできるようになります。
6-3. 品質や進捗管理がしにくい
品質や進捗管理がしにくいことも、オフショア開発で注意すべきポイントです。日本企業が求める品質は世界基準で見ると非常に高いと言われています。そのため、オフショア先の国の常識で納品されると、日本の品質基準を満たせない場合も多いです。
コミュニケーションが取りづらいというデメリットにも通じますが、要件定義はしっかり行っておきましょう。
また、オフショア先の国の文化によっては、納期遅延が頻発する場合もあります。さらに、エンジニアが休みを多くとる風習の場合、進捗管理が大変なこともデメリットです。
相手国の風習を尊重しつつ、段取りを細かく区切るなどして対策しましょう。なお、ベトナムのように、そもそも休日数が少ない国へオフショア委託すると進捗管理が簡単です。
7. オフショア開発の契約形態(請負契約と準委任契約)
オフショア開発の契約形態としては、請負契約と準委任契約の2パターンがあります。それぞれの特徴を理解し、自社に合った形態で契約しましょう。
請負契約とは、「仕事の完成(プロジェクトの完了)」に対して報酬を支払う形態です。納品物の検収をもって、契約が終了します。
一方、準委任契約とは、プロジェクトの完了ではなく「作業」に報酬を支払う形態です。準委任契約の場合、仕事が完了していなくても報酬を支払うことになります。
8. オフショア開発の進め方
▼ オフショア開発の進め方は、次の3ステップを意識しましょう。
1. 開発の目的を明確にする
2. 開発の要件定義をおこなう
3. 委託先のエンジニアとやり取りする担当者を決めておく
それぞれの具体的な内容やポイントは次のとおりです。
8-1. 開発の目的を明確にする
まず、オフショア開発の目的を明確にすることが重要です。
目的が定まっていない開発を委託しても、オフショア企業側も困ってしまいます。オフショア委託先企業と方向性を合わせるためにも、まずは自社内の認識を統一しましょう。
オフショア開発を単なる一時的なプロジェクトとしてではなく、長期的な経営戦略とリンクさせて考えることで、目的を言語化しやすくなります。
8-2. 開発の要件定義をおこなう
開発の目的が明確になったら、要件定義を行います。要件定義は開発プロジェクトの基盤となり、PMやブリッジSEとのコミュニケーションも要件定義に基づいて行われます。システムに求められる機能や性能、利用環境などを網羅的に明確にし、品質基準も示しておきましょう。
また、セキュリティ要件やユーザビリティについても要件定義に含めておくことで、開発がスムーズに進みやすくなります。予算や納期といった制約条件も、予め提示しておいてください。
なお、オフショア開発を請負契約で委託する場合は要件定義に従って成果地点を決めることになるので、特に重要なステップです。
一方、ラボ型開発の場合は要件定義は必要ありません。アジャイル的に開発を進めたい場合は、ラボ型開発で契約しましょう。
8-3. 委託先のエンジニアとやり取りする担当者を決めておく
オフショア開発に先立ち、委託先のエンジニアとやり取りする担当者を決めておきましょう。
コミュニケーション担当者が頻繁に変わると、それだけ意思疎通が難しくなり、プロジェクトの進行に大きな支障をきたします。
できればIT関連に知見があり、社内でもある程度の権限をもった社員を担当者にすると、スムーズに進行できます。システム関連に関わる用語にリテラシーがあるスタッフを1人は確保しておきましょう。
また、システム開発は自社内の複数部署に関わる場合もあります。そのため、他部署とのコミュニケーションがスムーズに行える社員を選ぶことが望ましいです。
9. オフショア開発の依頼先企業を決める際のポイント
▼ オフショア開発の依頼先企業を決める際には、必ず確認するべきポイントが5つあります。
・エンジニアのレベルを確認する
・ブリッジエンジニアのレベルを確認する
・コミュニケーションスキルを確認する
・契約形態を確認する(請負契約or準委任契約)
・セキュリティ対策を確認する
それぞれの詳細は次のとおりです。
9-1. エンジニアのレベルを確認する
まず、オフショア企業のエンジニアレベルを確認しましょう。対応できるプログラミング言語や環境の確認はもちろんですが、過去の制作実績を確認することも重要です。
対応できるとされていても、実際には制作したことはないかもしれません。しかし、実績を確認すれば、どの程度の実力があるのか分かります。また、過去の実績数についても確認しましょう。実績の数が多ければ多いほど、技術力を信頼できます。
9-2. ブリッジエンジニアのレベルを確認する
ブリッジエンジニア(ブリッジSE)のレベルを確認することも必要です。この記事でも何度か言及しているブリッジエンジニアとは、オフショア開発において委託元企業と委託先企業の橋渡しをするエンジニアです。
オフショア先への要件定義、開発概要の説明から、開発中のコミュニケーション、成果物の品質管理まで、ブリッジエンジニアに求められる仕事は多岐にわたります。
オフショア先のエンジニアが優秀でも、ブリッジエンジニアの実力が不足していると開発は上手くいきません。ブリッジエンジニアの技術力・過去の実績・言語力については必ず確認してください。
9-3. コミュニケーションスキルを確認する
オフショア先企業のコミュニケーションスキルも、オフショア開発に及ぼす影響が大きいポイントです。
開発中の細かな報告、スケジュール進捗の共有、今後の見込みなど、オフショア先とコミュニケーションを取る機会は少なくありません。円滑なコミュニケーションを取るポイントとして、オフショア先の日本語能力は確認しておきましょう。
また、日本の商慣習(いわゆる報連相)を理解し、こまめに連絡してくれるオフショア企業かどうかも確認しておくと安心です。
9-4. 契約形態を確認する(請負契約or準委任契約)
オフショア開発企業との契約形態も確認しておきましょう。先述したとおり、オフショア開発には請負契約と準委任契約の2通りの契約形態があります。
システム開発のみの場合は請負契約、保守管理業務の場合は準委任契約とするなど、依頼する業務に合わせて契約形態を選びましょう。
また、オフショア開発企業によっては、どちらか一方の契約形態しか受け付けていない場合もあります。委託先企業のホームページなどで、契約形態について確認しておくと安心です。
また、アジャイル開発を行いたい場合は要件定義が不要なラボ型開発を行う必要があります。ラボ型開発は準委任契約です。
9-5. セキュリティ対策を確認する
オフショア開発企業のセキュリティ対策についても確認しておきましょう。システム開発では、自社の機密データを扱うこともあります。場合によっては顧客情報を扱うこともあるかもしれません。そのため、オフショア先企業の情報管理体制も確認しておくと安心です。
契約を結ぶ前に、具体的にどのようなセキュリティ対策が実施されているか聞いてみてください。入退室管理や開発環境、PCの持ち出し有無など、情報漏洩に直結する事項は要確認です。
また、自社にセキュリティ基準がある場合は、オフショア企業に対して教育研修を実施しても良いでしょう。
10. オフショア開発を成功させるポイント
ここまで紹介したオフショア開発の進め方や委託先の選び方をふまえて、開発を成功させるポイントを3つ紹介します。
・進捗管理をこまめに行う
・文化の違いを理解しておく
・コミュニケーションを良く取る
それぞれのポイントは、オフショア開発中に継続的に意識することが重要です。
10-1. 進捗管理をこまめに行う
まず、オフショア開発をスケジュール通りに進行するために、進捗管理はこまめに行いましょう。オフショア先の国の文化によっては、納期にルーズな場合もあります。そのような場合は、週単位や月単位で納期を設け、プロジェクトマネージャーやブリッジSEに進捗を報告させましょう。
とくにフィリピンやマレーシアなど南国気質の企業へオフショアする場合は、スケジュール管理に気を遣うことをオススメします。一方、ベトナムは休日が少なく勤勉な国民性であることから、進捗管理が行いやすいことが特徴です。
また、オフショア先によってはインフラ環境が整っておらず、不測事態によって開発が遅れることがあります。たとえばミャンマーでは毎月停電が発生し、その間は開発がストップしてしまいます。進捗管理の容易さを考えると、インフラや政情が安定している国へオフショア委託した方が安心です。
10-2. 文化の違いを理解しておく
オフショア委託先と、日本との文化の違いを理解しておくこともポイントです。日本と国民性が似ている国もありますが、お互いに違う文化の中で生きていることは事実です。
たとえば残業や休日、転職については、文化が違うことからトラブルが生じることも少なくありません。マレーシアには独自の休暇制度があったり、イスラム教徒が多いバングラデシュでは宗教的な儀礼があったり、日本の就業環境とは大きく異なる国もあります。
オフショア開発をする場合は、事前に相手国の風習についても調べておきましょう。
10-3. コミュニケーションを良く取る
文化の違いにも通じることですが、オフショア先の企業とはコミュニケーションを密に取ることが重要です。お互いに違うバックボーンを持った企業ですから、コミュニケーションを取らないと認識齟齬が発生します。
とくに要件定義や品質基準については時間が経つにつれて意識されなくなる場合もあるので、定期的に確認しておくと良いでしょう。
また、コミュニケーション不足は納期遅延も誘発します。こまめに進捗確認することもコミュニケーションの一環ということもオフショア先と共有しておきましょう。
11. オフショア開発の成功事例
オフショア開発の成功事例を、企業様からいただいた声をもとにご紹介します。
11-1. ヨシダ不動産
■ ヨシダ不動産について
2012年からバンコク・シラチャ・パタヤで日本人向けの不動産仲介業を営み、現在同じヨシダホールディンググループに属している小林不動産も含め、1985年以来32年の歴史がある会社です。
元々は日系企業駐在員向けの住居仲介で、お部屋探しから入居・退去に至るまでのサポートを一括して提供しており、オフィス物件の仲介や投資用のコンドミニアムの売買仲介も行っています。
■ 導入の背景
2012年にサイトをリリース後、運用を続けていくうちに改善したい項目も増え、試行錯誤しながら進めていきました。2年後にはオフィス物件と売買に事業拡大し、そのためのシステムは賃貸用システムを拡張して作るという課題が生まれました。
どうすれば良いのか悩んでいたところ、オルグローラボと出会い、月額固定で準委任型の契約を結び最初は8ヶ月、次に6ヶ月というように、期間を分けて専任のエンジニアをアサインさせてもらう形を取ったことで、改善することができました。
■ ラボ型開発をどう活用したか
取扱件数が多く、いつも最新データをアップしている会社なので、その取扱い物件情報の量と質を最上クラスで維持するよう努めています。販売した投資物件にすぐお客様をつけられたり、投資用売買でもすぐに入居者を見つけることができたりと、スピード感と実績が強みというのを更新し続けています。
■ ラボ型開発の強みとは
コストが大幅に削減できたことは大きなメリットです。日本での外注と比べると、半分以下にまでコスト削減ができました。さらに強みとなるものが、ラボで採用したエンジニアは、同じチームのように柔軟かつスピーディーな開発が可能という点です。
元々のスケジュールから急遽変更になる場面でも、柔軟に対応してくれる為コストカットに加え、効率良く進めてもらえるのも大きな利点です。
11-2. マーケティングプラス株式会社
■ マーケティングプラス株式会社について
中小企業を中心に、ホームページ制作やWEBマーケティング、WEBコンサルティングを一本化で行い、適正価格で提供しています。創業から10年以上、2000社を超えるクライアントの課題の解決を行っている会社です。
■ 導入の背景
オフショア開発会社を探している中で、複数の会社を見つけました。できるだけコストを抑えられるところを検討しており、オルグローラボは複数会社があるうちの中でも低コストな会社だったため、魅力を感じました。
さらに、今働いている人材をすぐに提供できるという点にも魅かれ、オルグローラボに決定しました。
■ ラボ型開発をどう活用したか
英語スキルに差がある人達が、別々に案件依頼した場合に起きる問題を防ぐために、「案件に関する情報を1人の人間に集約させ、ラボスタッフに指示するのは、1人にする」というのを行いました。
オフショアは言葉の壁を強調されるイメージがありますが、必要以上に不安になることはないと考えており、コミュニケーションが上手くいかないことがあった場合は、画面キャプチャや絵を描いて理解してもらえるよう、少し工夫を取り入れることで通訳を使わずに進めることができます。
11-3. 株式会社 groundfloor
■ 株式会社 groundfloorについて
yoshiokubo、muller of yoshiokubo、UNDECORATED MANの3ブランドを展開している会社です。
2009年の春夏シーズンからランウェイショーを東京コレクションで始め、その3年後になると、パリで毎シーズン展示会を成し遂げます。さらに5年後には、ミラノコレクションでランウェイショーを行うなどの海外進出も果たした会社です。
■ 導入の効果
日本国内の1/4くらいのコストでサイト作成ができ、コストを圧倒的に抑えることができました。
■ ラボ型開発をどう活用したか
パワーポイントやスクリーンショットなどで分かりやすく指示を書き出し、ベトナム人に対してしっかりやりたいことを明確に報告しました。
オルグローのスタッフには、内部人材として教育された優秀なベトナム人スタッフがたくさんいるので、修正依頼を出しても的確な対応をしてくれたりと、安心して業務をお願いすることができました。
12. オフショア開発で失敗する例
▼ 最後に、オフショア開発で失敗するよくある例を紹介します。
・コミュニケーション不足による品質の低下・納期遅れ
・技術力不足により要件通りに開発が出来ない
これらは適切に対応していれば防げる事項です。オフショア開発を行う際は、これから紹介するポイントに注意して対応してみてください。
12-1. コミュニケーション不足による品質の低下・納期遅れ
コミュニケーション不足による品質の低下・納期遅れは、オフショア開発でよくある失敗例です。オフショア開発を成功させるポイントでも紹介した通り、オフショア先の国によっては納期に対する意識が日本と異なる場合もあります。
また、日本の品質基準は世界的に見ると高いため、明確に伝えないと日本では使えないシステムになってしまうこともあるでしょう。
これらは一言でいうと「オフショア先に丸投げしたらうまくいかなかった」ということであり、日本国内で開発していたとして問題となりうることです。しかし、オフショアだからこそ、小さな認識齟齬が大きな問題に発展することもあります。
オフショア開発では日本国内での開発より、丁寧にコミュニケーションすることを心がけましょう。
12-2. 技術力不足により要件通りに開発が出来ない
オフショア委託先の技術力不足により、要件通りに開発できない失敗例もあります。これはオフショア開発の委託企業を決める際のポイントでも紹介しましたが、エンジニアやブリッジエンジニア、そして委託先の実績を確認しないがために起きる問題です。
対応できると言われた技術に対して具体的な実績があるか、必ず確認しましょう。
また、オフショア開発はエンジニア個人のスキルにも大きく影響を受けます。そのため、エンジニアがスキルアップに貪欲な国へ委託した方が技術力不足に困ることは少ないでしょう。インドやベトナムのエンジニアは学習時間が長いため、技術に定評があります。
13. まとめ
オフショア開発を上手く活用すれば、コストを抑えて優秀なエンジニアを確保できます。日本国内のエンジニアはこれから減少していくことが予想されますから、今のうちからオフショア開発に慣れておいた方が良いでしょう。
オフショア開発を行う際は、オフショア先の実績を確認することが非常に重要です。なるべく実績が豊富な企業に依頼すれば、それだけ失敗する確率が減ります。
また、日本人とマッチする国民性の国へ依頼することも重要です。日本からのオフショア先の大半がベトナムで行われていることから分かるように、ベトナムは日本企業と相性の良い国と言えます。初めてオフショア開発を依頼する場合は、まずはベトナムでの開発を検討してみてください。
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